☆他

□●馬鹿な人
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馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!


あの人も自分も



馬鹿ばっかりだ!!





『 馬鹿な人 』 きり丸視点









たった一言







『好きだよ』







笑顔で冗談の延長で言われたから本気になんてできなかった。

相手も何事も無かったかのようにその後も普通の会話に戻る。

鼓動が早くなっているのはわかっている。

顔ももしかしたら赤いのかもしれない。

だから笑ってごまかした。

俺が密かに惹かれているなんて、気づかないように。

恋だと自覚したのはそのときから。



「きり丸?どうしたの?元気ないね。」

「雷蔵先輩・・・。」

そんなに顔にでていたのだろうか?

自分は意外にそういうことは見せないようにしているのに。

「ただの僕の勘だけどね。」

優しい先輩。

だからこの先輩が大好きだ。

「中在家先輩も心配してる。」

「・・・・。」

目の前にはいつのまにか中在家先輩も。

この先輩も優しいのだ。

雷蔵先輩とはまた違った優しさで、懐かしいものがある。

「・・・。」

中在家先輩の手が俺の頭を撫でてくれている。

先輩はよく俺にする。

くすぐったい。

甘やかしてもらってる。

「・・・元気でた?」

「はい。」

「あまり考え込んじゃいけないよ。」

「はい、もう大丈夫です。」

そうだ、あの人のことを考えてもなんの儲けにもならない。

きっとすぐに忘れるさ。



そう、すぐに。



あんな冗談みたいな言葉に振り回されたくはない。





ガラ・・・





「雷蔵。」

あ、鉢屋先輩だ。相変わらず雷蔵先輩の顔・・・。

「ああ、三郎。どうしたんだい。」

「図書室で話していいのか?」

「・・・・・・。」

「今日はもう終いにするみたいだよ。」

「・・・・さすが通訳。」

その言葉通り、今日の委員会は終わった。

こりゃアルバイトにいくしかない!

「・・・きり丸。」

「?なんですか、中在家先輩。」

「・・・今日は当番だ。」

「えーーー!あぁ、本当だ!!ちぇ・・・。」

本気で忘れていた。

今日は図書室の当番だった・・・。

渋々中在家先輩に鍵をもらう。

みんながでていく姿を恨めしそうに見つめながら。

ふとドアの向こうにはまだ雷蔵先輩と鉢屋先輩がいた。



鉢屋先輩といえば・・・・久々知先輩。

頭がよくて、優しい人。

あ、あと豆腐に詳しい。

・・・今度バイト手伝ってくれないかな。

5年生の中でもあまり関わりのない人だけど、綺麗な人だとおもう。

いろんな意味で綺麗。

まっすぐなんだ、あの人。

は組のみんなのように・・・。

だからかな、あまり話したことはないのに、すごく好きなんだ。

きっと鉢屋先輩もそういうとこに惹かれているのかもしれない。






あの人も・・・・・・・












「・き・・・る・・・・きり丸!」

「・・・・え・?」

「大丈夫?」

「なんで・・・・乱太郎が・・・?」

「図書室前を通ったからついでにきてみたら、きりちゃんってば、

ぼーっとしてるんだもん!心配しちゃった。」

「ああ・・・悪い。」

「最近、元気ないね。」

ああ、やっぱり乱太郎は気づいてたんだ。

最近妙に心配するからそうだろうとは思っていたけど。

「・・・・・・。」

「・・・もうこんな時間だね。今日はもう終わりでしょ?」

夕焼けが見えた。

「うわ・・・なにしてたんだ、俺。」

「まぁまぁ、ほら、鍵かけよ。」

乱太郎が戸を開けると、そこには中在家先輩。

「うわっ!ど、どーしたんすか!?」

「・・・・・・・。」

「え、調べ物?でも・・・。」

「・・・・俺が返しておく。」

「なら・・いいんですけど・・・。」

鍵を中在家先輩に渡す。

すると先輩は再び、頭を撫でてくれた。

「・・・・・。」

ああ、この先輩って本当に・・・。

「・・・じゃあ、これで。」

「・・・・ん。」











「・・・心配、してくれてたみたいだね。」

「・・・・うん。」

俺は泣きたくなるのをおさえる。

ほんのたまに優しさに泣きたいときがある。

あの人はいつもタイミングがいいのだ。

・・・・本当に、困りものだよ・・・。

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