幻燈夜
□世界が逆になった時 No.2
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そう、僕は、確かにあの日、地獄を見た。
そして僕は彷徨った。
それを救ったのは、一人の僕より年上の少年。
「・・・ほら、ちょっと来い」
「え、あの、えと」
戸惑いながらも、何だか安心した僕は、その人に連れられて近くの小さな廃屋に入った。
「よし、ここでいいかな」
「・・・?」
「ちょっとちくっとくるけど、我慢せえや」
そう言って彼がポケットから取り出したのは、小さな注射器。
また何かをされて地獄を見るのかと思った僕は、悲鳴をあげた。
「あああ・・・っ!」
「大丈夫大丈夫。心配すんなってーの」
その少年がそう言うと、何だか本当に大丈夫な気がした。
だから僕は、静かに目を閉じた。
瞼の上の辺りに、少しの痛み。
そして左目の感覚が無くなった。
いや、元々、目を抉られた時から、感覚なぞ鈍っていた筈である。
「で、俺も・・・っと」
そう言って自分にも軽く注射器を刺してから、
持っていた小さな肩掛け鞄からメスらしき物を取り出した。
「寝てな、痛いから」
そう言って飲まされたのは睡眠薬だった。
不思議とすぐに眠気を誘われ、僕はすぐに眠った。