幻燈夜

□世界が逆になった時 No.2
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・・・


「・・・・ん、?」

目覚めと共に目に違和感を感じた。

「おー、やっと起きよったんかいな」

隣にはあの少年。
どうやらあのまま眠ってしまって居たようだ。

「ん?」

笑ってこっちを見た少年の顔を僕も見返すと、
少年の左目が、
無い。

「あっ・・・あわわわっ・・・あわわ・・・」

思わず、言葉にならない声を出して僕は後退した。

「ん?・・・ああ、目かぁ?自分の左目、触ってみいや」

そう言われて、ただ頷いてから左目があった所を触れてみる。
温かい。
また、目に光が戻っている。
両目が見えている事を、
少年に言われるまで全く気付かなかった僕は、そこで目を輝かせる。

けれど、この水色の目は。

「・・・貴方、の・・・?」

「おお・・・って、俺は痛くも痒くも無いから安心せえ」

希望を感じた。
今日出会ったばかりの赤の他人の筈なのに、
自分の体の一部をくれた。
他人に。
僕に光を取り戻してくれた。
そんな希望に満ち溢れた気分に浸ってから数秒、綯蔚菟は軽く家出をしていた事を思い出す。

「あ・・・い、今、何時・・・?」

「あー?10時くらいや、夜の」

そう言われた瞬間、希望に満ち溢れていた僕に寒気が走った。

「あ、あの、貴方いつも此処に居る!?」

「ああ、一応な。帰るんか?」

「う、ん・・・」

希望をくれた人に、「帰らないと家で殴られる」なんて言えなかったから、
僕は一言言った。
もちろん、笑顔で。
笑顔を作ったつもりで。

「・・・また、明日ね」

そうして走り出した。
どうせ殴られるのは解っているけど、
僕に少し希望が出来た気がしたから、逃げずに帰った。
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