☆他
□●未熟者たち
1ページ/1ページ
いつか、こういう日がくることはわかってた
でも・・・・・どうしていいかわからないんだ
なんだか・・・・どうしようもなく悔しい・・・・
『 未熟者たち 』
最後の・・・・挑戦だった。
三郎次の最後の・・・・。
「・・・ね、三郎次は?」
い組の教室にいくと、そこには左近しかいなかった。
「・・・・しってるだろ?」
「・・・・。」
「四郎兵衛は、どんな気持ちなの?」
「・・・・悲しい・・・かな。」
「悲しいの?」
「・・・うん。三郎次が悲しいなら僕も一緒。」
「そう・・・。」
「左近だって・・・。」
「俺?」
「さっきから泣きそうな顔してる。」
四郎兵衛は左近の横に座る。
誰もいないい組の教室に二人ぼっち。
「・・・・お人よし、かな?」
「ううん。いい友達だよね、左近は。」
「・・・・・・・。」
「・・・・。」
「俺は一番長くあいつと一緒にいたから、あいつの想いの大きさも深さもしってた。」
「うん。」
「だから・・・今はそっとしておいてあげたいんだ。俺、傍にいてもなんもできねぇもん・・・・っ。」
「・・・だったら僕も・・・・なんにもできない役立たずだよ。」
「シロ・・・泣いてる?」
いつのまにか四郎兵衛の目からは涙がこぼれていた。
「あはっ・・・ないちゃった・・・・。」
「・・っ馬鹿野郎ぉ・・っこっちまで・・・うぅ・・・っ。」
「僕らが泣いてもしょうがないのにね・・・?」
「きっとあの馬鹿が泣かないからだ・・・っ。」
「ああ、そうかもね・・・、じゃあ、これって三郎次の涙かな?」
「・・・・・だったら嫌になるまで泣いてやる。」
「・・・・・・。」
「・・・・・ねぇ、四郎兵衛。」
「うん。」
「明日・・・・卒業しちゃうね・・・。」
「そうだね・・・・僕らはあまり話したことのない学年だったね。」
「うん・・・久作も寂しそうだった。」
「そういえば久作は?」
「最後の図書委員会。」
「そう・・・・。」
「・・・左近に四郎兵衛?」
声のしたほうを振り返ると、そこには三郎次がいた。
「三郎次・・・・。」
「なに、泣いてんだよ二人とも。」
「三郎次のせいですー。」
「は、俺?」
「お前がそうやって平気そうなフリするから!!」
左近が三郎次の胸倉をつかんで壁にたたきつけた。
「左近!?」
「・・・・久々知先輩に告白したんだろ?」
「・・・っ!?」
「やっぱりだめだったんだろ。」
「やっぱりってなんだよ!!」
「それはお前が一番よく知ってるだろ?」
三郎次は左近をにらみつける。
「・・・・・・・ああ、そうさ、振られたよ。でも・・・もう何度も振られてるんだ・・・慣れてる。」
「・・・慣れるわけねーだろ・・・っ。鏡で自分の顔みてみろよ!!」
「・・・・・。」
「左近・・・・。」
四郎兵衛は左近の腕を三郎次から離す。
「・・・・すこしでも・・・先輩に追いつきたくてたくさん勉強した。
実技もなんでも人より練習して身に着けてきたのに・・・・っ。」
三郎次の体がずるずると下におりていく。
「追いつくどころか・・・もっと遠くなってて・・・。あの人の隣には絶対いけないのを知っているのに・・・どこかで期待してる自分がいた・・・。でも実際は近ければ近いほど現実を突きつけられて・・・・っ・・・。」
「三郎次・・・・っ。」
左近が三郎次を優しく抱きしめる。
「今日は最後の挑戦だったんだ・・・・。ひどいんだぜ、久々知先輩・・・・。
告白はきっぱり断るけど最後に笑って・・・「ありがとな」って・・・。
そんな顔されたら・・・・っ・・・・諦めるの難しくなるじゃんか・・・・っ!」
三郎次の目から涙が流れる。
「・・・・いいんじゃない?諦めなくて。」
「四郎兵衛・・・。」
四郎兵衛は三郎次の頭を優しくなでる。
「想うだけなら、どんだけしててもいいんじゃないかな?」
「・・・・。」
「何回も振られてるくせに卒業を境に諦めるなんて、らしくないんじゃないの?
