雷の錬金術師

□第1話
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所変わって教会。
大きな神像が置かれた中々立派な教会だが人はエド、アル、そしてウルクの三人しかいなかった。

「お前って変わった奴だよな」
「ちょっと兄さん!」
「いいってアル、自覚してるから」
「でも確かに。兄さんと同い年にしては大人っぽいし…」

半ば無理矢理ついてきて、その道中の会話ですっかり三人は打ち解けていた。

「…やっぱ身長かなぁ?」
「おいアル!」
「あっはは!そうじゃね?」
「ライー!」
「あら、確かさっきの…」

教会に一人の女性が入ってきた。名はロゼ、さっきの屋台でエルリック兄弟とあっていたらしい。

「ライ?」
「いいよエド。俺は此方で聞いてるから」

軽く会釈してから、ウルクは1つ後ろの席に回り、三人の会話を聞きに入った。

「(ロゼとかいったあいつ…なんとなく苦手なタイプだ…)ん?」
「…g。硝石100g。イオウ80g…」
「「フッ素7.5g。鉄5g。ケイ素3g。その他少量の15の元素…」」

無意識に口から出た、これは確かに人体の構成成分だ。何故エドがこれをという疑問は覚えたが、アルの鎧の中からしない人の匂い、中が空だと考えるには充分な条件だ。犬並の嗅覚を持つウルクはそれを一瞬で悟った。
しかもエドが言った神話の一節…ウルクはすぐにある仮説にたどり着いた。
だがその疑問を覚えたのは向こうも同じこと。
会話を終え、ロゼを見送った後、エドはウルクに疑り深そうな目を向けていた。

「なんで今の…人体の構成成分を知ってた?」
「本で見た(…てか父さんの研究書だけどね)」

まだ疑っている。そりゃそーだ、軍が人を作ることを禁止しているのにどうしてそんなことを載せた本が出せるか。
心の中で一言付け加える。が、その答えにももちろんエドは納得してないようだ。

「なら此方からも聞く。なんで知っていた?」

銀の瞳を真っ直ぐに金色のそれに重ねる。エドは一瞬アルと目を合わせ、再びウルクと目を合わせた。

「…同じだ、本で見「嘘だな。当ててやろーか?」

エドがごくりと唾を呑む。あえて数秒間を置いて、ウルクは口を開いた。

「…人体錬成、だろ?」
「「っ!?」」
「アルはその鎧空っぽじゃね?…間違ってたら謝るよ」

ま、謝る気なんてさらさらないんだけど。ウルクは脳内でそう付け加えて、エルリック兄弟の反応を待った。

「…そうだよ」
「兄さん!?」
「なんだ。隠すと思ったのに案外あっさり」
「なんでアルの鎧の中が空っぽだとわかったんだ?」

その問いに待ってました、とばかりにウルクは得意そうな笑みを浮かべた。

「俺、生まれつき異様に鋭い嗅覚を持っててさ。犬レベルだよ、肉体の匂いがしないから変だと思ったんだ」
「すごい…」
「本当に、お前は何者なんだ!?」

幾分納得した様子だが、まだ疑問は残る。エドは最後の問いを投げ掛けた。
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