☆五年A
□●馬鹿な男だ
1ページ/1ページ
つくづく自分は馬鹿だと思った。
勘違いして
傷つけて
結局、今必死になっている。
兵助・・・・・。
『 馬鹿な男だ 』
「・・・・俺、三郎が好きなんだ。」
周りに誰もいないところで、兵助が言った。
待ち望んだはずの言葉なのに、自分の口からでた言葉はあまりにも正反対。
「・・・・悪い。」
「そっか・・・。」
「へいす・・・・」
「あぁ、いいんだ。俺の一方的な気持ちだし!」
泣きそうな表情。
必死で笑っている兵助。
「だから・・・いいんだ。」
抱きしめたい、と思った。
その気持ちを抑えるかのように三郎はぎゅっと拳をつくる。
「そんな早くにはふっきれないけど、しばらくしたらまた友達だからな。」
「・・・・・。」
「と、友達・・・も・・・だめ、か・・・。」
「いや・・・・友達だ。」
「よかった・・・・。」
「・・・・。」
「じゃあ・・・俺、いくわ。」
「おう・・・。」
「また・・・明日な!」
「・・・・。」
手をふる兵助に手を振り返す三郎。
そのまま三郎はしばらくその場を動かなかった。
「・・・・・・・。」
「・・・兵助?」
兵助が長屋の廊下をゆっくり歩いていると、後ろから聞きなれた声がした。
正直、今は誰にも会いたくなどなかったのに。
「・・・・はっちゃん。」
「・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・ひどい顔。」
「そう?」
「なんかあったのか?」
「いや・・・。」
竹谷は兵助の両頬をむにっとつかむ。
「ひゃっひゃん・・・・!」
「ははは。」
竹谷はすぐ離す。
「いたた・・・。」
「・・・そんなに痛かったか?」
ぼろぼろ涙を流す兵助。
頬のせいではないことくらい竹谷にもわかっている。
「・・・・・痛い・・・。」
「そうか。」
「痛い・・・・・・んだ・・・っ。」
「・・・・・。」
竹谷はそっと兵助を抱きしめてやる。
「・・・・・・・最初から望みなんてないのはわかってたのに・・・っ。」
その言葉にあやすように背中をたたいていた竹谷の手が止まった。
「・・・・・・・。」
「・・・・・っ・・・・・ぅ・・・ふ・・・。」
大声をだすわけでもなくただ泣く兵助。
「・・・・俺じゃ・・・だめなんだろうな・・・・。」
「・・・え?」
「なんでもない。・・・ほら、これで鼻かめ。顔がぐちゃぐちゃだぞー。」
「ん。」
「ほーんと、ひでぇ顔だな!」
「わるかったな!」
「・・・・・・・・ほんと、ひでぇな。」
「はっちゃん?」
「んー。ちょっと元気でたみたいだな。」
「・・・はは。」
「一人で部屋までいけるか?」
「ば、馬鹿にすんな!」
「よし、それだけ元気あれば大丈夫だな。」
「・・・・。」
「あとでうまいものもってってやるから。」
「おう。」
「じゃあな。またあとで。」
「うん。」
「・・・・・・・・あの野郎・・っ。」
竹谷は兵助の姿を見送ると、すぐさま走り出した。
いらいらが募る。
こんなに怒りが込み上げたのは久しぶりだ。
三郎は雷蔵に声をかけられるまでその場に立っていた。
「三郎、ずっとここにいたの?」
「ん、まぁな。」
「変なの。」
「そこは鉢屋三郎ってことで。」
「なにそれ。」
「あ、はっちゃんだ。」
「なんかもの凄く機嫌悪くないか、あいつ。」
「うん。」
「三郎!!」
「へ?」
ガッ!!!
「・・・ぐっ・・・あ・・・っ!」
「はっちゃん!?」
竹谷が思いっきり三郎の腹に蹴りをいれた。
「はぁ・・・はぁ・・・・。」
「な・・・・っ・・・。」
倒れる三郎の上に跨り、襟をぐっと掴む。
「お前、兵助を泣かすな!!」
「八・・・・・お前・・・。」
「ふざけんな・・・っ!!」
竹谷の言葉に顔を歪ませる三郎。
「ちょ、ちょっと!2人とも・・・!」
雷蔵はなにがなんだかわからない。
「こいつ・・・兵助のこと振ったんだ。」
「え?」
「自分も好きなくせに!!」
「・・・兵助、泣いたって?」
「泣かないとでも、思ったのかよ!!」
「三郎・・・・。」
「私は・・・。」
「僕らも兵助が好きだから?譲った?」
「・・・・。」
「それとも怖かった?」
「・・・雷蔵・・・。」
「そんな友情、僕らがほしいなんて言った?」
「勘違いすんなよな。」
「「その優しさが、苛つくんだよ!!」」
「・・・・・雷蔵・・八・・・・っ。」
竹谷はゆっくり三郎から退く。
「・・・・好きなんだろ?知ってるぞ。」
「いい、んだな?」
そういう三郎の腹に雷蔵も一発いれる。
「・・・・っあぐ!!!」
「・・・・馬鹿な男だよ、三郎は。」
「・・・・・。」
「どうするんだ、三郎。」
「・・・・・は、はははは・・・・。」
「・・・・・。」
「馬鹿だなぁ・・・・本当に。なんで・・・あんなこと言えたんだろ。」
「好きなんだろ?」
「・・・ああ、好きだ・・・・好き、だなぁ。」
「僕らが兵助を奪ってもいい?」
「だめ。」
「そう。」
「・・・もう、馬鹿なことしないでくれよ?」
「ああ・・・。」
三郎はふらつきながら立ち上がる。
「・・・・兵助のとこ、いかなくちゃ・・・・。」
「兵助は自室だよ。」
「ん。」
「「でもその前に。」」
「え?」
両肩をつかまれる三郎。
「僕まだ怒ってるんだ。」
「俺も。泣いてる兵助に手も出さず、三郎のために動いた俺偉いよなー。」
「それは兵助のためだよね?はっちゃん。」
「もちろん。」
「え、ちょ、お前らっ!」
「一発で足りるとおもった?」
「幸せの痛みだと思え!」
「わーーーっ!!!」
バキッ!!
