square relations
□square relations 4
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窓際の席に腰を掛け、ぼんやりと夕日を眺めている獄寺。
綺麗だと思った。
山吹色に染まる翡翠の双眼も、夕日に煌めく銀色の髪も、切なげな表情さえも。
それは思わず、見とれてしまう程に。
トクンと高鳴っていく心音を感じながら、徐々に距離を詰めていく。
「落ち着いたか?」
冷たい缶ジュースを差し出すと、獄寺は警戒心を保ちながらそれを受け取った。
落ち着いてないのはお前だろと言わんばかりの、眼差しが痛い。
それもその筈。
いきなり抱き締められれば誰だって警戒するだろうなと苦笑いを浮かべながら、獄寺の隣の席へと腰を下ろした。
獄寺は何も喋ろうとはしない。
先ほどの事を咎めるわけもなく愚痴るわけでもなく、ただ夕日を見ていた。
獄寺が何も言わなくても、俺には獄寺が浮かべる辛そうな表情の意味が分かる。
昨日の雲雀との、一部始終を見てしまえば。
「さっきさ、ディーノさんだっけ?あの人に会ったんだ、日本に来てたんだな」
本当は会ってなんかない。
だから、これはカマ。
言い切ると同時に、獄寺の双眼は確かに戸惑いを見せた。
その獄寺の表情から汲まれるものは、やはり原因は昨日の雲雀とのやり取りが関係しているのだろう。
雲雀とのやり取りの一部始終の意味が分からないほど、俺は鈍くない。
俺がもしも獄寺の立場だったら…。
「俺だったら奪うぜ」
獄寺は驚いたように目を丸くさせては、俺を見た。
どうしてお前が知ってるんだと表情が物語っている。
それでも次の瞬間にはまた辛そうな表情を浮かべ、ゆっくりと口を開いていく。
「あいつはそんなこと望んでねぇ」
消え入りそうな声で、ポツリと洩らした獄寺の言葉に微かに驚愕してしまう。
てっきり、関わるなとか意味分かんねぇとか悪態を吐くとばかり思っていたのだけれど。
いや、普段の獄寺なら間違いなく悪態を吐いていただろう。
俺にそんなことを言うことからして、かなり切羽詰まっているのだろうか。
「好きだったら仕方ねぇじゃん?」
翡翠の双眼に視線を絡めながら、はっきりと言い切ってやる。
好きだったら仕方ないんだ。
結局は、手に入れたもん勝ちなのだから。
そう、例え獄寺がディーノさんのことを好きでも。
それを俺が知ってしまったとしても。
俺は、獄寺を奪う覚悟があるから。
俺のものにしてみせるから。
…だけど、今はそんなことよりも。
「だからそんな深く考えんな」
そんな顔をしないで欲しい。
辛そうな顔なんて、お前に似合わないよ。
今はお前を奪うとか考えてないから。
今はただ…。
「お前のやりたいようにすればいいんだぜ、遠慮なんて要らねぇよ」
獄寺に元気になってもらいたいだけだから。
獄寺が笑ってくれるのならば、いくらでも励まそう。
例え、その笑顔は今は俺に向けられなくても。
「能天気なお前が羨ましいぜ」
鼻で笑いながら、小馬鹿な口振りで告げる獄寺。
そして徐に腰を上げ、扉へと向かい出した。