雷の錬金術師

□第1話
1ページ/9ページ


『この地上に生ける神の子らよ…』

町中のラジオ、スピーカーから同じ声が聞こえる。ここはリオール、東部の砂漠近くに位置する町だ。
ずらずらと並べられる宗教の教えのような格式ばった言葉に一人の子どもが舌打ちをした。
子どもの名は、ウルク・ラスター。この暑いというのに長袖長ズボンを着込み、黒いコートに袖を通している。金髪によく映える鋭い銀の瞳を辺りに走らせ気だるそうに欠伸をして、手に持つサンドイッチにかぶりついた。店のお姉さんに水を貰いしばし食事に集中する。

「あー!」「あーあラジオおじゃん」「ちょっとお!困るなお客さん…」

ふと、一つの屋台からざわめきが起きた。振り返ってみるとバラバラに壊れたラジオ、どよめく人々、そして場違いな大きな鎧に小さな金髪の赤いコートの少年。
何事かと思って遠巻きに眺めれば鎧が地面に陣を描き、そして見覚えのある光―錬成反応が走った。

「錬金術…?」

その後確かにウルクは聞いた。『エルリック兄弟』と。
ウルクはにやりと笑みを浮かべ、手元のサンドイッチをたいらげそこに向かった。

「ちょっとその話、俺も混ぜてよ…あれ?」
「あぁ?誰だてめぇ…え!?」

エルリック兄弟の前に立つ。エドワード、兄だという鋼の錬金術師と顔を合わせて数秒。

「「俺が二人!?」」
「どうしたのさ兄さ…兄さんが二人!?」

ウルクとエドワードは瓜二つ。双子レベル、いやそれ以上に似ていた。まるで鏡を挟んだように生き写しだ。
違うのは二ヶ所。目の色と、アホ毛…アンテナの有無だ。ウルクは銀色、エドワードは金色の目をしている。ウルクの目をよく見ると、獣のような縦に長い瞳孔をしていることに気が付いた。
ついでに言うとエドワードのアンテナ分、ウルクの方が背が高い。
背が高いのと黒一色な分、幾分ウルクの方が大人っぽく見える。

「うわびっくり。俺そっくりだ…」
「ってか誰だお前!」
「あ、俺?俺はライっつーんだ。あんたと同い年な錬金術師さ…鋼の錬金術師さん」
「…ライ、か。何のようだ?」

エドはしばらくウルクを観察してから口を開いた。

「別に。俺も錬金術師のはしくれとして同い年の国家錬金術師に興味があったんだ」
「ふーん…」
「これからどっか行くのか?」
「教会に行ってみようかと思ってんだ」
「(教会…レト教とかいう新興宗教のか)」

ウルクは手帳をチェックしてから、再びにやりと笑みを浮かべた。
首を傾げるエドとアルの方を向く。

「俺も連れてってくれない?」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