square relations

□square relations 5
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室内で響き渡るは洋楽、外で奏でられるは風と雨の音。
それは、まるで協奏曲だ。


山本との一件があった翌日の夜、俺は自室で洋楽を聴きながら降り止まぬ雨を窓から眺めていた。
窓を強く打ち付ける雨を見ていると、今夜はもしかしたら嵐になるかもしれない。

そんなことをぼんやりと思いながら洋楽を聴いているとそれを邪魔するように、携帯電話がけたたましく鳴り響いた。







square relations 5 

嵐夜での変化 







ディスプレイに表示されている“ヒバリ”という文字。
あからさまに嫌そうな表情を浮かべどうしたものかと悩んだ末、無視することに決め込んだ。
どうせろくな電話じゃないのだ。
出ない方が吉と思ったのだけれど、一度電話が切れても鳴り止むことがなかった。
俺が出るまで掛ける気なのではないのだろうかと思うものの出たくはない、だけどうるさくて仕方ない。

募りに募る苛々。
とうとう我慢出来なくて、仕方なく通話ボタンを押した。


「しつけぇ!何回電話してきやがんだ!」
『何回電話しても出ない君が悪い。携帯の意味がないじゃないか』
「…で、何の用だよ。これで大した用じゃなかったら承知しねぇぞ」
『君さ、書類持って帰ったろ?』
「書類?」
『君が途中まで仕上げた書類。明日までに仕上げなきゃならないんだけど』


どうやら雲雀が俺に電話をしてきた理由は俺が大事な書類を持って帰っているか否やというもので。
そんなもの持って帰るわけないだろうと思いながらも、確認の為に鞄の中身を見てみる。

「んなもん俺が持って帰るわけ……」

すると、確かにそこにあるのは見覚えのある書類。
雲雀の言う通り、なぜか俺が持って帰ってしまったようだ。
それが雲雀にも伝わったのか、短い溜め息が受話器越しに聞こえてきて。

次いで出た雲雀の言葉に耳を疑った。


『今すぐ家に届けに来い』


…は?

この豪雨の中、俺に届けに行けと?

「ざっけんな、何でわざわざ俺が!」

『君の責任だろ。今から五分以内に来なかったら承知しないよ』


低音で俺を威圧する雲雀はそれだけ告げて強制的に電話を切った。
耳に響くは『ツー、ツー』という虚しい機械音。


…どうしたものか。

強く打ち付ける窓の外を見てみると先程より雨足が強まった様子。
当然、こんな命令聞きたくない。

だけど命令に背いてしまえば、最悪の事態が俺を待っている。


「…マジでめんどくせぇ、」

先程より募る苛立ちを感じながら、仕方なく俺は書類を片手に家を後にした。
やっぱり電話に出るべきでなかったと後悔しながら。




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