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問題が多かった並盛祭も何とか無事に終え、数日が経った。
今日のHRでは、何やら並盛祭で飲食部門での一位を獲得した俺らのクラスの誰が景品である温泉一泊二日に行くかという話し合いをしている。
話し合いというよりは決定事項を学級委員が発表していると言う方が正しいのかもしれないけれど。
「これで決定ですけど異論はないですか?」
発表された二組のメンバーに、クラスメイトは異論するわけでもなく賛成するわけなく沈黙を宿す。
それもその筈、メンバーに雲雀が入っている時点で温泉に行きたいなどという強者はいないだろう。
「…では来週の温泉に行くメンバーはこの二組に決定しました」
静まり返る教室の様子に、苦笑いを浮かべる学級委員の言葉により決定されたメンバー。
目の前の黒板に表記されている、雲雀と山本と十代目と俺の名前。
どうやらこの四人で温泉に行くことになったらしい。
山本は呑気に楽しそうだと笑っていて。
十代目はというと、ひくつく頬を抑え切れずも渋々と受け入れた様子だ。
十代目と共に温泉に行けるということは光栄だけれど、今は喜んでいる場合ではない。
そんな余裕など持ち合わせていなかった。
そう、俺の頭には他のことで頭が一杯なのだから。
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「やっぱり無ぇ…」
並盛祭を終えた次の日に洗面台にて無いことに気付いた、あるもの。
そのことで頭が一杯だ。
心当たりのある場所は隈無く探したけれど全然見付からない。
机の中を今こうして探してみてもやはり見付かる気配はなかった。
「獄寺君、お昼食べに行くけど…」
何か探し物?と、いつの間にか現れた十代目が遠慮がちに言葉を紡ぐ。
探索に集中していたため十代目の気配に全く気付かなく、突如現れた十代目の存在に思わず肩を跳ね上がらせてしまう。
「いや、大丈夫です!昼飯食いに行きましょう!」
十代目の心優しい提案に首を大袈裟に振り拒絶しては、話を逸らすようにそそくさとその場を後にした。
いつものように十代目と山本と昼食を摂る為に屋上へ向かっている最中でも頭から離れない探し物。
その片割れである右耳に触れると眉は自然とひそまっていく。
それは、雲雀から誕生日に贈られたシルバーピアス。
今は片方の耳にしか嵌められていない。
恐らく並盛祭の日に、いつの間に無くしてしまったのだろう。
そう、無くしてしまった片方のシルバーピアスのことで頭がいっぱいだった。