☆他

□●夕焼けの色
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俺だってずっとみていたんだ







でも自分よりも他のが大事で・・・







どうでもよくなってた













『 夕焼けの色 』















四郎兵衛が三郎次の事がすきだって知ったのはつい最近。

本人からも聞いたし、なによりみてればわかった。

でも四郎兵衛にはいってないけど、もうひとつ気づいてたことがあったんだ。



「能勢先輩?どうしたんすか?」

「ああ、きり丸・・・なんでもない。」

「昨日が卒業式だったなんて信じられませんよね。」

「そうだなー、もう不破先輩もいないんだもんな。」

2人で話すなか、他の下級生は怪士丸の指示に従って図書室の整頓をしていた。

「能勢先輩がただ一人の上級生ですね。」

「大変だなー・・・。」

「大丈夫っすよ、怪士丸がいますから!」

「お前もな。」

「ま、あんまり頼りにはしないでくださいね。」

「いいや、頼る。というわけで、図書カードの返却日の確認よろしくな。」

「能勢先輩は新刊のチェックお願いしますね。」

「えー。」

「頼りにしてるっすよ、委員長。」

そういうときり丸は面倒そうな顔の久作を無視してその場を去っていった。





委員会が終わり、久作は自室でのんびり本を読んでいた。

図書委員会になってからは本をよく読むようになったと思う。

そこから得られるものも大きかったし、自分自身楽しかった。

「・・・・・・・。」

ただ、どうも今日は集中力がないみたいだ・・・。

久作は本を閉じ、寝転がる。





「シロ・・・・。」





・・・・お前のことだから気づいてないと思うけど、左近・・・・

そう、左近な・・・・、あいつ、お前よりずっと前から三郎次のこと好きだったんだぜ?

知らないんだろうな。

ああ、でも知ってたら知ってたであいつのことだから宣戦布告しそうだ。



左近は・・・知ってるだろうな、四郎兵衛の気持ち。

あれだけ毎日告白してたらそりゃあなぁ。

でも不快そうな顔も、悲しげな顔も一切しない。

それとも俺の勘違いなんだろうか?

いや、それはないだろ。この俺が間違えるわけがない。



「そうだ、間違いない。」

「は?なにが?」

「ん?左近が三郎次のことを好き・・・・・って・・・・は?」

体を起こし、思わず戸の方へ顔を向ければそこには左近がいた。

目を丸くする左近に背中がひやりとした。

「さ・・・左近・・・。」

「なんで・・・・知ってんだよ。」

「や・・・・えーと・・・勘?」

「さっき間違いないっていっただろ。」

「はは・・・。」

「・・・・・でも、残念ながらはずれだ。今は好きじゃない・・・。」

「え?嘘つくなよ。」

「嘘じゃない、4年になって気づいたことがあってさ、今は三郎次は親友で収まってる。」

「嘘ぉ・・・・。」

「こら疑いすぎだぞ。いくら自分の勘が外れたからって。」

「いや、勘ていうか・・・・・うそだろ・・・。」

もうそれしかいえなかった。

俺は左近をずっと見ていたはずなのに・・・。

変化に気づかなかったなんて・・・。

「し、四郎兵衛が積極的だからあきらめたとかじゃないんだよな?」

「違うな。でも変化があったのはそのときくらいからだけど。」

「へぇー・・・。」

「嫉妬も嫌悪もなんにも感じなくて、本当に友人して2人のことみてた。」

「・・・・。」

「なんかさ、別のことが気になりだして、そっちが気になってたんだ。」

「別のこと?」

「ほんのたまに切なそうな視線をその二人に送ってる子がいてね?