三郎次は僕の次に諦めが悪いと思ったんだけど?」
「四郎兵衛・・・お前・・・。」
「とりあえず今はおもいっきり泣きなよ。僕も左近も君のために泣いてたんだから。」
「そうだ、今度は一緒に泣いてやるぞ。」
「明日、笑顔で先輩を見送れるようにしなきゃね?」
「・・・・っ・・・・あー、も・・・・お前らのせいだ・・・っ!!」
「なんとでも。」
「どーせもう泣いてんだ。遠慮なしだぞ!」
「はは・・・っこの馬鹿野郎どもが・・・っ!」
「うん、僕馬鹿です。」
「俺も。」
三郎次の目からどんどん涙が流れてくる。
その隣で左近と四郎兵衛も泣いた。
誰もいない教室で三人は泣いた。
ああ、僕らは・・・・
このときのことを決して忘れはしないだろう・・・・
夜、厠へ向かう途中、久作に会った。
「よ、そういえば今日ははじめて会うな。」
「そうだね。」
「・・・三郎次のことありがとな。左近にもさっきいいに言ってきた。」
「久作がお礼を言うことじゃないでしょ?」
「いや、なんとなく・・・・俺、なにもしてやれなかったし。」
「・・・・久作も不破先輩とお別れだね。」
「ああ、いい先輩がいなくなるのは寂しいな。」
「僕にはそういうのないからうらやましいな。」
「そうか?でも次は滝夜叉丸先輩とかいなくなるんだぞ?」
「あー・・・そっかー。僕以外にあの先輩好きだから泣いちゃうかも・・・。」
「はは、そうか。」
「卒業ってやっぱり悲しいね。」
「うん、そうだな・・・。」
久作も厠へいくのか同じ道のりを歩く。
「四郎兵衛。」
「ほへ?」
「お前がもし・・・・・・・。」
「・・・。」
「や、いいや。やっぱ。」
「・・・・大丈夫だよ、僕は。」
久作がなにを言いたいのかは大体わかる。
「もし、三郎次に好きな人ができて、その人と結ばれたなら・・・僕は迷わず身を引くよ。
でもきっと・・・大泣きしちゃうから・・・そのときは助けてね。」
「四郎兵衛・・・。」
「思うだけなら・・・自由、か。片思いって難しいよね・・・。」
「・・・シロ、お前が泣きたいときは俺を呼べよ。今度は俺が一緒に泣いてやるから。」
「・・・きゅー・・・・。」
「その気の抜けたよび方やめろ。」
「あはは、せっかく真面目な話してたのに〜・・・。」
「そのかわり俺が泣きたいときは付き合えよな?」
「うん!もちろん!!」
「よろしく、親友。」
「がってん、親友!」
そして僕らは・・・・また大人へ近づいていく。
心の痛みも・・・友の優しさも・・・たくさんのことを感じながら
僕らは成長していく。
「久々知先輩・・・・!!」
「三郎次?」
「ご卒業・・・おめでとうございますっ!!・・・・・あなたは俺の目標です・・・っ。」
「ありがと。嬉しいよ。でもな・・・・?」
「久々知先輩?」
「今日からの目標は俺を超えることにすること。」
「・・・・!」
「がんばれ。お前ならやれる。」
「は、はい!!」
「じゃあな、三郎次。またどこかで会うかもな。」
「あ、あの!最後にいいですか?」
「うん?」
「僕は・・・・報われなくても・・・自分の気持ちが落ち着くまで・・・・貴方を想っていてもいいでしょうか・・・っ!?」
「・・・・おう!好きにしろ!」
「はい!!」
どこからが恋のはじまりで、どこまでが終わりかなんて知りはしない。
だから想い続ける。
そして新しいものを見つけよう。
そう、だって僕らは・・・・・・・
僕らはまだまだ未熟者なのだから・・・・・・・
未熟だからこそ、一生懸命がんばるのです。
― おわり ―
― コメント ―
とりあえず五年が卒業しちゃうのと、三郎次が振られる話です。
まだまだなれてない2年生なので微妙なものなんですが、楽しんでいただけたら幸いです。
しろちゃんはまだまだ報われないかな。