雷の錬金術師

□第3話
1ページ/5ページ


急に汽車がガタン、と大きく揺れ、それによってウルクは目を覚ました。
窓辺に頬杖をついて寝ていたが、今の衝撃で若干顎をぶつけた。目の前ではエドが大きな口を開け涎を垂らして眠っている。
ウルク達はユースウェルを発った後、またも行き先がイーストシティと、被ったので行動を共にしていた。

「あ、起きた?」
「っつー…俺どんぐらい寝てた?」
「30分くらいかな。顎、大丈夫?」
「思いっきり打ったっ…よく今の揺れで起きねぇなエド」

ちょいちょいと足の先でエドの腕をつつく。全く反応せず眠り続けるばかりだ。

「そう言えば兄さんにユースウェルの軍部のこと聞いてたけどもういいの?」
「あ、うん」
「でもなんで…」
「!!…静かに、アル」

その時、バンと列車の扉が乱暴に開けられ銃を構えた男達が中に入ってきた。一瞬で空気が氷つく。人々は不安そうに辺りを見回し、身を寄せあっていた。

「俺達はテロ組織『青の団』だ!おとなしくしていろ!」

が、こんな状況でもエドは相変わらず目の前でアホ面で眠っている。ウルクは冷静に入ってきた奴らを見てくぁっと一つ欠伸をした。

「…この状況でよく寝てられんなガキ」

男の一人がウルク達の座っていた席の隣に立つ。呆れたように銃の先でエドの頬をつくが、全くといっていいほど起きる気配がない。

「オイ!起きろコラ!…この…ちっとは人質らしくしねぇかこの…チビ!」

チビ、という言葉と同時にエドの目がくわっと開く。思いきり足を鳴らしてゆっくり立ち上がり、男に迫った。

「お?なんだ文句あんのかおう!…うお!?なんじゃこりゃあ!」

男は銃をエドの額に向ける。エドは男を睨んだまま、その銃に両手を合わせ錬成した。
銃の先はラッパのように開きぐるりと曲がり、うろたえている男の顔にエドは勢いよく蹴りをいれた。
それを見てアルはあぁと呆れたように顔に手をやり、ウルクは面白いものを見るようににやにやと笑顔を浮かべていた。

「やりやがったな小僧。逆らう者がいれば容赦するなと言われている」

もう一人の男がエドに銃をつきつけた。エドは動じずに男を睨む。

「こんなおチビさんを撃つのは気がひけるが…」
「まぁまぁ二人とも落ち着いて」

ぐっと引金に力を込める。アルがその手を持ち上げ、仲裁に入った。

「なんだ貴様も抵抗する気、か」

その瞬間、男の顔面にエドの華麗な飛び膝蹴りが決まった。そのままボコボコと殴りまくる。周りの人達も呆れた眼差しを向けてくるのが分かった。

「だぁれぇがぁミジンコどチビかーっ!」
「そこまで言ってねぇー…ギャー!」
「兄さん兄さん、それ以上やったら死んじゃうって」
「そうだぞエド。つかお前絶対認めてんだろ」
「あ゛?んだとライ!てめぇちょっとでかいからって!」

と、ウルクにとびかかろうとしてエドは動きを止めた。掴んでいるボロボロの男を見て、そしてアルを見る。

「…て言うかこいつら誰?」
「(チビって単語に無意識に反応しただけか…)」

アルはがくっと頭を下げ、ウルクはその横で腹を抱えて笑いをこらえていた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