☆は組

□●生きる喜びA
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『 生きる喜び 2 』




「こんな荷物の護衛であんなすご腕忍者がいるなんて・・・俺もついてない。」

きり丸の忍務は荷物の護衛だった。

山賊が多い道を通るので護衛をたのみたい、そんな簡単な依頼だったのだ。

しかし、実際は重要な荷物だったらしく、忍者まであらわれた。

ある程度の忍者ならば勝算はあった。

しかし、相手はプロ。しかもなかなか手ごわい。

荷物のほうは先に逃したが、おとりになったため、敵の忍者をおびきよせなくてはならない。

きり丸はなんとか急所をさけながら荷物と忍者を離すことに成功した。

忍者も悟ったらしく、遠くなった目的の物を追いかけていった。



「前金もらっといてよかった・・・。」



すでに身体はボロボロ。

小さな切り傷でも数が多いし、出血も半端じゃない。

適当な布で傷口をできるだけ塞ぐ。



ほっと息をついたその瞬間・・・・背中に衝撃が走った。





「な・・・・っ!」





振り返ると先ほどの忍者。

「お前のおかげでこっちの仕事はパァだ。」

「っ・・・。」

「こんな餓鬼に・・・!」

相手の忍者はさらに刀を振ろうとする。

きり丸は懐にしまってあったとある粉の入った袋を相手にぶちまける。

「くっ・・・!なんだ・・・・!!身体が・・・ぁ!」

「特性痺れ薬だ・・・っ、はぁ・・・。」

きり丸は相手の刀を奪い、相手の首をねらって振り下ろした。

鈍い音がなった。

しかし、もう何度もきいた音だ。



「ちぃ・・・・、こりゃ・・・まず・・い。」



きり丸はとりあえず、木の下に腰を下ろす。



「・・・はは、もう駄目かな。」



妙に冷静な自分に笑うきり丸。

「みんな、元気かなー。」

ふいに思い出す友や世話になりっぱなしの担任の姿や声。

今頃は・・・・と想像してみたり。



「乱太郎・・・・・、なんであんなに・・・。」



二日前にした喧嘩。



『・・・そんな保障どこにあるの?』



泣きそうな乱太郎が頭に浮かぶ。



「・・・・俺、なんもわかってなかったんだ・・なっ。」



「こういうことになるかもって・・・心配・・・して・くれてたんだよな・・・。」



「俺、なんでこんな簡単なことにいつも気づけないんだろ・・・。」





『三人で絶対一緒に卒業するんだ。』





『は組みんなで笑って卒業しような。』





「・・・・っああ、約束・・・・したっけ・・・。」





懐かしいあたたかい思い出。





頬に冷たいなにかがあたる。





雨だ。





「タイミング良すぎ・・・俺への最後のプレゼントか・・・?」





きり丸の目からも水が静かに流れる。



雨なのか涙なのかはっきりはしない。





「・・・・謝んなくちゃ・・・。」





「俺・・・まだ・・・・。」





きり丸は立ち上がった。



ひざがガクガクする。

体温も雨のおかげで下がっている。

呼吸も激しい。

気力だけで立っている感じだった。



「・・・っ・・・まだ・・・死ねないんだっ!!」



きり丸は走った。

背中からは大量の出血をしながらも気にせず走った。

途中休憩をいれるが、一分もしなかった。

座り込んだらもう終わりだと自身が感じている。



一日中走った。

やっと学園が見えてきた。

すると、さっきまで激しかった鼓動が一気に静かになる。

門の前まできた。

痛みなど・・・感じさせないように普段の表情を作った。

「まだこんな力があったんて・・・。」

小さく呟きながら戸をたたく。

「はーい、あれ?きりまる・・・くん・・・・!わー!!どうしたのその怪我!!」

「大したことないですよ。」

きり丸は中にはいる。

小松田さんはすぐ傍にいた生徒に土井先生と山田先生をよんでくるよう頼んだ。

しかし、気配を感じていたのか2人はすぐにやってきた。

「きり丸!!」

山田先生は医務室にいくよう進めた。

土井先生は辛そうにきり丸をみて、同じく医務室へいくよう言った。

医務室にいこうとするとは組が勢ぞろいだった。



乱太郎と庄左ヱ門に付き添われ、きり丸は医務室に向かった。

















「・・・・ぁ。」

「きり丸!!」

きり丸が目をあけるとは組みんながきり丸をみながら泣いている。

「・・・なんで・・・泣いて・・・・。」

「あほぉ・・・し、死んじゃうかと・・・・思った・・・!!」

「どれだけ寝てたと・・・・っ!」

「うわぁぁん!よか・・っよかったよぉぉっ・・・!」

「心配、したんだから・・・っ・・。」

「俺・・・・。」

「きり丸はまる一日寝てたんだよ・・?」

「乱太郎・・・・。」

「傷口は化膿してるし・・・・っ血はとまらない・・・・!どれだけ・・・・

どれだけ怖かったか・・・・っ!!」

「・・・・。」

「うぅ・・・・っ。」

「・・・ごめ・・・っ。」

うまく話すことができない。

「・・・俺・・・乱太郎に殴られたわけ・・・わかったんだ・・・・。

悪かった・・・・・っく・・・。」

「傷は跡が残るだろうって・・・。」

「そっか・・・・。」

「馬鹿なんだから・・・・。」

「俺・・・謝んなくちゃって・・・それだけ、いいたかった。」

「きり丸・・・・。」

「みんなのことが頭に浮かんで・・・・約束も・・・・思い出した・っ・・・

そしたらっ・・・・ま、まだ・死ねねぇわって・・・。」

きり丸は苦しそうに笑う。

「・・・・よかった。」

「・・・?」

「きり丸が・・生きたいって思ってくれたこと。きり丸が簡単に生きることを

あきらめるようなやつじゃなくて・・・よかった・・・。」

「庄左ヱ門・・・・。」

「お願いだからなんでも一人でやろうとしないで・・・。」

「・・・俺ら仲間じゃん?もっと頼ってほしいんだよ。」

「・・・・。」

「きり丸?」

「・・・寝ちゃった?」

「うん・・・・ひどい怪我だもの。一日で目を覚ましたのも奇跡だよ。」

「でも・・・・さっきより、ずっといい顔で寝てる気がする。」

「ああ・・・。」

「きり丸ももう大丈夫そうだし、今頃土井先生が怒ってるだろうから・・・」

「うん、授業に戻ろう。」

「はーい。」

みんなが出て行き、最後に乱太郎が戸を閉めるとき小さく呟いた。

「・・・おやすみ。」









「・・・・・・。」









「・・・・・・は組でよかった。」









「俺・・・・生きててよかった・・・。」













きり丸はそう呟くと、深い眠りについたのであった。















― end ―









― こめんと ―



きり丸中心の5年は組。

こんなに長くなるとは予想外でした。

乱太郎は怒らせるときっと怖いんだろうなー。

代々の保健委員がそんなかんじ、私の中では。

 

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