雷の錬金術師
□第22話
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「聞いたかいあの錬金術師の話」「無償で人助けしてるって」
「エルリックったらあれだろ、最年少の」「軍の狗なんて税金を研究にバカスカ使ってそのくせ国民にゃ還元しないような奴ばかりだと思ってたよ」
「いい錬金術師もいるんだな」「金錬成してくんねーかな…」
すれ違い様に聞こえてきたこんな会話に、ウルクはにやりと口角を上げた。
あれから数日、街はエドの話で持ちきりだ。
スカーを誘い出す為に自分を餌にするといったエドだが、まさかこんな方法だとは。華麗に予想の斜め上をかっ飛んだ作戦に、ウルクは肩をすくめた記憶がある。
作戦は簡単。とにかく片っ端から人助けをして名前を広めること。同じ国家錬金術師だが、ウルクよりはエドの方が『最年少国家錬金術師』『エルリック兄弟』とすでに知られた存在だ。エドが餌になると言った時に何の異論も無かった。
が、たった数日でここまで広まるとは思っていなかったのだ。似た容姿のせいで何度も彼に間違われたりして、正直そろそろうんざりしてきた。
「エド、アル」
「ようライ!」
待ち合わせていたカフェに向かえば、すでに二人の姿が会った。
足と腕を組み椅子に座るエドはとても偉そうだ。ウルクは、心底どうでもいいというような顔をして彼の隣に腰を下ろした。
「どうだ?」
「見ての通り!街中俺の噂でもちきりだ!」
「流石にこれだけ派手にやればねぇ…ライは?」
「何も。スカーの情報は無し」
「やっぱりそんなすぐには駄目か…」
この数日ウルクはと言うと。病み上がりのロイの護衛という名目で軍に入り浸っていた。
その中でスカーや、人造人間の情報を掴もうとしているのだが。
流石に先日の第三研究所の事なんかがあった直後だ。情報は中々掴めない。
軍もそこまで馬鹿ではないか、とウルクは肘をついて溜め息を吐いた。
その時、三人の横に見慣れた車が止まる。
「柄にも無い事をしているな、鋼の」
車の中にいたのはロイとリザだ。
エドが地獄耳…と悪態をついたのをウルクとアルだけは聞いていた。
「…ロス少尉の話全部聞いたぞクソ大佐」
「それはよかった」
「…ハボック少尉の事も聞いた」
「…そうか」
ふと真剣な眼差しになったエドの問いに、ロイは淡々と答える。
ウルクはハボックという名に少しだけ反応を見せた。あれ以来、彼に会っていない。どうしていいのか分からなくて、会えない。
今はとりあえずそれは置いておこう、とウルクは車の方に視線を向けた。
「その件だけどドクター・マルコーなら治せるんじゃ…「待て、乗りたまえ。情報交換といこう」
言葉をロイに制され、エドはこちらを振り返りウルクとアルを見る。
軽く頷いて三人はロイの車に乗った。
「…やっぱり降りたまえ」
運転席にリザ、その隣にウルクとエド。そして後部座席にはアルとロイ。アルの鎧に押され潰れかけたロイは、さりげなくそう呟いた。