☆長

□●それでも僕らは・・・E
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キラキラ輝くのは君がいるからで





目の前が暗いのは君がいないからで





今なにが俺を動かしているのだろう





わかるか?







八・・・雷蔵・・・










『 鉢屋三郎 』










満月まであと少し・・・



三郎は自身の顔に変装のメイクをほどこしていく。









「秋休みを早めるなんて思わなかったな。」

「先生たちは兵助の所属してた城の警備でほとんど借り出されてるし。」

「しょうがないよ、こっちが先かあっちが先か・・・。」

「わかりきってることだよな・・・。先生達に気を使わせた・・。」

「うん・・・僕達を信頼してくれた。」

「今日で終わらそう・・・。」

「もちろん。三郎もそのつもりだよ。」

「太助のほうは?」

「伊助たちが傍にいる。もしものときのために土井先生や山田先生もいてくださっている。」

雷蔵が空を見上げる。

月は雲にかくれている。

「あの雲がきえたら・・・・。」

「ああ、始まる・・・。」



緊張感が高まる。

月明かりが徐々に照らし出される。



月が・・・・満月がみえた。





キィィ・・・





静かに・・・・正門が開く。




月明かりでよく見える・・・






ああ・・・・三郎・・・・








その姿は・・・・







「兵助・・・・・。」

「馬鹿野郎・・・・・どうして・・・・・。」

久々知の姿が目の前にある。

懐かしいけど、やはり違う。



わかる・・・・



「っ・・・。」

「やぁ、雷蔵、はっちゃん。久しぶりだな。」

「やめてよ・・・。」

にっこり笑って、兵助の口調で・・・・

「兵助の真似なんてやめてよ!」

「雷蔵?なにいってるの?俺本物じゃん。」

「馬鹿にしないでよ、・・・・三郎。」

雷蔵がそういうと三郎は表情をけす。

髪を撫でる。

「・・・この髪、兵助の髪の毛で作ったんだ。本人のだからよりリアルだろ?

触るたびに思い出すんだ・・・。」

「三郎・・・。」

「頭痛がする・・・、何かと何かが反動して辛いんだよ。

兵助はもういないのに兵助を求めてる。

でも・・・・もういない・・・・なぜか?

俺以外の誰かに殺されるなんて許さないのにその誰かに殺されたからだ。」

三郎の顔が酷く歪む。

「なぁ・・・兵助はなんで殺された?」

「ここの生徒のせいだよなぁ?」



「無駄な殺生はしないでやるからさ・・・・だせよ。」



「そいつの次はてめぇだ・・・・八・・・・。」





「三郎・・・・。」

「三郎っ!」

「兵助が望む望まないじゃない・・・・もう抑えられないんだよ。」

「三郎っ・・・!!」

竹谷が一歩前にでる。

「悪いが、太助のとこにはいかせない。」

「はっちゃん!!」

「俺は太助を守るときめた。だからいかせない。」

「八・・・・、私に勝てるとおもうのか?」

「思わない・・・だが、相打ちの覚悟はある。」

「ふーん・・・。」



「三郎!はっちゃん!!」



「雷蔵!お前もどうしたいのかはっきりしろ!!」



「僕は・・・・・っ。」



「雷蔵、俺は自分が狂っているなんて微塵もおもっちゃいない。

ただ、兵助の仇のなかにお前らがいただけだ。」

「・・・狂ってるよ。お前、自分でもわかってないだけなんだ!」



「黙れよ、八。」



「お前が兵助にとって嫌なことをするわけがないんだ!気づけよ!!」

「・・・・・・・。」



「やめてください!!」



「お前・・・・・っ!!」

「僕の・・・僕のせいなんです!!」

「太助・・・!!どうして!!」



「・・・・・・。」

雷蔵の声と同時に三郎は手裏剣を投げた。

「しまっ・・・!!」



キィィイン!



「伊助!!庄左ヱ門!!きり丸!!」

「すいません・・・!先輩!!」

「目をはなしたせいで・・・!」





「庄左ヱ門・・・・ひさしぶりだな・・・・・。」

「鉢屋・・・先輩・・・・。」

庄左ヱ門が太助を抱きしめる。

きり丸はそれを守るように前にたつ。

伊助は三郎を睨み付けている。

「お前・・・二郭・・伊助だっけか。」

「そうです。」

「兵助が可愛がってた・・・。」

「・・・・・・めてください・・・。」



「久々知先輩の顔をやめてください!!」



「・・・・じゃあ、こっちの顔ならいいのか?」

三郎は兵助の変装を解き、昔の、雷蔵の顔に変装した。

「伊助・・・お前、憎くないのか・・・?

お前の大好きな兵助が死んだのはそこにいる太助とかいうガキのせいだぞ。」

伊助は唇を強くかむ。

「悲しいだろ?その悲しさをその餓鬼を殺すことで晴らせばいい・・・。」

「・・・・っ。」

「なぁ、伊助・・・。」

「僕は・・・・・・。」

「に・・二郭先輩ぃ・・・。」

庄左ヱ門の腕の中で太助が泣いている。



「僕は・・・・太助を殺すことはできません。」

「ほぉ・・・。」

「伊助・・・。」

「久々知先輩が命を懸けて守ったこの子を守るのが僕の役目です。」

「・・・・。」

「鉢屋先輩は間違っています!!久々知先輩が守ったものを貴方が・・・・

一番ちかくにいた貴方が壊さないでください・・・!!」

「・・・そうです、貴方も、この子も守りたいから僕らはあなたの前に立つ。」

「庄左ヱ門・・・。」

「俺はあんたの気持ちが死ぬほどわかります・・・。

でも、・・・先輩はもっと悲しい思いを雷蔵先輩や竹谷先輩にさせようとしているのがわからないじゃわけないでしょ・・?」

「・・・・。」





「・・・・・それでも俺は・・もう止まれない・・・。」





それは酷く歪んだ笑顔で・・・・





三郎は太助に向かって手裏剣を投げると同時に刀を手に走り出す。



キィィン!!



