☆他

□●未熟者たち
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いつか、こういう日がくることはわかってた





でも・・・・・どうしていいかわからないんだ





なんだか・・・・どうしようもなく悔しい・・・・













『 未熟者たち 』













最後の・・・・挑戦だった。

三郎次の最後の・・・・。

「・・・ね、三郎次は?」

い組の教室にいくと、そこには左近しかいなかった。

「・・・・しってるだろ?」

「・・・・。」

「四郎兵衛は、どんな気持ちなの?」

「・・・・悲しい・・・かな。」

「悲しいの?」

「・・・うん。三郎次が悲しいなら僕も一緒。」

「そう・・・。」

「左近だって・・・。」

「俺?」

「さっきから泣きそうな顔してる。」

四郎兵衛は左近の横に座る。

誰もいないい組の教室に二人ぼっち。

「・・・・お人よし、かな?」

「ううん。いい友達だよね、左近は。」

「・・・・・・・。」

「・・・・。」

「俺は一番長くあいつと一緒にいたから、あいつの想いの大きさも深さもしってた。」

「うん。」

「だから・・・今はそっとしておいてあげたいんだ。俺、傍にいてもなんもできねぇもん・・・・っ。」

「・・・だったら僕も・・・・なんにもできない役立たずだよ。」

「シロ・・・泣いてる?」

いつのまにか四郎兵衛の目からは涙がこぼれていた。

「あはっ・・・ないちゃった・・・・。」

「・・っ馬鹿野郎ぉ・・っこっちまで・・・うぅ・・・っ。」

「僕らが泣いてもしょうがないのにね・・・?」

「きっとあの馬鹿が泣かないからだ・・・っ。」

「ああ、そうかもね・・・、じゃあ、これって三郎次の涙かな?」

「・・・・・だったら嫌になるまで泣いてやる。」

「・・・・・・。」

「・・・・・ねぇ、四郎兵衛。」

「うん。」

「明日・・・・卒業しちゃうね・・・。」

「そうだね・・・・僕らはあまり話したことのない学年だったね。」

「うん・・・久作も寂しそうだった。」

「そういえば久作は?」

「最後の図書委員会。」

「そう・・・・。」











「・・・左近に四郎兵衛?」









声のしたほうを振り返ると、そこには三郎次がいた。

「三郎次・・・・。」

「なに、泣いてんだよ二人とも。」

「三郎次のせいですー。」

「は、俺?」

「お前がそうやって平気そうなフリするから!!」

左近が三郎次の胸倉をつかんで壁にたたきつけた。

「左近!?」

「・・・・久々知先輩に告白したんだろ?」

「・・・っ!?」

「やっぱりだめだったんだろ。」

「やっぱりってなんだよ!!」

「それはお前が一番よく知ってるだろ?」

三郎次は左近をにらみつける。

「・・・・・・・ああ、そうさ、振られたよ。でも・・・もう何度も振られてるんだ・・・慣れてる。」

「・・・慣れるわけねーだろ・・・っ。鏡で自分の顔みてみろよ!!」

「・・・・・。」

「左近・・・・。」

四郎兵衛は左近の腕を三郎次から離す。

「・・・・すこしでも・・・先輩に追いつきたくてたくさん勉強した。

実技もなんでも人より練習して身に着けてきたのに・・・・っ。」

三郎次の体がずるずると下におりていく。

「追いつくどころか・・・もっと遠くなってて・・・。あの人の隣には絶対いけないのを知っているのに・・・どこかで期待してる自分がいた・・・。でも実際は近ければ近いほど現実を突きつけられて・・・・っ・・・。」

「三郎次・・・・っ。」

左近が三郎次を優しく抱きしめる。

「今日は最後の挑戦だったんだ・・・・。ひどいんだぜ、久々知先輩・・・・。

告白はきっぱり断るけど最後に笑って・・・「ありがとな」って・・・。

そんな顔されたら・・・・っ・・・・諦めるの難しくなるじゃんか・・・・っ!」

三郎次の目から涙が流れる。

「・・・・いいんじゃない?諦めなくて。」

「四郎兵衛・・・。」

四郎兵衛は三郎次の頭を優しくなでる。

「想うだけなら、どんだけしててもいいんじゃないかな?」

「・・・・。」

「何回も振られてるくせに卒業を境に諦めるなんて、らしくないんじゃないの?

