雷の錬金術師

□第2話
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「…だーれも乗ってないね」
「噂には聞いてたけどこれほどとは…大体こんなところに観光も無いだろうけどな。お前は何しに行くんだよ、ライ」
「ちょっとした用事がね」

そんな会話を交しつつ、エルリック兄弟とウルクは誰もいないがらんとした車内を見渡した。
さびれた炭鉱の街、ユースウェルに向かうと言ったときに車掌さんが物珍しそうに見ていたのを思い出す。あれはそういうわけか、確かにこんな子どもだけで何しに行くか気になるだろう。

「東の終わりの街、ユースウェル炭鉱」

どんよりと薄暗い空がまさにここの様子を表しているようだ。辺りに目をやれば炭鉱員がちらほら見受けられるものの、この空のように沈み活気がない。

「皆さんお疲れっぽい…」
「おっとごめんよ」

後ろからゴンといい音がする。何かと思い振り返って見れば頭を押さえたエドがしゃがみこんでいた。隣に立っている炭鉱員の少年が運んでいた木材が直撃したようだ。

「あっはは!エドだっせ」
「うるせぇライ!いてーなこの…」
「お!何?観光?どこから来たの?」
「あ、いや、ちょっと…」

少年の目が輝いた。エドに矢継ぎ早に問掛け、というか答える前に次の質問を畳み掛け。しまいにはエドを丸無視して上を歩いていた父親らしき男に声をかける。

「親父!客だ!」
「人の話聞けよ!」
「…エド、無駄だと思うよ」
「あー?なんだってカヤル」
「客!金ヅル!」

カヤルと呼ばれた少年はウルク達を金ヅル呼ばわりして、そのまま宿屋へ連れていった。

店の方は中々賑わっている。さっきまでのどんよりとした空気はどこへやら、炭鉱員達がぎゃーぎゃー騒いでむしろうるさいくらいだ。

「えーと一泊二食の三人分ね」
「いくら?」
「高ぇぞ?」

カヤルの父、ここの親方がにやりと此方を振り向いた。何だか嫌な予感がする。

「ご心配無く結構持ってるから、ライは?」
「うん、結構ある」

ウルクは一応、財布の中身を確認してから顔を上げた。

「30万!」

親方が口にした金額に三人揃って目を見開いた。

「ぼったくりもいいとこじゃねぇかよ!」
「だから言ったろ高いって」
「高いのレベルが違うわ!0一個減らせ!」
「滅多に来ない観光客にはしっかり金を落としてってもらわねぇとな」
「冗談じゃない!」

エドと親方が口論を始める。それを見てウルクは一歩身を引きそろそろと扉に向かった。

「逃がすか金ヅル!!そっちの銀目の小僧もな!」
「げっ。ばれてる…」

仕方なく、ウルクはエルリック兄弟の横にかがみ二人の作戦会議(?)に加わった。

「こうなったら錬金術でこの石ころを金塊に変えて…」
「金の錬成は禁止されてるでしょ!」
「バレなきゃいーんだよ」
「なぁ。アルは頭が固いんだって」
「ちょっとライまで…ってさりげなくなに手を合わせようとしてんの!?」

ウルクは石ころに向けて今にも手を合わせようとしている。完璧に金の錬成を実行しようとしていた。アルが慌てて止めて、もうと溜め息をつく。
いつの間にか、カヤルがその会話を聞いていた。
そして、カヤルの一言で一時作戦会議は中断されることになった。

「親父!この兄ちゃん達錬金術師だ!!」
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