☆過去拍手

□○拍手C
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『拍手6年』6年の日常。



伊作はぼけーっと穴の中から空を見上げていた。

「いー天気・・・・。」



こんな日は留や小松田さんでも誘ってお茶したいなー。



「・・・お前、なにしてるんだ?」

「あ、文次。」

「自らこんなとこにいるわけではないんだろ?」

文次郎はため息を吐きながら手を差し出してくれる。

「多分、綾部の塹壕だとおもうんだよねー。意外と深くってさー・・・。」

「馬鹿が。」

「よいしょ・・・。ありがと、文次。」

「気をつけろ。お前がいないと新野先生以外に頼れるやつがいなくなるからな。」

「・・・・・・・。」

「?」

「ふふ、まさか文次が・・・。」

「な、なんだ。」

「いや、こへや文次のそういうまっすぐなとこはいいよね。」

「は?」

「留はああ見えて優しいし、機転がきく男だし、仙蔵は優秀というのがよく似合う男。」

文次郎は伊作の言うことを黙って聞いている。

「長次は口数こそすくないけど、すごく誠実で真面目だとおもう。」

「・・・・。」

「ね、文次はみんなのことどうおもうの?」

「そんなことが聞きたいのか?」

「ききたいね。みんなに聞いてまわりたいくらい。

でも見てるだけでもわかるんだけどさ、君達のことは。」

「なら・・・。」

「もう最後の学年だし、いつ終わるかわからない人生の中で、

君たちのこと改めて考えてたんだ、さっきの穴の中で。」

「・・・伊作。」

「・・・・ごめん。ただ僕はみんなが好きだな〜って感じただけ。」

「・・・恥ずかしい奴だ。」

「突然あんなこと言ってごめん。まだまだこれからなのにね。」

「ああ。」

「ふふ。」

「あ?」

「僕はなんで文次にこんな話をしているんだろうっておもって。留とか小平太とかじゃなくてさ。」

「知るか。」

「みーんな優しいから、困るんだよね・・・。」

「・・・優しくなんてないだろ?」

「・・・・優しいんだよ。」

「・・・。」

文次郎はなんとも複雑そうな表情をしている。

その顔をみて伊作は笑う。

「・・・さて、文次にも助けてもらったし、乱太郎たちも心配してるかもしれないから

早く戻らないと。」

「ああ、そういえば探してたぞ。」

「あらら・・・。」

「早く戻れ。うちの団蔵も巻き込まれてるんだ。早く帰してくれ。会計が進まん。」

「おやおや、それはごめんね。」

「・・・いや。」

「・・・文次も探してくれてたのかな?」

「・・・たまたま通りかかっただけだ。」

「ふふ、へぇー、たまたまねー。」

「うるさい!さっさといけ!」

「あはは!じゃあ、さっさっといきますよー!」

「・・・・・ふん。」

伊作は砂を払うと、歩き出す。



「・・・・伊作。」



文次郎が呼ぶので振り返る。

「?なにー?」

「俺は、お前は誰よりも優しいし、まじめなのを知っている。」

「・・・・・っ。」

「・・・・不運に隠れてみんなみてないだけだ。」

「不運はいらないでしょ・・・。」

「・・・・不運じゃなきゃお前じゃない。」

「あーそーですか!・・・・文次。」

「・・・。」

「ちゃんと僕をみてくれててありがと。」

「・・・ダチ、だからな。」

「いー友達だよ、文次は。」

「・・・・恥ずかしいやつだ。」

「本日2回目。でも文次もけっこう恥ずかしいこといってるよ?」

「な、なに?!」

「ふふ、教えてあげないけどねー!」

伊作は手を振りながら走り出す。



「じゃあ、またねー!」



「おい!気をつけて走れ!!」



「だいじょー・・・・おわぁぁああ!!!」



「はぁ・・・・。」



文次郎はため息をはきながら伊作の落ちた塹壕へと歩き出した。



「世話の焼けるやつ・・・・。」









「・・・・・・・ダチだから・・・、許すけど。」









ボソリと呟いたその呟きはだれにも聞かれることなく風に消される。







・ ・・・はずだったのだが・・・・。





「・・・・恥ずかしい奴らだ。」







そういいながら満足そうに笑う仙蔵の姿が木の上にあった。






― おわり ―







『食満くく』拍手







お昼、4人は食堂へとやってきた。

「・・・な〜んか騒がしくね?」

「うん、これは・・・・。」

「まったく・・・。」