それに気づいてしまってさ、ずっと気になってるんだ。」

「へー?あいつらに恋でもしてる子かな?」

「そうかもな。」

「で、その子が今左近の好きな人ってこと?」

「うん。どうにも大好きらしい。」

「ふーん・・・?」

「あ、そうだ、いい菓子があるんだ。お茶してけよ。」

久作はそういうと立ち上がり、お茶を入れようとする。

左近は無言で座る。

「はい、どうぞ。」

「ありがと。」

久作も左近の前に座る。

「でも大好きだなんてよく言えるな。恥ずかしくないのか?」

「ああ、そいつどうも鈍いらしくてこうでも言わないとね。」

「でも俺にはっきり言ってもな。」

「・・・だから、どうにも鈍いっていったでしょ?」

「ああ、練習台なわけね。」

「・・・・。」

「どんな子なんだよ、鈍い以外に。」

「人のことばかり考えてるけどちゃんと自分のこともわかってて・・・、

さりげなく俺だけじゃなくて三郎次や四郎兵衛も助けてくれて、すごくいいやつ。」

「へぇ、いい奴じゃん。」

「そんな子が辛そうな表情してるの・・・みちゃったから・・・すごく気になって。」

「んで、好きに?」

「気づいたらね。」

「・・・。」

そういう左近の表情はすごく柔らかく、久作はどこか締め付けられる感じがした。

本当はこの話はさっさと終わらせてしまいたい。

「そう、今だって・・・・。」

「え?」

急に左近が久作に手を伸ばす。

「左近・・・?」

「・・・・どうしてそんな寂しそうな顔するんだよ。」

「そんな顔してないよ・・・。」

「してる。」

なんで、断言できるんだよ・・・。

「左近・・・?」

「僕は間違えない。」

「・・・?」

「俺はその表情を見るたびに心が締め付けられるっ。」

「さこ・・・っ!」

急に左近の顔を目の前に現れ、唇にかすかに何かが触れた。

「・・・久作、もっと僕を意識してよ。」

「さこ・・・・・。」

「好きだ。」

「・・・・・・嘘だ・・・。」

「嘘じゃないよ。僕が嘘が苦手なの知ってるじゃないか。」

左近は久作から離れる。

「・・・お茶、ありがと。もうすぐ夕飯だから、先いくよ。」

そういうと左近は静かに部屋から出て行った。

残された久作は唇に手をあて呆然としていた。

「・・・・俺は・・・・・とっくに意識してるっつーの・・・・っ。」

そう思いながらも体が動かなかった。

「腰・・・・抜けた・・・・。」

あまりに突然であまりに嬉しくてあまりに・・・・・左近が近くて・・・・。

「・・・・・俺、鈍いのか・・・。」

ずっと左近を見ていた。

その左近が今度は自分を見ていたことに気づかなかったなんて。

気づいたところで自惚れるわけじゃないけれど・・・。

ずっと・・・・好きだったんだ・・・・左近。

だから、四郎兵衛が三郎次に告白する現場を目撃するたびに

上手くいけばいいと思う気持ちと、左近が傷ついてるんじゃないかって

思う気持ちがせめぎあってた。

親友の応援も想い人の傷心、どっちも捨て切れなかった。

だから静かに恋心が終わるのをまっていたのに・・・・。



もしかしたらそれが無意識に表情にでていたから、左近はああいったのかもしれない。

そのおかげで左近を振り向かせられたのなら、あの苦い思いも悪くなかったんだと思えた。

「・・・・・そうだ・・・返事、してない。」

左近は誤解している。

自分の片思いだと。

「・・・・。」

今ここで名前を呼んだら現れないだろうか?

