雷の錬金術師
□第22話
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「…そいや、アル。何その…えー何?え、何それ猫?」
ずっと気になっていた。アルの肩に乗っている掌サイズの白黒猫。手を伸ばしてみれば、ふーっと威嚇された。
「さっき拾ったんだ、あ、駄目だよほら。ライは怖くないよ」
アルに撫でられて、白黒猫はアルの頭の後ろの方に回っていってしまった。まるでウルクに脅えているような。
こうして適当に会話をしながら駅を出て、ホテルへ向かう三人。
ふと、横からコンコンと何かを叩く音が聞こえた。
音のする方を見れば、見なれた車があった。
「大佐!」
やはり中にいたのはロイだ。
フュリー宅に残るようにリザに言われていた彼がわざわざこうして出てきているということは何かしら動きがあったのだろう。
「何でここに…」
「君達の宿泊先に聞いたらこっちだと言うのでな。ホテル前には憲兵や軍人が来ていたぞ、このまま戻ったら出してもらえなくなるだろう」
「あ!そうかスカーを取り逃がしたから…」
「また護衛だなんだとうるさくなりそうだね」
とにかく、三人はロイの車に乗り込んだ。
「あの人造人間はどうなった?」
「郊外の空家に収容したと中尉から連絡があった。今からそこへ行く」
エド達は、本当に人造人間を捕えたらしい。聞いた感じだとグラトニーだったか。
「つけて来る奴がいないか後ろ見ててくれ、ライも鼻を気にしていろ」
「あいよ、ふぁ…」
「へいへい…まだ治りきってないだろ。運転して大丈夫なのか?」
「…動かせる駒が少ないのでな。自分が動くしかないだろう」
もう一度猫に手を伸ばしていたウルクは、ロイの言葉に軽く返事をして欠伸をした。
「仲間少ねーのな、人望無ぇんじゃねーの?」
「ぶっ!」
「君に言われたくないな。ライ、笑いすぎだ」
エドの悪態に、ウルクは思わず吹き出した。ロイに注意されながらも、くつくつと押し殺して笑っている。
ロイは諦めたように、前を向き直した。
「…途中で一人拾って行くぞ」
ロイが車を走らせたのは、住宅街の中、ある家だった。
日も沈み始め月が上がり、家の前で待つのも随分経った。
ロイは一人車の外で、辺りに目を光らせている。
ようやく、向こうからお目当ての人物が歩いてきた。
「あ、ノックス先生」
「…確か、ロス少尉の時の。ライ知ってんのか?」
「大佐といて何回か会った事がある…イシュヴァールの時からの付き合いらしいよ」
外で話しているロイとノックスを見ながら、車内ではウルク達がひそひそと話していた。
そうこうしている内に、ロイは車に戻って来た。運転席に座り、ハンドルを握る。
「あれ大佐、ノックス先生は?」
「道具を取ってくるそうだ。ああ、ライ後ろに行ってくれ」
エルリック兄弟が座っている後ろの座席に回るが、座れそうにない。
仕方なくアルの膝の上に足を抱えて座った。
「ごめんごめん、ちょっとだからな」
ウルクが隣にきたせいか、また白黒猫は威嚇するようにしゃーっと鳴いてアルの後ろに行ってしまった。
「待たせたな…よう、ライ。お前も絡んでんのか」
「久しぶり…って訳でもないか、先生」
ロイの隣にノックスも乗り込み。
ロイは勢いよくアクセルを引いた。