「あー、やっぱり食満先輩と潮江先輩だ。」

食堂に入るやいなや、武闘派2人が喧嘩をしていた。

「どうする?」

「どーするってもなー・・・。」

「立花先輩か先生くらいしか止められないし。」

「僕らが命がけで止めるのも嫌だものねー。」

「うんうん。」





「文次郎!お前はいっつもいっつも・・・・・」

「なんだとぉぉおお!!・・・・」

「この野郎・・・!・・・・」

「今日こそ決着・・」







もうなにを言っているのやら。

お互いにボロボロである。



「あー!また2人とも喧嘩してるのかい!!?」







「あ、善法寺先輩だ。」

伊作は果敢にも2人の間にはいっていく。

「大丈夫かな?」

「さぁー・・・・。」





「2人とも、ここは食堂だよ!!」

「どけ!伊作!!」

「へたれ委員長は黙ってろ!」

「・・・・そう。」

伊作はゆっくりとそこから離れる。



「仙蔵――!!文次がよんでるよー!!」



「は!?」

「い、伊作?!」

食満も文次郎も驚いている。

「仙蔵――!!」

「よんだか、伊作。」



「ぎゃあぁぁぁぁ!!!!」

仙蔵がでてきた瞬間に文次郎は悲鳴を上げた。

「失礼なやつだな。お前が呼んでいるというからきたというのに。」

「呼んでない・・・俺は断じてお前は呼ばん!!!」

「ほほぅ、いい度胸だ(怒)」

仙蔵は胸元から縄を取り出す。

「・・・ひっ!」

「ほれ、逃げろ文次郎。捕まえて手裏剣の的にしてやるぞ?」

「あほかぁぁ!!!」

文次郎はそういうと走り出す。

仙蔵は実に楽しそうに追いかけ始めた。

「わわっ!2人ともやるなら外にでてよ!」

伊作がそういうと、文次郎は出口にむかって走り出した。

出口には五年がまだいた。

「お前ら!どけぃ(汗)!!」

「ははは、楽しいな文次郎〜!!」

仙蔵はそういうとそこに落ちていたネギ数本を投げた。

「うわぁぁ!!!」

あせったのは文次郎だけではない。

すぐそばにいた兵助たちも驚いた。

ネギはものすごい速さでこちらにむかってくる。

「うわっ!」

「兵助!」

兵助も避けようとしたが、足元に散乱した食器やらに躓いてバランスを崩した。

「やばっ・・・!!」

ネギとはいえ、あのスピード。

痛いではすまないだろう。



「兵助っ!!」





パンッ!





「・・・・・ぁ。」

「ぜーはー・・・・・っ。」

兵助の目の前にはボロボロになりながらも苦無でネギを叩ききった食満だった。

「け・・・食満先輩・・・・。」

「はー・・・・はー・・・・。」

体力がほとんどないのか、息切れがはげしい。

「あ、あの・・・。」

「だい・・じょうぶ・・だな。」

「は、はい!」

「そうか・・・。」

食満はそういうと兵助の頭にぽんっと手をのせて、微笑んだ。

「悪かったな。巻き込んで。」

その表情にどきっとした。

「い、いえ。ありがとうございます!」

「気にするな。」

「・・・・・。」

「じゃあな。」

「じゃあなじゃないでしょ、留。」

「い、伊作。」

「片付け。」

「はい・・・。」

「僕も手伝ってあげる。」

「いつも悪い。」

「いいよ。」



遠くから伊作と食満のことをみつめる兵助。

「兵助、どうしたの?」

「いや・・・あのさ・・・。」

「うん?」

「食満先輩って・・・・」

「?」

「かっこいいよな・・・・。」

「「「・・・・・!!!?」」」

ぼけーっとそういう兵助に他の3人は衝撃を隠せなかった。

「はぁ・・・・。」

その後も兵助はぼけーっとしていた。



「俺も、ああいうかっこいい男になりたいな・・・・・。」



しかし、その呟きは誰にも聞こえてなかったのだった。







翌日





「兵助、俺かっこよくない?」

「は?」

「兵助、僕ってどう?」

「はぁ?」

「俺の今日の笑顔輝いてない?」

「はぁぁあ!?」



その次の日の3人は不気味なくらい輝いていたそうな。







「あ、食満先輩だ。」

「なに!?」

「お、おはようございます。」


「おう、おはよう。」







「はぁー・・・・かっこいいなぁー・・・。」







「「「ガァァァン!!!」」」







このとき、5年のブラックリストに食満の名前が刻まれた。





― おわり ―


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