ゴンキル以外小説

□未送信メール(旅団客人)
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140文字で書くお題ったー 『貴方は旅団とキルアで『未送信メール』をお題にして140文字SSを書いてください。』 をお借りしました。


シャルとキルア。キルア旅団の客人ネタその2・シャル視点










『この本の原書を読みたい』という、我等が団長の一言で次の仕事が決定した。

団長の言うその本とは世界的に有名な古典文学で、作者の故郷にある国立図書館に手書き原稿を本にしたものが展示してあるという。
それを聞いた強化系連中は「つまらなそうな仕事だな」と少しぼやき、本好きのフェイタンはついでに盗ってくる本のリストを差し出してきた(ハイハイ、どの辺りの棚にあるか捜しとけってことね)

ターゲットが決まれば決行前後の準備はオレの仕事なので、早速アジトの自室で資料集めに専念する。

図書館までの地図、ターゲットとフェイタンの探す本の場所、警備、逃走経路等々を電脳ネットからかき集め、要約して印刷する。
それらをざっと見直して、大事なところに蛍光ペンで印をつけた。

時計を見ると予定よりも1時間程オーバーしてる。どうりで部屋が暗くなってきたわけだ。
オレはぐーっと背骨を伸ばすと席を立った。
散らかったパソコンデスクの上は後で片付けることにして、甘いものでも飲んで一息入れたい。

そう思って溜り場に入ると、大きなコの字型のソファの真ん中で小さな銀色の頭がひとつ、フワフワと揺れていた。

団長が預かっている、あの有名な暗殺一家の子供。キルア=ゾルディック
幼いながらも暗殺術、格闘術等を叩き込まれ、ウチの筋肉自慢共よりよっぽども頭が回るし、念に関しても磨けば光る才能を秘めている。

だからこそ、オレには団長の考えていることが解らない。
何故いつか自分の寝首を掻くかもしれない子供を迎え入れたのか。
金次第で旅団の脅威となり得る子供を育てるのか。

彼らに信念なんて存在しない。ビジネスで人を殺し、その相手から命意外は奪わない。
それは動物の本能から外れる行為で、故に情で飼いならすことも不可能な存在。


「シャル?」


気配を察した少年がソファの向こうから顔を出す。驚いた顔は立ち尽くすオレに対するものか、僅かに殺気が零れたのか。


「1人で何してるの?」


即座に感情をポーカーフェイスで覆い隠し、笑顔を作って側に寄る。


「メール。母親と兄貴がうぜぇから」
「愛されてるねー」
「そんなんじゃないって。アイツ等はオレを管理したいだけさ」


照れ隠しでも何でもない、冷めた顔でキルアが言う。実際にそう思っていて、だけどそれが寂しいのだろう。
その証拠にキルアは未送信のままケータイを閉じた。


「送らないの?」
「見られてたら打てねぇし」
「それは失礼。じゃあオレは退散しましょうか?」
「…別に。後で送るからいーよ」
「そ?ありがと」


と、にこやかに言いつつ嘘ばかりと内心思う。
未送信フォルダに同じ宛先のメールがいくつもあったの見えちゃったしね。

『送りたいけど送らない』
『必要とされたいけどされたくない』

そんな葛藤が垣間見えて、オレは始めてこの子供に興味を持った。


ゾルディック家とは、家族全てが暗殺者で、顔写真1枚につき1億の値がつくとも言われる稀代の暗殺一家。
キルアはその家の後継者候補として、大事に大事に暗殺に関わることだけを叩き込まれて育ったという。

オレ等幻影旅団のメンバーには親なんかいなくて、食べる為に戦って、欲しいものを手に入れる為なら人も殺す。


(でも、自由だったよね)


何も持ってなかったけど、自分達を縛るものも何もなかった。
自由に生きて、戦って、それを怖いとも思わなかった。

でもこの子は違う。

敷かれたレール。強制されたルート。
嫌で嫌でたまらないけど、やめれば親の期待を裏切ってしまう。一族に泥を塗る行為になる。

これ以上は殺したくない。でも自分の価値はそれだけだって知ってるから。
だから逃げ出すことも出来なかった。


(…可哀想に)


自然と浮かんだ哀れみの感情に、オレは自分自身を疑った。

団長の客人ではあっても、キルアは仲間じゃない。旅団を危険に晒すかもしれない存在なのに。
どうして興味を持ち、哀れに思ってしまったのか。


「シャル?さっきからどうしたんだよ」


改めてキルアを見る。大きくて美しくて、でも少し翳っているように見える青い瞳。
この瞳は今後闇を払うように輝きを増していくのか、それとも影に呑まれていくのだろうか。


「おーい、って何すんだよっ」


今度こそ隠しきれない表情の変化をあえて誤魔化すことをせず、オレは小さな頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
そして今思いついた提案をする。


「ね、オレとメル友にならない?」
「…!マジで!?」
「うん」


パッと顔を輝かせた少年には憂い顔より笑顔が似合う。
そう思ったオレはこの子への警戒心が少し薄れてしまったらしい。


ああ全く、オレもマチの事言えなくなりそうだよ。










-オワリ-






勝手に懐柔されてしまったシャル。
気が付けばキルアが可愛くてたまらなくなっていることでしょう(笑)


最後までお読み頂きありがとうございます!


2014/3/2 ユキ☆

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