雷の錬金術師
□第22話
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例の郊外の空家についたのは、すっかり日も落ち辺りが闇に包まれた頃だった。
中にはすでにリザとリン、それにランファンがいる。ウルク達は車を下りて、足早に中に入っていった。
「腕をぶった切ったまま下水道を歩いただぁ!?破傷風になっても知らんぞ!」
自らの腕を切り落としたというランファンが寝かせられている方からノックスの怒号が聞こえる。
次いで、手術の音。
「ライ来い!お前も手伝え!」
ノックスに呼ばれて、ウルクは慌てて部屋の中に駆けて行った。
手術は思いの他早く終わった。
腕が無くなった左肩の傷を塞ぐ事。それしか出来ない。
手術が終わったと廊下に伝えに行けば、エルリック兄弟が入って来た。
「…大丈夫?」
「何か俺達に出来る事あるか?」
エルリック兄弟の問いかけに、ランファンはうっすら目を開く。
「機械の腕…」
ランファンはエドの右腕を見て、それからウルクの左腕にも視線を移した。
「この国には機械鎧というものがあるだろウ…腕が無くなってしまったかラ…代わりの腕が必要なんダ…」
「ああ。いい技師紹介するぜ」
エドの言葉に、辛そうに眉を寄せながらもランファンは薄く笑った。
「あ、エド。捕まえた人造人間は?」
「えっと…あっちにいた筈だ」
「わかった」
ウルクは、グラトニーの事を思いだし部屋を出た。
エドに言われた通り廊下を出て端まで歩いていけば、ロイ達の向こうにグラトニーが見える。
「うわ」
ロイの隣に立って中を見れば、ワイヤーで締め付けられたグラトニーが転がっている。再生途中を縛ったものだから、自らの再生していく肉で締め付けられているらしい。
「…おい何だこれは」
「『グラトニー』と呼ばれる人造人間ダ」
「ホ…」
「気を付けろ、賢者の石が体内にあるから簡単に死なんぞ」
「…」
「殺し続ければ死ぬがな」
「俺が頭悪いのか?お前さんが狂ってんのか?」
「安心しなノックス先生。どっちでもないよ」
人造人間をまのあたりにしたノックスは、冷や汗をかきながら額に手をやった。
そう思いたくなる気持ちも分かる。ウルクは薄く笑った。
「複数の生きた人間を犠牲にして作られるという賢者の石。そしてその石を核に作られた化物…それが人造人間だ」
いつの間にかエルリック兄弟も此方に来ていた。
ウルクは兄弟の隣に移動し、改めてグラトニーを見やる。
「更にどうやらこいつらは軍上層部の一部と繋がりがあるらしい」
一応顔見知りではあるが、グラトニーはウルクを見ても全く反応しない。
「…マース・ヒューズが軍の暗部に気付いたらしくてな。こいつらに殺された」
「本当か!?」
「上層部だト!?それどころじゃないゾ!」
「何!?」
急にリンが大声を上げた。
皆の視線が彼に集まる。