「やめろ!!」

「邪魔なやつだ・・・・。じゃあ、お前から殺してやるよ!!」



ドガッ!!



三郎は竹谷に蹴りを入れる。

竹谷は防いだものの、体制を崩してしまう。

「この程度か?」

「・・・・っ!」

竹谷が三郎に仕掛ける。

「ちっ・・・。」

三郎は手裏剣で一旦距離をとった。

「ははっ・・・・やるな。」

「死ぬ気でやってるからな・・・。」

「ふん・・・じゃあ、早く死ねよ・・・。」

三郎が竹谷に向かって刀を振る。

それを受け止める竹谷。

「三郎・・・目を覚ませよ!!」

「・・・・うるさい!!」



ドガッ!!



「ガッ・・・・!!」

「はっちゃん!!」

「竹谷先輩!!」

倒れこむ竹谷の肩に苦無を打ち込む。



「っぐぁぁあ!!」

首に刀をあてる。

「・・・さよならだ、八。」

「さ・・ぶろ・・・。」

「・・・・・・・・・。」

きり丸や伊助たちは助けようとするが、動いた瞬間にきっと三郎は竹谷を殺すだろう。

「・・・。」

三郎が刀を動かそうとしたそのとき、冷たい風が吹いた。





「・・・・・・・ぁ・・。」



三郎の身体から嫌に光る刀がみえた。

「・・・さぶろ・・・・。」

「ら・・雷蔵・・・。」

「・・・・っ。」

雷蔵が刀をゆっくり抜く。

倒れこむ三郎。

竹谷は倒れこんでくる体を抱きとめる。

「三郎・・・っ。」

雷蔵はその場に座り込む。

「ら・・・いぞ・・・はち・・・。」

「三郎!!」

「八・・・雷蔵・・・・わりぃ・・・。」

「なに・・・謝ってんの・・・。」

「はは・・・たしかに・・・。」

そう笑った顔は昔の鉢屋そのもので・・・。

「なにもかも・・・最初からわかってた・・・・。でも・・・それでも俺には兵助が必要だった・・・・・・。」

空に手をのばす三郎。

「兵助がいて俺の世界が綺麗になった・・・・・はじめて自分がほしくて・・・ほしくて堪らなくて

・・・そして手に入れた・・俺だけの・・・・。」

「三郎・・・・ごめん・・・・俺・・・。」

「わかってる・・・・わかってるんだ、八・・・。お前のせいじゃないんだよな・・・。

怨むなら忍の道を選んだ己らなんだ・・・。」

「・・・・・。」

「どんな結果になってもお前らのこと嫌いになれるわけがなかった・・・・。」

「それ・・・。」

「兵助がいってたな・・・覚えてるか?」

「ああ・・・。」

「兵助が死んだとき・・・怨んでしょうがなかったときでも・・・・やっぱり駄目だった・・・・っ。」

三郎の目から涙がながれる。

「俺、兵助にお前のこと・・・頼むって・・・。」

「兵助が・・・・。」

「僕は・・こんな形でしか・・・君を止められなかった・・・!」

「ああ・・・泣くなよ・・・。いいんだ・・・・最初から死ぬつもりだった・・・

雷蔵か八に殺してほしいと・・・止めて欲しいと心がずっと叫んでた。」

庄左ヱ門や伊助も近くにやってきた。

「は・・・ちや・・せん・・・ぱ・・。」

「しょう・・ざ・・・。」

「僕は・・・貴方も・・・守りたかった・・・!」

「十分救われた・・・・、伊助・・・お前にも・・・。」

「先輩・・・。」

「お前は強いよ・・・俺は・・・弱かった。」

「そんなことは・・・。」

「・・・でもな、兵助をこんなにも愛したことに後悔なんてしていない。」

三郎は月をみて笑う。

「雷蔵・・・・、辛いこと、させたな。」

「・・・・馬鹿。」

「ああ、大馬鹿者なんだ、私は・・・。」

「・・・・・三郎。」

「・・・兵助は昔俺たちがみつけた秘密の場所にいるよ。」

「え・・・?」

「墓・・・・つくってある。」

「あ・・・。」

「・・・頼む。」

「うん・・・。」

「雷蔵・・・八・・・・・・兵助・・・。」





「・・・・・。」





月明かりが眩しい。





兵助・・・・・





また、お前に逢える・・・





三郎はゆっくりと目を閉じていった。







「・・・・兵助、三郎。」

「・・・・・っ・・・。」





「先輩・・・。」

「伊助、庄左ヱ門、きり丸・・・。」

「あとのことは任せてください。」

「先輩たちは・・・行ってください。」

「・・・ありがとな。」

「太助・・・、その命、大事にしろよ・・・。」

「は、はい。」

竹谷は三郎を担ぐ。

雷蔵は三郎が使用していた兵助の髪の毛を拾う。





そして2人は忍術学園からでていった。







「「秘密の・・・・・。」」










― つづく ―











― コメント ―




まだもうちょっと続きます!


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