そんな物語のようなことはおきないだろうか。

「・・・・・・・左近、いないのか?」

誰もいないのか静かだ。

「そりゃ・・・いないだろうな・・・。」

とりあえず今は早く立てるようにならなければ・・・。

歩くこともできないのでは左近のもとへもいけないではないか。

「あー・・・どうしよ・・・。」

「・・・・久作。」

「え?」

声のするほうをみると左近がいた。

しかし、それは戸をあけず、たっている影。

でも影と声だけでも十分わかる。

「いい忘れてたんだけど・・・。」

「うん・・・?」

「返事、無理することないから・・・。久作の言いたいときでいいから。」

「左近・・・。」

「・・・・・。」

「・・・お前、人のこと鈍いったけど、お前も相当だよ。」

「は?」

「今俺がどんな状況かわかるか?」

障子越しに左近の戸惑う気配が伝わってきた。

「・・・・腰抜けて・・・動けないんだ。」

「は?」

「く・・・・口付けなんてするから・・・っ。」

「・・・・ごめん。」

「左近は・・・わかってない!」

「・・・・。」

「俺がどれだけお前のことが好きかってことを・・・・!」

「・・・・え?」

「ドキドキしてバクバクしてもう嬉しすぎてわけわかんねーし・・・っ!!」



カタ・・・



「久作・・・・・。」

左近は戸をあけ、久作に近寄る。

「久作って・・・・俺が好きだったの?」

「・・・・ずっと・・・好きだった。」

「・・・・・・・・・・。」

左近は口元に手をやる。

「左近?」

「わ・・・・・うわ・・・・どうしよ・・・。」

「さこ・・・・」

「〜〜〜〜っっ!!!」

その場にしゃがみこむ左近。

「お、おい?!」

「あー、ごめんっ!俺相当・・・・・・・。」

「相当・・・なに?」

「お前に惚れてる・・・・。」

「・・・え・・・・・あ!!?」

そう微笑んでくる左近に全身がカッと熱くなった。

「顔赤い。」

「・・・お互い様。」

「うん。・・・・・久作、好きになってくれて・・・ありがとな。」

「それは・・・こっちのセリフだ・・・っ。俺ずっと片思い覚悟で・・・・お前なんかよりずっと・・・ずっと前から好きで・・・・。」

「うん・・・。」

左近は久作に近寄る。

「まだ・・・動けない?」

「・・・・・動けない。」

「・・・・・。」

「・・・・っ。」

掠めるだけの口付け。

「・・・・。」

「左近・・・。」

「ん?」

「俺と・・・付き合ってください・・・?」

「・・・なんで疑問系なのさ。」

「なんか妙な感じがして・・・。」

「はは・・・・そうだな、男同士だしな。・・・・でも、しょうがない。」

「・・・人に口付け2回もしといて断るなんてないよな?」

「もちろん。喜んで・・・・・っわ・・・!」

左近がそういうと久作が左近に抱きついた。

「・・・・なーんだ、腰、なおってるじゃないか。」

「今なおった。」

「その嘘は上手くないなぁー。」

「うるさい。」

「はは。」





ぐー・・・





「・・・そういえば御飯たべる予定だったんだった。」

「俺も・・・腹減った。」

「今日の御飯はなにが出てもおいしく食べれそう。」

「同感だ。」

「・・・いくか、三郎次たちも待ってるだろうし。」

「おう!」

そういうと二人そろって食堂にむかった。

いつもと同じ態度で同じ会話で、いつもの2人だけど

2人をつつむ空気だけが微妙に変わっていた。

「2人になんて言おっかなー。」

「・・・言うんだな。」

「俺らみたいに妙なことにならないようにだぞ。」

「あーなるほど・・・。」

「それに俺がいいたいだけ。要は自慢。」

「自慢できるほどの男じゃないぞ俺。」

「俺が幸せだってことを見せ付けれればいいんだよ。ほら、あいつら片思いだし。」

「わー、左近性格わるー。」

「棒読みでいわれてもねー。」

そうにやっと笑う左近に久作も意地悪そうな笑みを返した。

その後、幸せそうな2人・・・むしろ左近に三郎次は泣きそうになっていたそうな。

そして四郎兵衛は久作に「いつ好きになった」など質問攻めにし、久作を疲れさせていた。











「左近、久作のこと頼んだよ!こうみえてもかわいい男なんです!」

「四郎兵衛・・・・・大丈夫、必ず幸せにしてみせるよ。」

「・・・なんだこの嫁にいくような会話は・・・。」















長い長い片思い。









知られず消えていくはずだった思いが、消える寸前に救い上げられた。













そしてまた鮮やかに色づいていく。















夕焼けに染まった世界が













一番『恋』に近い色だった。

























― おわり ―









― コメント ―



やっちまったな・・・。左近×久作。

成長でシロ→ろじ→くく前提です。うちの2年は全部この片思い前提かと;

あー、でもたのしかった。

左近と久作はのんびり恋してほしいかも^^

いつのまにか進展しててまわりに驚かれて、そんな2年楽しい。

2年は全体的に自身のことに疎いといいな。


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