雷の錬金術師

□第6話
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『俺ぁ仕事が山積みだからすぐ中央に帰らなきゃいかん』
『私が東方司令部(ここ)を離れる訳にはいかないだろう』
『大佐のお守りが大変なのよ。すぐサボるから』
『あんなやばいのから守りきれる自信無いし』
『『『以下同文』』』

「(だからって…なんでこのおっさんがついて来るんだよ…)」

隣に座るアームストロングの圧力に苦い顔をしながら、エドはさっきまでの東方司令部での会話を思い出していた。

―機械鎧整備士の元へ向かうため、軍をたとうと部屋を出たエドの目の前には、ぶわっと豪快に涙を流しキラキラといつもの光を放つアームストロングがいた。

「聞いたぞエドワード・エルリック!」
「ギニャー!」

極限に嫌そうな顔をしたエドをぐきべきと骨の音がするほどがしっと抱き締め、アームストロングはより一層キラキラを飛ばす。

「母親を生き返らせようとしたその無垢な愛!更に己の命を捨てる覚悟で弟の魂を錬成した凄まじき愛!…我輩感動!」
「寄るな」

感極まってもう一度エドを抱き締めようとしたアームストロングの顔面に足をめり込ませなんとか回避し、エドはロイに詰め寄る。
途中で涙を浮かべるほど大爆笑しているウルクの頭を叩いていくのも忘れなかった。

「口が軽いぜ大佐」
「いやあ…あんな暑苦しいのに詰め寄られたら君の過去を喋らざるをえなくてね…」

エドはピクピクと血管を浮かべ、マジギレ寸前だ。

「と言う訳で、その義肢屋の所まで我輩が護衛を引き受けようではないか!」
「はぁ!?なに寝ボケた事言ってんだ!護衛なんていらねーよ!」
「エドワード君」

何を言うのか、と反論するエドに、リザが諭すように名前を呼ぶ。そしてスカーがいつ襲ってくるか分からない中を機械鎧が壊れた状態で移動する危険性を再確認させる。

「…奴に対抗できるだけの護衛をつけるのは当然でしょう?」
「それにその身体じゃアルを運んでやる事もできないだろ?」
「う…だったら別に少佐じゃなくても!あ、そういやライもついてくるっつってたし!」

ウルクはスカーと互角、いやそれ以上の戦いをしていた。頼るのは不本意だがこの際仕方ないだろう。
だがウルクは、にやりと笑って、ざーんねんとアルを見た。

「俺じゃアルは運べないぜ?」

別にウルクはアームストロングにきて欲しい訳ではない。只、エドが嫌がるのを見て楽しんでいるのだ。
そして例の一連の会話、リザの理由につっこもうかと思ったエドだが、あえてスルーした。
と言うことはやはりアームストロングが護衛決定か。

「決まりだな!」
「勝手に決めんなよ!」
「子どもは大人の言う事を聞くものだ!」
「子ども扱いするな!この…アルも何か言ってやれ!」

弟からの意見を期待してバッとアルの方を向いたエドだが、視界に入ったのはキラキラしたアルだ。

「兄さん!僕この鎧の身体になってから初めて子ども扱いされたよ!」
「まだ駄々をこねると言うのなら命令違反という事で軍法会議にかけるがどうかね?」
「うおお!汚え!」
「エド諦めろって。こいつ本当にするぞ」
「ライ…だってよ…」
「いいじゃん、俺はついてくんだからさ」

もうエドにはなす術がない。諦めたように溜め息を吐いた。

「うむ、そうと決まれば早速荷造りだ」
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