詩歌
□好きだなんていってやらない
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「…」
月明かりに浮かぶ翡翠は
まるで、現実味がない
ただ、背にした月明かりから
影がこちらに伸びているから
あの体は、ここに存在してはいるのだろう、などと
ぼんやりと考える
「翡翠」
筆をおき
確かめるよう
翡翠の名を呼ぶ
「ん…?」
「こちらへ」
手を差しだし
誘う
「幸鷹?」
「こちらへ来なさい」
もう片方の手も
体ごと、翡翠へと
「急にどうしたの?」
軽く首を傾げ
こちらへ歩いてくる翡翠の
そのゆったりとした歩みがもどかしい
けれど
此方から歩みよるのは何となくしゃくで