恋姫†小説

□恋姫†無双〜永久人の介入〜
2ページ/18ページ



『……どういう事だ?』



 数秒前とまったく異なる景色に戸惑い、思わずつぶやく。
 そこにはコンクリートで舗装された現代の道路はなく、ゴツゴツとした地面ばかりが続いていた。



『はぁ…とりあえず誰か探さねぇと――』


「おい兄ちゃん、いいもん着てるじゃねえか。その服、俺達に寄越せよ」



 突然、背後から声を掛けられる。
 振り向けばそこには黄色い布を頭に巻き、腰に錆びかけた剣をたずさえた、体格の異なる三人の男達。
 見れば、男達はそれぞれが下卑た笑みを浮かべながらこちらの様子をうかがっている。


『…何の用だ?』


「聞こえなかったか? 身ぐるみ置いてけっつったんだ」


「そうだそうだ! その珍しい服さっさと寄越しな!」


「さもないと痛い目にあわせるんだなっ」



 男達は朱司の服が欲しいらしく、各々が威圧的な言葉を発する。



『あ〜、…無理』


「そうかよ…なら殺して奪うだけだ!!」


 朱司が拒否の意思を示した刹那、三つの刃が襲い掛かる。
 一つは上段から頭部への斬り降ろし、後の二つは左右から挟み打ちするかのように迫り来る。
 それは武の心得の無い者であれば、容易に命を刈り取られる程の斬撃。
 しかし、朱司は己の身を引くことにより、いとも簡単に三つの刃を回避した。



『はぁ…。面倒だが…【錬成】』



 胸の前で両手の平を合わせて呟く。
 刹那、朱司の手の隙間から光が溢れ出し――











―――何も無かった筈のその両手には、白銀の槍が握られていた。



『――さて、殺るか』


「…てめえ化け物かよ」


『……ハッ、そう呼ばれた事もあるな』


「まあいい、そいつもついでに売ってやるよ!!」



 その言葉を合図に、三人の男は再び朱司に襲い掛かる―――







―――が、それは叶わず、男達は同時にある違和感に気付く。



「なんだ? 地面が上に――」



 男はそれ以上の言葉を紡ぐことが出来なかった。


 何故なら








『――殺意をもって襲ってきたんだ。文句言うなよ?』



――何故なら、男の首はすでに朱司の槍によって斬り落とされていたからだ。
 そしてそれは他の二人にも言える事であり、男達はほぼ同時に朱司に命を奪われていた。



『あ…服汚れちまった』



 そう言った朱司の服装は白を基調としたロングコートの下に黒いシャツを着用し、黒のパンツに黒のブーツという格好。それ故に男達の返り血は白のコートに酷く目立っていた。



『…まあ良いか』



 白銀の槍を携え、衣服に付着した血もそのままにして歩み始める。
 朱司の浮かべる表情に憂いの色は無く、既に男達への興味は失せているようだった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