02/19の日記

23:28
似たもの同士の理解者。
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相変わらずマイナー路線走りまくります。
天野元倶(のちに毛利に改名)×松崎夫婦の話です。

性格とかはぐぐっても出なかったなでかなり捏造してます。
インテリ系ひねくれ男子×気が強くて扱い女の子って萌えませんか?私だけですか?




ー出会う前の評価は最悪だった。




「元倶、わかっていると思うが…宍戸殿の一人娘を正妻に娶るんだ。そのな、仲良くしろよ?」
「わかってますよ、父上」

父上が部屋から出て行った後、俺は気づかれないようにため息をつく。
俺の嫁になる女は宍戸殿の長女で前妻との間にできた一人娘で、名を『松崎』というやつらしい。
確か宍戸殿の前妻は噂では『織田家の娘』だが、実際は違うとか何とか聞いたことがある。
かなりややこしい経緯を辿って宍戸殿と結婚したが、娘を生んでも宍戸殿との結婚生活に馴染めずに離婚。
そして宍戸殿は娘にあまり興味がなく、可愛がるのは専ら後妻との間にできた息子だそうだ。

「めんどくさい立場の女が嫁にくるのかよ」

父親がいなくなってそうため息が出てしまうのは仕方ない事だ。
きっとみんなも認めてくれるだろう。
結婚なんてしょせん形だけだ。
形だけ正妻に置いて、後は好きな女を側室に娶って好き勝手すればいい。

ーそう、秀元様のように。

だいたいうちの一族が可笑しいんだ。
ほとんどのやつが正妻が死ぬまで側室をとらないとか正気じゃない。
うちの父は結婚を二回しているが、それは事情あってのことだ。
側室は俺が知る限りいない。
まあ、うまく隠してるのかも知れないけど。
そんな一族に生まれてきたからには、みんなの『正妻を大事にしろ』という言葉が、この一族では基本中の基本、当たり前なわけで…

「ああ…婚儀の日なんてこなければいいのに」

そう思っていても婚儀の日は来るわけで…
嫌だ嫌だと拒絶してもあっという間に婚儀の日がやってきた。
正装した俺の隣にいるのは、白無垢姿の件の『松崎』。
顔はちらりとしか見えなかったが宍戸殿には似ていない、うちの一族ではあまりみない系統の綺麗な顔だった。

ー問題は床に入ってからだな。

今にも頭が痛くなる。
面倒だなぁ…
そんな言葉を押し流すように杯に入った酒を一気に飲み干した。

婚儀が終わると嫌でも来る床の時間。

頭を下げて俺を待つ女に俺も覚悟を決め、松崎の正面になるように腰をおろした。

「えっと…松崎殿?顔をあげないか?話をしよう」
「はい、元倶様」

気の強そうな声でそう答えたあと、すっと顔をあげる松崎の印象はやっぱり変わらない。
意志の強そうな瞳を持つ、ここらでは見かけない系統の綺麗な顔だった。
宍戸殿に似てないと思っていたが、撤回する。
この気が強そうな目は宍戸殿譲りだ。

「松崎殿、今日から俺たちは夫婦になるんだ。まずは名前の呼び方から決めようか?」
「はあ、元倶様がそういうなら」
「松崎殿はなんて呼ばれたい?呼び捨て?奥方?お方?ああ、うちの父は正妻を『室』と呼んでたな。宍戸家では妻をなんと呼ぶんだ?」
「…そうですね、うちでは『奥方』呼びですね」
「じゃあ、俺もあなたを『奥方』と呼んだ方がいいか?」
「いや、呼び捨てで呼んでください。あなたには『松崎』と呼んで欲しいです」
「別にかまわないが…なぜ呼び捨てなんだ?」
「そうですね…あなたのその声がひどく落ち着くので、その声で呼ぶ私の名前をずっと聞いていたいんです」

