ゴンキル小説

□いつだってうれし涙
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2人でくっついて寝転んでる時、急に「キルアを幸せにしたいんだ」と真面目な顔でゴンが言った。
「何だよそれ、プロポーズかよ」と一瞬遅れて茶化したオレに、ゴンはそうだよって軽く笑う。

オレ達は男同士で、まだガキで、だからそんな言葉なんて一度だって期待したことなかったのに、ゴンの言葉と表情に本気かもって思った途端オレの目から涙が零れた。


小さいころは訓練がつらくて年中泣いてた。でも泣くともっとひどい目に合うから必死で堪えて、そのうちどんな仕事も訓練も顔色変えずに出来るようになって。
なのにゴンと会ってから涙腺がバカみたいに緩んじまったらしい。


「…そんなん出来ねーっつうの」


嬉しいくせにそんな事しか言えないのは、オレが臆病だからだろうか。嬉しい、ありがとう、オレもだよ。って言えたらどんなにいいだろう。


「大体オレ等ガキだし?男同士だし?無理に決まってんじゃん」


プロポーズなんて言葉のアヤだ。だから素直に喜んでおけばいいのに、こんな風に否定したらマジで捉えてんのバレバレじゃん。
何よりゴンを悲しませることが解ってながら、オレの口からは否定的な言葉しか出てこない。

だめだ、これ以上は酷いことしかきっと言えない。だから涙を拭って起き上がると背中を向けた。ゴンの温もりから離れた体は急速に冷えて、これ以上熱を逃がさないように自分の体を掻き抱く。
一人シーツの上に取り残されたゴンが、片腕で体を起こす気配がした。それから小さなため息が背後で漏れる。

ゴンの一挙一動を敏感に察知して、また泣きそうになってきた。必要として貰って嬉しいのに、臆病な自分が情けない。


「…!」


ふいに、いつの間にか俯いていたオレの周りが暖かくなった。その理由に気が付く前に、ゴンの腕が体に回る。強い力で抱きしめられる。
あったかい。嬉しい。幸せ。全身が喜びに打震えて、堪えてたはずの涙が簡単に零れた。それが不思議でたまらなくて、素直じゃない言葉を吐く。


「…いてーよ」

「いいの。それぐらいじゃなきゃキルアには伝わらないでしょ」


小さな文句に、少しだけ怒ったような口調が帰ってきた。
だけど背中を包む温もりとかゴンから伝わる優しいオーラとかに全然涙が止まらなくて、オレはもうどうしたら良いのか解らなくなった。

ぱたぱたとゴンの腕や床を濡らし続けてるくせに、相変わらず憎まれ口しか叩けないオレの頭を二、三度撫でて、ゴンはもう一度耳の後ろから囁いてきた。


「キルアを幸せに…ううん、キルアと幸せになりたいんだ」


何の脈絡もなくこういう殺し文句を言うゴンって、一体何者なんだろう。
デートだって女の扱いだって慣れてるし、ホント信じらんないよな。

感動なんだか呆れ何だかよく解らなくなってるのに、ねぇ、こっち向いてよ、って首の後ろに口付けてくるゴンの声に逆らえなくて、溢れる涙を手の甲で拭った。


「何で泣くの?」

「……知らねぇよ」


嘘。この涙のわけをオレは知ってる。

痛みや苦しみ、つらさに耐えるのは慣れている。もう涙なんて出やしない。
でもこういうのには慣れてなくて、我慢する術を知らないんだ。

緩んだ腕の中で身体を捻る。ゴンの正面に立って、でも少し低い目線と合わせるのは恥ずかしすぎて俯いた。
そのはずみでぽたりと落ちた涙が、ゴンとオレの合わさった胸の真ん中に浸透する。この服、涙染みが出来るかもな、とぼんやりと思ったオレの目の前にゴンが迫って、


「っ、」


反射的に瞑った目から落ちた涙をゴンが舐め取る。

唐突な瞼のキスに驚くオレに、しょっぱいね、とゴンが笑う。ああきっとお前には一生適わないや、そう思ってオレも笑った。





キミと出会ってからは、いつだって 最後は うれし涙





-オワリ-






キルア誕生日小説は初のゴンキルですv
泣き虫キルアでごめんなさい(汗)

それからこちらのタイトルも確かに恋だったさんからお借りして来ました。いつもありがとうございますv


ご来訪ありがとうございます!

2012/7/7 ユキ☆

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