☆は組

□●有難う-絆-
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なにげない支え







なにげない言葉







いつのまにかそれを見逃していた。













『 有難う ‐絆‐ 』













「・・・・・おかえり、乱太郎。」

微かに血生臭いを辿り、庄左ヱ門は誰もいない教室にやってきた。

「・・・・庄左ヱ門。・・・・・うん、ただいま。」

教室にはただ乱太郎が窓から空を見上げていた。

「着替える余裕はあったみたいだな。」

「・・・・・。」

「乱太郎。」

「・・・・・。」

「・・・それでもしばらくは血の匂いは消えはしないんだ。」

「・・・・・うるさいよ。」

「感じているんだろ?」

「庄左ヱ門!!」

乱太郎は怒鳴る。

まだ一度も庄左ヱ門のほうを振り返ろうとはしない。

「認めろ。まだ疼いているんだろう?」

「黙ってよ・・・・ほんと、・・・・うるさいんだよ!!」



ダンッ!!



乱太郎が壁を殴りつける。

「・・・・・・・・。」

「・・・・庄左ヱ門はどうせもう割り切ってるんでしょ?優秀だもんね?」

「・・・・・・・・。」

「トップはきり丸でしょ?さすがだよね?

いつの間にそんなにすごいやつになっちゃんたんだろ?」

「・・・・・・・・。」

「次が喜三太?やっぱり血筋ってやつかな?

あはは、私だってこれでも忍者の家系なんだけどなー。」

「・・・・・乱太郎・・・・。」

「やっぱり才能っていいね。そう思わない?庄左ヱ門。

君も心の底ではきり丸が鬱陶しいんでしょ?

君は努力ばかり、きり丸は才能ばかり。・・・くやしいよね。」

「・・・・・・・乱太郎。」

「なに、庄左ヱ門。」

「お前は一番きり丸に対してそういうことを口にしてはいけないよ。」

「なんで?」

「・・・・・・・わかっているんだろう?」

「・・・・・・・。」

「俺はきり丸を疎ましく思ったこともある。それは事実だ。」

「へー・・・・。」

「でも、俺もきり丸とずっと共にいたんだ。
・・・・・根本ではわかってる。」

「・・・・・なにを。」

「あいつは確かに才能もあるかもしれない。

でも・・・・・才能だけじゃないことも知っている。」

庄左ヱ門の声が力強く教室に響く。

「・・・・・努力もしてるって?」

「・・・・・それは乱太郎が一番知ってるだろ。」

「・・・・っ知らないよ!!!」

乱太郎は初めて庄左ヱ門に振り返った。

その表情は今にも泣きそうで痛々しい。

「私はなにも知らない!!
いつのまにか私の知らないどこかにいってしまったみたいに・・・・。」

「・・・・・。」

「同じだけ努力しても庄左ヱ門みたいに優秀になれない。
才能ははじめからないに等しい。
じゃあ、なんなんだろう?
私はなに?どうすればいい?」

「・・・・・乱太郎・・・。」

「・・・・あとどれくらいがんばったら君たちみたいになれるの?」

「・・・・馬鹿だ・・・・・馬鹿だよ、乱太郎・・・・。」

乱太郎は庄左ヱ門にもたれ掛かり、徐々に床に落ちていく。

「・・・・・・・ごめん、ごめん庄左ヱ門・・・っ・・・・・・。」

「・・・・っ・・・・・いや・・・・。」

「でも・・・・私は・・・・・・本当に・・・・羨ましかったんだ・・・・。」

「うん・・・・。」

「・・・・・・庄左ヱ門・・・・。」

「・・・・・うん。」

「私は君たちを羨ましく思う反面・・・・嫌悪する自分もいたんだ・・・。」

「・・・・。」

「私は人を殺した。そのとき、『殺せた』と喜ぶ自分と、『殺してしまった』と泣く自分がいた。
・・・・・・・そして私を苦しめる大半は泣いているほう・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・どう思う?」

「馬鹿だとおもう。」

「・・・・。」

「乱太郎は殺したくなかったんだろう?」

「・・・・。」

「感情の矛先を間違えてる。
うらやましいとかそんなことよりももっと言いたいことがあっただろう。」

「・・・・・庄左ヱ門。」

「本当は、殺したくなかったんだろ?」

「・・・・・・・っ・・・・・私は・・・・。」

「・・・・・・。」

「私は忍者になりたいのに・・・・っ!!
・・・私は・・忍者にぃ・・・・・っ。」

「・・・・うん、そうだな。」

「でも・・・殺したくないっ・・・殺したくなんかないんだっ!!」

「ああ。」

「嫌だよぉ・・・・こんな想い嫌だよ!!」

「この先・・・・こんなことばっかりだ・・・。」

「・・・・・っうん。」

「でも乱太郎は馬鹿だからこの先もずっと一緒にいてくれるんでしょ?」

「・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・私は馬鹿だから・・・・いろんなこと全然割り切れないし、

