捧げます。

□媚薬以上の中毒性
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いつものバーテン服ではなく、ラフな部屋着で布団に横たわり、サングラスを外して目を閉じている無防備な静雄に欲情し、気付いた頃にはすでに私は静雄の身体に覆い被さっていた。
そのすぐに、静雄は気だるそうに目を開けた。


「………ん」

静雄はその一文字だけで、私のこの行動の理由を尋ねたような気がしたから、私は答えようと口を開く。


「…いや、なんか………欲情したから。」


一瞬誤魔化そうと思ったけれど、それを踏み止まって白状する。
はは、んだよそれ…。と笑う静雄は、私を退かそうとしないのでこのまま行為をはじめていいと理解した私は、静雄の首筋に唇を落とした。


「ッ…!」


首筋は跡が目立つから、あえて吸い付いていないけれど、唇を這わしただけで、静雄はびくりと反応する。
唇を離し、頭を上げるとそれだけで真っ赤な顔をしている静雄。
行為に慣れていないのか、静雄は受け身になることが多く、ほとんど私がリードしている。世の女性はそれが億劫になり嫌だと感じると思うけれど、私はそれを微塵にも思っていない。
むしろ、静雄の表情を見るのは楽しいし、もっと歪ませたい。きっと静雄が可愛い反応をするからだ。


「静雄、可愛い」


その言葉を零した後、静雄の唇に自分のそれを重ねた。静雄の唇は熱く、舌を入れてみると舌も口内も熱かった。
私のそれに絡める静雄の舌は、とてもぎこちない。
それでも舌を絡めている静雄はキスが下手で、自分から深いキスをするようなことは滅多にない。けれどその不器用な所が、愛おしい。
静雄の口内は、いつも吸ってる煙草のにおいとさっき食べていたプリンが雑じった何とも不思議な味だった。味云々は気にしていなく嫌じゃないけれど、静雄が依存しているふたつのそれが、何となく羨ましかった。
そう思った頃には、もう唇は離していた。よほど羨ましいと思ったんだろう。酸素を欲していた呼吸は乱れ、目をとろんとしている静雄を見下ろす。


「…はぁ……はぁ…可愛く、ねぇよ………」


乱れた息の合間に、先程の私の言葉に対する否定を零した。静雄はこんな状況でも強気だけど、説得力がまるでない。むしろさっきよりも可愛いよ。と静雄に伝えてから、綺麗な鎖骨に唇を押し付ける。


「ンッ…!」


艶のある声。今日も良い声でないてくれるみたいだ。
肉体的な痛みはあまり感じないと、静雄は言ったけれど、このようなことに対しては感じやすい敏感な身体の持ち主で、全身が性感帯みたいで、何処に触れても気持ちいいのか、我慢できずこのように声を出す。
鬱血跡が残るように吸い付くと、言葉にならない声が聞こえる。ほんと、敏感なんだね………。
跡が残ったのを確認してから、頭を上げて静雄を見下ろすと、先程よりも真っ赤な顔で、目もおねだりしてるみたいに、とろけてる。
静雄のその表情は私にとってたまらなく猛毒で、いつもいつも、私を狂わせる。
ねぇ、もっときみの歪ませた表情………見せてよ?と、赤くなった耳にそっと囁くと、びくりとそれを震わせたのを見届けてから、静雄の耳を甘く噛んだ。惑う吐息に混じる静雄の喘ぎは、確実に私の鼓膜を侵食する。
私の心と脳は甘ったるく、くらくらしているみたいだ。身体も火照って、疼いている。私は静雄を求めている。
もっと、もっと、静雄を感じたい。静雄も私と同じくらいに、求めてくれてるかな…?と思ったけれど、静雄の止めどなくあふれる声は、私を狂おしく求める証拠だった。
憶測でしかないけれど、きっと静雄は、私と同じくらいに求めてくれている気がする。
耳から唇を離し、静雄の真っ赤な顔を見ると、おびえたように眉をひそめていた。その表情にゾクりとした私は、気付いた頃には静雄の赤い頬に唇を落としていた。
その頬は熱く、やわらかい。静雄のやわらかい頬をそのままひと舐めすれば、また可愛く反応した。



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企画『Breath.』様へ提出しました。
参加させていただきありがとうございました。


11/04/30 七川

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