ドカッ!!
・・・・・
「・・・・はっちゃん、おそいなー。」
兵助は立ち上がり、竹谷のいるであろう食堂へと歩き出した。
「・・・・・あ。」
「・・・・・よ、よぉ。」
廊下に一歩でたところで一番会いたくない三郎にあってしまった。
しかし・・・
「だ、大丈夫か!!?」
痣だらけの三郎をみてびっくりした。
一体なにがあったのだろう。
「ほ、保健室に・・・!」
「や、いいんだ。」
「でもお前・・・。」
「兵助・・・。」
三郎の手が兵助の頬に触れる。
「・・・・っ。」
「・・・・。」
「さ、三郎・・・?」
「・・・・・。」
「・・・・。」
「・・・なぁ。」
「・・・?」
「好きだ・・・って言ったら、どうする?」
「え・・・?」
「俺が、兵助を。」
「じょ、冗談言うなよ・・・。」
「冗談なんかじゃない。」
「・・・・・・・っ。」
「好きだ、兵助。」
兵助は三郎の手を払う。
「・・・・信じられるか!!」
「・・・・・・・っ。」
「も・・・やめてく・・・・・・・っん・・・っ!!」
三郎は兵助を部屋の中へ押し込み、強引に口付ける三郎。
「・・・・私は馬鹿だった。馬鹿でどうしようもなくて、いろんなやつ傷つけた。」
「・・・・。」
「なにが最善とかなにが周りのためとか勘違いして、一番大事なもの傷つけた。」
「さぶろ・・・?」
「兵助・・・・愛してるんだ。」
「・・・・。」
「傷つけて・・・ごめん。」
「さ・・・ぶろ・・・。」
「兵助、まだ私のことがすきか?」
「・・・・・そんなに早く忘れられないよ。」
「こんな私でいい?」
「・・・うん。だってそんな三郎がすきなんだから・・・。」
「ありがとう。」
「・・・・・・っ。」
「・・・ああ、泣くなよ。」
「うるさい・・・・っ今は涙腺が弱いんだ・・・っ。」
「・・・・はは。私のせいだよな。」
「他に誰が俺を泣かせることができるんだよ・・・・!」
「いないねぇ〜。」
三郎は嬉しそうに兵助の涙を拭う。
「・・・う・・・っ。」
突然三郎がその場に跪く。
「三郎!?」
「いってぇ・・・・・っ。」
三郎は上着を脱ぐ。
「うわぉ・・・・。」
「な、なにこれ。すごい痣・・・・。」
「手加減なしだったもんなー。」
「誰にやられたんだ?」
「雷蔵と八。」
「なんで?」
「愛と友情の戦いで得た勲章さ。」
「はぁ??」
「顔も酷いけど・・・集中的に腹ばっかやられたもんなー・・・・はは。」
「喧嘩じゃないんだろ?」
「おう。」
「ふーん?」
「とにかく保健室いくわ。」
「それがいいと思う。」
「もちろん付き添ってくれるだろ?」
「嫌。」
「え。」
「・・・なんてね。」
「・・・。」
「ほら、肩に腕を・・・・っ。」
三郎は兵助にすばやく口づける。
「・・・・んじゃ、肩かりるぞ。」
「・・・・。」
「・・・・・。」
「い、いくぞ。」
照れている兵助を見て三郎は幸せそうに笑う。
「困ったな・・・。」
「?」
「とんでもなくお前がすきだわ。」
どうやら私は本当に馬鹿だったようだ。
そうさ、私は『兵助』馬鹿。
うん、半分冗談。
― おわり ―
― コメント ―
中途半端!!!(笑)
あーあ、三郎情けない・・・!!!
でもものすごく楽しかった・・・・vv
こういうのもいいね。