薄桜鬼
□片思ひ
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最近、斎藤君をまともに見れない。
何をしてても斎藤君が気になるし…
「それは恋だろ。」
「は?」
久しぶりに声がひっくり返った。
うっかり食べかけの団子を落としそうになる。
しばらく、僕達の間に沈黙は続き、団子屋のざわめきしか聞こえて来なかった。
「さ、佐之さん…何言ってんの?」
ようやく口を開き、佐之さんの言葉の意味を確認する。
「だから、お前は斎藤に恋してるって言ってんだよ。」
佐之さんは呆れたように言う。
僕が斎藤君に恋してる?
「それは有り得ないでしょ。第一、僕には男を好きになる趣味なんて無い。」
「甘いなぁ。恋は男であれ女であれ関係無いんだよ。」
「ちょっと。佐之さんと平助じゃあるまいし…一緒にしないでくれる?」
「煩ェな!別に良いだろ!」
佐之さんはガタンと音をたてて勢いよく立ち上がる。
「佐之さん、佐之さん。周りの人が見てる。」
「あ。わ、悪いな。」
おずおずと佐之さんは再び席に着くと、僕の方を向いた。
「と・り・あ・え・ず!それは恋だ!お前がどんなに否定しようが、斎藤に惚れてる事には変わりねぇ。肝に銘じておけ。」
トンと僕の胸を軽く叩くと、佐之さんは「用事を思い出した」と言って、屯所の方に戻ってしまった。
「恋…か。斎藤君にねぇ?」
空を見上げ、最後の団子を口に入れた。
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