キラキラと煌めく銀色。
太陽の光を反射させ、より一層輝きを見せる銀髪。
校庭で体育を受けている彼をぼんやりと、こうして応接室から眺めていた。
いつの間にか応接室に侵入した金髪イタリア人など目も呉れず、ただ彼を見下ろしていた。
square relations 2
悪魔との契約
彼のことは、前々から目をつけていた。
転入早々、数々の問題を起こすこと。
装飾品の数々、未成年者の喫煙、制服の着崩れ。
挙げだしたらキリがない程、風紀を乱していたのだから目をつけるのは当然で必然。
またイタリアからの転入生ということから、奇抜な銀色の髪の毛や抜けるような白い肌、そして透き通るような翡翠の双眼。
こうして目で追ってしまうのは、他人とは逸脱した容姿を持ち合わせていることも関係しているのかもしれない。
そんなことを思いながら煌めく銀色を見下ろしていると、とうとう限界を迎えたのか金色の髪を持つイタリア人が話し掛けてきた。
「オーイ、恭弥。久しぶりに会ったんだしちょっとは喋ろうぜ?」
「僕は話したくない」
「言ってくれるぜ…」
先程から永遠と何かを話し掛けてきているけれど、僕からすれば興味のないこと。
いや、全く興味がないといったら嘘になってしまうかもしれない。
昨日のことがあって以来、少しは興味がある。
チラリとディーノに目を配れば、煌めく金色の髪。
それと、胸元に光る金色のネックレス。
やはり、僕のポケットに今入っているネックレスと酷似している。
彼が落としていった、ネックレスと。
そのネックレスを目の当たりにすると、確信を抱く。
彼の落としたネックレスは、やはり目の前の金髪イタリア人と関係しているということに。
彼の想い人は、目の前の金髪イタリア人ということに。
自然と口角が上がってしまうのは、仕方のないことだろう。
彼のことは、前々から目をつけていたんだ。
手に入れた確信は、うまく利用しなければ。
そう、彼の弱点と呼べる確信を。
「ん?俺の顔に何かついてるか?」
まじまじとディーノを見ていると、照れたようにディーノは表情を破綻される。
そんな見つめんなよ、などという戯れ言を抜かす自体、少し抜けているのだろう。
悔しいが強さだけは認めるけれど、やはりバカだ。
だけど、彼はこの人のことが好きなのだ。
…彼がこの人のことを好き、ね。
「物好きもいるなと思ってね」
「?」
僕の言葉に、疑問符を打つディーノ。
そんなディーノを気にもせず、僕は再び校庭へと視線を戻した。
やはり目で追ってしまうのは煌めく銀色。
瞬間、出逢ってしまった翡翠の瞳。
まるで時が止まったかのようなその空間に息を飲んでしまうけれど、それでも口角を引いてやる。
そして、チラつかせてやった。
ポケットの中から取り出した、金色のネックレスを。
昨日彼が落とした、金色のネックレスを。
彼が大切にしている、金色のネックレスを。
途端に見開かれた翡翠の双眼に気を良くして、更に口元の笑みは濃くなっていった。