雷の錬金術師

□第8話
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「早くしろよアル!」
「兄さんそんなに急がなくても…」
「おいエド!んな走るとこけるぞ!…つかこけろ、いっそ」
「ライなんか言ったか!?」

セントラルシティの駅につき汽車を降りるなり、エドは全速力で駆け出した。それに小走りでついていくウルクは苦笑いだ。

「図書館は逃げる事はないぞ」
「いいから早く!…来たぜセントラル!」

エドは立ち止まり、大きくそう叫んだ。

「アームストロング少佐、お迎えにあがりました」

駅の外では、軍人が二人待っていた。アームストロングに敬礼をしてこちらに歩いてくる。

「うむごくろう、ロス少尉、ブロッシュ軍曹」
「おっこちらが鋼の錬金術師殿でありますか」

そう言って金の短髪なブロッシュは、アルに、話しかけた。次いでロスもそちらを向く。

「マリア・ロスです。お会いできて光栄です!」
「デニー・ブロッシュです。いやぁ二つ名通りの出で立ち!貫禄ですな!」
「え?」

ブロッシュとロスは、アルとアームストロングが指差した方を向く。

「あっちのちっこいの?」
「うがぁああ!」
「お、おいエド!抑えろって!」

ちっこい、と言われて叫びそうになったエドを、ウルクはぎりぎり押さえた。アームストロングが後ろからエドをつかんでいる。
エドはまだきーきーと怒っていた。

「こっ…これは失礼いたしました!」
「ちっこいだなどと、いえ、その…あ、そういえば雷の錬金術師殿が同行してると聞いていたのですが、どちらに?」

今度はアームストロングとエルリック兄弟がウルクを指差した。

「あぁうん。俺が雷の錬金術師だよ」
「えぇええっこの子!?」
「あ、いや、失礼いたしました。その、貴方が雷の錬金術師…?」
「そうだけど…あ、俺ライね」
「(…まさかこんな子どもがあんなことを…)」

ロス達は信じられないという風に目を見開いて、何度もウルクを見た。
そして、ロスがぼそっと小声で何か呟いたのを、ウルクとエドは聞き逃さなかった。

「では我輩はこのまま中央司令部に報告に赴くゆえ」
「え?何?ここでお別れ?お疲れさん。残念だなぁバイバイ!」

アームストロングの言葉を遮るくらいに素早くエドは口を開いた。
残念だなぁ、なんて言っているわりには満面の笑みだ。バックに花まで飛んでいる。

「我輩も残念だ!まっこと楽しい旅であったぞ!また後程会おう!」
「うぎゃっ!」

アームストロングは涙を光らせエドを抱き締める。ぼきべきと骨が鳴る音がした気がするが、ウルクはあえて何も言わなかった。

「後は任せた!」
「「はっ!」」
「えーまだ護衛つけなきゃならないのかよー」
「当然である!」

一瞬、アームストロングの熱すぎる抱擁に意識が飛んでいたエドだが、今度は護衛への不満を口にした。
ロスによると、スカーはまだ捕まっていないから事態が落ち着くまでは護衛がつく、とのことだ。

「少佐程頼りにならないかもしれませんが腕には自信がありますので、ご安心ください」
「ちょっと!ライどこ行くの!」

少し離れた位置から、アルの声が響いた。エド達もアルの視線の先を追ってみれば、街の方に歩いていっているウルクがいる。

「おいライ!」
「ちょっと気になることがあるんだ。俺は別に動かさせてもらうぜ…第1、賢者の石にそこまで興味はないしさ」
「待ってください!護衛をつけなくては危険です!」

ブロッシュの言葉に、ウルクは不満気にエド達の方に振り向いた。はぁ、と溜め息をついてめんどくさそうに言葉を発する。

「俺に護衛はいらねーよ、スカーには負けないから…前んときだって見てたろ?エド」
「うっ確かに…でもよぉ!」
「…一度我輩と中央司令部にきてもらう、それで上層部に判断をしてもらおう」
「わかった。サーンキュ、少佐…じゃーなエド、アル」

そう言うなり、ウルクは少佐の迎えにきていた中央司令部の車の方に歩いていった。
アームストロングも後に続く。

「では、頼んだぞ」

アームストロングとウルクは車に乗り込む。
エド達も別の車に乗り込み、それぞれ目的地へ動き出した。
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