三郎次は僕の次に諦めが悪いと思ったんだけど?」

「四郎兵衛・・・お前・・・。」

「とりあえず今はおもいっきり泣きなよ。僕も左近も君のために泣いてたんだから。」

「そうだ、今度は一緒に泣いてやるぞ。」

「明日、笑顔で先輩を見送れるようにしなきゃね?」

「・・・・っ・・・・あー、も・・・・お前らのせいだ・・・っ!!」

「なんとでも。」

「どーせもう泣いてんだ。遠慮なしだぞ!」

「はは・・・っこの馬鹿野郎どもが・・・っ!」

「うん、僕馬鹿です。」

「俺も。」

三郎次の目からどんどん涙が流れてくる。

その隣で左近と四郎兵衛も泣いた。

誰もいない教室で三人は泣いた。







ああ、僕らは・・・・







このときのことを決して忘れはしないだろう・・・・

























夜、厠へ向かう途中、久作に会った。



「よ、そういえば今日ははじめて会うな。」

「そうだね。」

「・・・三郎次のことありがとな。左近にもさっきいいに言ってきた。」

「久作がお礼を言うことじゃないでしょ?」

「いや、なんとなく・・・・俺、なにもしてやれなかったし。」

「・・・・久作も不破先輩とお別れだね。」

「ああ、いい先輩がいなくなるのは寂しいな。」

「僕にはそういうのないからうらやましいな。」

「そうか?でも次は滝夜叉丸先輩とかいなくなるんだぞ?」

「あー・・・そっかー。僕以外にあの先輩好きだから泣いちゃうかも・・・。」

「はは、そうか。」

「卒業ってやっぱり悲しいね。」

「うん、そうだな・・・。」

久作も厠へいくのか同じ道のりを歩く。

「四郎兵衛。」

「ほへ?」

「お前がもし・・・・・・・。」

「・・・。」

「や、いいや。やっぱ。」

「・・・・大丈夫だよ、僕は。」

久作がなにを言いたいのかは大体わかる。

「もし、三郎次に好きな人ができて、その人と結ばれたなら・・・僕は迷わず身を引くよ。

でもきっと・・・大泣きしちゃうから・・・そのときは助けてね。」

「四郎兵衛・・・。」

「思うだけなら・・・自由、か。片思いって難しいよね・・・。」

「・・・シロ、お前が泣きたいときは俺を呼べよ。今度は俺が一緒に泣いてやるから。」

「・・・きゅー・・・・。」

「その気の抜けたよび方やめろ。」

「あはは、せっかく真面目な話してたのに〜・・・。」

「そのかわり俺が泣きたいときは付き合えよな?」

「うん!もちろん!!」

「よろしく、親友。」

「がってん、親友!」







そして僕らは・・・・また大人へ近づいていく。





心の痛みも・・・友の優しさも・・・たくさんのことを感じながら





僕らは成長していく。

















「久々知先輩・・・・!!」







「三郎次?」







「ご卒業・・・おめでとうございますっ!!・・・・・あなたは俺の目標です・・・っ。」







「ありがと。嬉しいよ。でもな・・・・?」







「久々知先輩?」







「今日からの目標は俺を超えることにすること。」







「・・・・!」







「がんばれ。お前ならやれる。」







「は、はい!!」







「じゃあな、三郎次。またどこかで会うかもな。」







「あ、あの!最後にいいですか?」







「うん?」







「僕は・・・・報われなくても・・・自分の気持ちが落ち着くまで・・・・貴方を想っていてもいいでしょうか・・・っ!?」







「・・・・おう!好きにしろ!」







「はい!!」













どこからが恋のはじまりで、どこまでが終わりかなんて知りはしない。







だから想い続ける。








そして新しいものを見つけよう。













そう、だって僕らは・・・・・・・













僕らはまだまだ未熟者なのだから・・・・・・・












未熟だからこそ、一生懸命がんばるのです。



















― おわり ―















― コメント ―



とりあえず五年が卒業しちゃうのと、三郎次が振られる話です。

まだまだなれてない2年生なので微妙なものなんですが、楽しんでいただけたら幸いです。

しろちゃんはまだまだ報われないかな。


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