そういってにっこりと笑う松崎をみて不意打ちだと思った。
『声を聞いて落ち着く』なんていわれたのは生まれて初めてだから無駄にドキドキした。

「お世話でもそういってもらってありがたいな…なら、今からあなたのことは松崎と呼ぼう」
「はい。元倶様はなんと呼ばれたいですか?」
「俺?俺はお前が呼びたいように呼べばいいよ」
「では私は元倶様を『殿』とお呼びしますね」
「ふふ、松崎のような美人に『殿』と呼ばれるなんて、気恥ずかしいな」
「お世辞は結構でございます」
「はは、お世辞じゃないさ、そういうところはひどく可愛らしい。まあ、呼び名も決まったことだし早くこの家になれてくれよ?松崎」

俺がそういうと松崎は考える素振りをしたあと俺をみた。

「どうした?」
「あの、質問いいですか?」
「なんだ?松崎」
「殿は下に3人の弟と妹がひとりいらっしゃるそうで」
「それがなにか?」
「ご弟妹方と仲はよろしいのですか?」
「まあ、普通かな。腹違いのもいるし」
「私も腹違いの弟が3人いますわ。私を生んだ母は離縁されたのでいません」
「そうか、仲は?」
「…父とも仲良くできないのに、腹違いの弟と私が仲良くできるとでも?」
「思わないな」
「殿、先に言っときますが私はものすごくひねくれものなんです。実の父も見放すくらい扱いづらい女なんですよ、私。そんな面倒な女を妻にもたれる殿に心底同情しますわ」

そういって笑う松崎に俺はどこか自分に似てると感じた。
自分を守りながら、傷ついている。
自分を見て欲しいのに、見てもらえない。
そんな姿が俺と重なった。
案外俺が思っている以上にこの女は扱いやすいのかも知れない。

「なあ、松崎…先にはっきり言っておこう。俺はあんまり武術は得意じゃない」
「…はい?」
「武術が得意じゃなく、勉強が好きなそんな男だ。外で駆け回っているよりも家で本を読む方が気楽でいい。頭脳派といえば聞こえはいいが、実際は戦いが嫌いな引きこもりだ。お前の夫である男は勉強しか取り柄のない役立たずな男だ。貧乏くじをひいたのは俺じゃない、お前の方だよ」

俺が真面目ぶってそういうと松崎はどこか可笑しかったのだろう。
声を出して笑った。
その姿を見て、俺はようやく警戒心を解く。
なにが面倒くさくて扱いづらい女だ。
彼女は素直じゃないだけで、どこにでもいる普通の女じゃないか。

「事実を述べただけなのにそこまで笑えるか?松崎」
「ええ、笑えますわ。殿の見かけによらずひねくれていらっしゃる」
「松崎は見かけによらずひねくれている武術嫌いの頭脳派を気取ってる引きこもり気質の男は嫌いか?」
「いいえ、大好きですわ。そうでもないと私のような女の夫ができるわけがないもの…」
「ふふ…いってくれる」
「ねえ殿、扱いづらくて面倒くさくて気の強い女はお好きですか?」
「ああ、大好きさ…お前限定でな」

そう笑って俺は松崎を布団に押し倒すと松崎は一瞬だけ呆けた表情を見せたが、すぐにニッと笑って俺の首に腕を回してきた。

「まあ、最高の殺し文句ですこと。殿はこんな面倒な私を愛してくれますか?」
「はっ…知ってたか?松崎。ひねくれ者の一の人はひねくれ者が相応しいんだぜ」
「まあ、初めて知りましたわ。なら私は殿に愛してもらえますわね、だって殿も私もひねくれ者ですから」
「そうだな…愛してやるよ、松崎…例えお前がこの家から逃げたくなっても宍戸殿ように俺はすぐに離してやらないよ。お前をめちゃくちゃにしたってこの家に永遠に縛り付けてやるさ」

そういって口づけてそのまま松崎を抱きしめると松崎は耳元で囁くようにいった。

「その言葉忘れないでくださいね、殿」

ー当たり前だろう、だってこんな似た者同士の理解者なんてそうそう現れるわけがないからな。

返事の代わりに俺は明かりを消して松崎の寝着に手をかけて、脱がしながら耳元で囁いた。

「お前こそ俺から逃げるなよ、松崎」




これが俺の伴侶との初めての夜の話。

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