優秀でもなければ、この先また同じことで悩むんだとおもう。」

「・・・うん。」

「・・・・それでもっ・・・・ここをやめたいと思わないのは・・・・
は組のみんなと一緒にもっといたくて・・・・・・・一緒に最後まで笑って
・・・・卒業したくて・・・。」

「うん・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「乱太郎・・・?」

「私・・・・・。」

乱太郎がゆっくり立ち上がる。





「は組のみんなが・・・・大好き・・なんだよ。」





そういう乱太郎の顔には庄左ヱ門が今日はじめてみた笑顔だった。

「・・・・・知っているよ。」

「うん・・・。」

「私だけじゃなくみんな。」

「そうだね・・・・。」

「・・・・ねぇ、乱太郎。」

「?」

「今回の実習、お疲れ様。
・・・・・・・・・無事で、なにより。」

「・・・・・・・。」

「・・・・・。」

「ぁあ、もう・・・泣いてばっかりだ・・・・。」

「これ、誰が最初に言ったと思う?」

「?」

「きり丸だよ。」

「・・・・・。」

「いろいろ違っても、あいつも“ここ”だけは同じなんだよな。」

庄左ヱ門は乱太郎の胸を軽く叩く。

「・・・・・ごめん・・・。」

「俺じゃないよ。」

「あ、うん・・・・そうだね・・・。」

「ほんとに乱太郎はお馬鹿さんだね。」

「うん・・・私、ほんと馬鹿なんだよ。」

そういうお互いの顔はどこか晴れ晴れとしていた。



「そういえば、はい、これ。」

「・・・・・おにぎり。」

「うん、お昼とれてないだろ?」

「ありがと・・・・。」

「食べれそう?」

「うん。・・・・でも・・・」

「?」

乱太郎は3つあるおにぎりをみつめ笑う。

「・・・これ、きり丸としんべヱと食べたいな。」

「あぁ、それはいいね。」

「庄左ヱ門、ありがとう。」

「俺もまわりにいろいろ助けられたから、俺もそうしたかっただけだよ。」

「うん、ありがと。」

「・・・・。」

「じゃ、またあとでね。」

「ああ。」



乱太郎はすぐさま部屋を飛び出した。

その後ろ姿を庄左ヱ門は嬉しそうにみつめていた。

「・・・・・なんだか、なつかしい。」

おにぎりを分け合う三人を想像して庄左ヱ門は笑顔のまま、教室をあとにした。













一方乱太郎はおにぎりを小脇に抱え、走っていた。

2人はどこにいるのだろう。









私はきり丸や庄左ヱ門が羨ましかった。



実はいうと庄左ヱ門が一番羨ましかった。



私はきっと忍術がうまくなりたいとか、そういう羨ましさなんかじゃなくて、



君たちに置いていかれるのが嫌だったんだと思う。



そして、親友の傍にいてもおかしくはないほどの実力をもつ庄左ヱ門が羨ましかった。



だから、上手くなりたかったんだ・・・。



どうして忘れていたのかな・・・・・。



傍にはしんべヱだっていてくれてたのに・・・・。



私は・・・・。





ごめん、しんべヱ。



ごめん庄左ヱ門。



ごめん・・・・きり丸。



きっと一番に謝らなければならないのはきり丸。



いつのまにか壁つくってギクシャクして・・・。



君はきっと「なんのことだ」ととぼけるんだろう?









知っているさ、君の優しさ。







知っているさ、君の努力。







知っているさ・・・・だって私は君の・・・・親友だもの。







こんなにも近くにいたのに、私はなにも気づいてなかった。







さりげない支えに気づけなかった。











有難う、みんな。







有難う、しんべヱ。







有難う、きり丸。











もう一度、君達とちゃんと話がしたい。











ありがとう。













今度は私が支えになるから。













もっともっと















私は強くなるから。















だからさ・・・・















また隣を歩いてもいいかな?

























― おわり ―













― コメント ―





有難うシリーズ。今回は「絆」あんまり意味はないんですけどね、タイトルは。

乱太郎と庄左ヱ門ということで。

乱太郎は他の生徒が感じてるものに囚われてはなくて、自分の中のことに色々

感情があって・・・。別の意味で自分でいっぱいな子ですね。



ちなみに任務帰還順は

(任務から)

1日目 夜  ・・・ きり丸

    深夜 ・・・ 喜三太



2日目 朝  ・・・ 金吾・伊助

    昼  ・・・ 団蔵・三治郎

    夜  ・・・ 庄左ヱ門



3日目 朝  ・・・ しんべヱ・虎若

    昼  ・・・ 乱太郎

    夜  ・・・ 兵太夫





です!

以外にも兵太夫が最後。


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