01/15の日記

02:58
むすんでつないで
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ーそれが彼の最後の頼みであった。


「政兄さん、頼みがあるんだけど…」
「おっ?どうした?康…お前が俺に頼みごとなんて珍しいじゃないか」
「…そうだっけ?」
「そうだよ」
「…まあいいや、政兄さんのところに、確か娘がいたよね?」
「ああ、室が生んだ娘がいるが、それがどうした?」
「その子、もし僕が死んだら亀寿丸の嫁にくれないかな?」
「…気が早くねえか?元康のところの亀寿丸って確か数えで4つだろ?そんなに焦らなくても…」
「…あれは僕が30後半の時の子だ。毛利は短命の家系故、いつ僕が死んでもおかしくない。なら先に婚約者を決めて置いたほうが心残りがなくていい」
「…どうした?元康。いつものお前らしくもない」
「僕らしくない?そうかもね。なんせ僕は兄さんからしたら気が強くて面倒くさい弟だからね」
「まあ、違いないが」
「だからさ、その面倒くさい弟の最後の頼みくらい聞いてくれてもいいんじゃない?」
「ばぁか!お前の最後の頼みとやらは何回あるんだよ?」

俺が冗談めかして笑うと、元康はどんどん真剣な顔になる。

「ちゃかさないでよ、兄さん。本当の意味での最後のお願いなんだからさ」

その言葉に俺は元康が真剣に考えていることを知った。

「本気か?俺の娘は高いぞ?」
「本気だよ。だからもし僕が死んだら兄さんの娘を僕の息子の嫁に頂戴。絶対だよ?」
「ああ…そこまでいうなら娘をお前の息子にあげてもいい」
「約束だからね、兄さん」

元康は今は亡き記憶も曖昧な倶兄を連想するような儚い笑みを浮かべて俺に再度こういった。

「約束破ったら、化けてでてやるからね」




その約束からしばらくして、元康は死んだ。
俺は元康が死んだと報告を受けたとき、あいつは自分の死期を悟って俺にあんな約束を取り付けたのだと思った。

『約束破ったら、化けてでてやるからね』

ー大丈夫、約束は守るよ、元康。
だって、化けて出られたら困るもんな。

ちゃんと約束守って、俺の娘をお前の息子の嫁になるから
お前の血はちゃんと繋いでやるからさ
だからお前は俺がそっちに行くまでの間しばらくの休暇を楽しんでろよ。



 

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