詩歌
□好きだなんていってやらない
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「まったく、君は本当につれない」
苦笑混じりにそう言うと
ぬくもりが離れ
代わりに、侍従の香の焚きしめられた単衣が
そっと、肩へかけられる
「私の腕は嫌でも、それ位は許してくれるだろう?」
「…」
肯定も否定もせず
ただ、しっかりと衣を掴むと
奴の笑みが深くなった
それきり
私も、奴も言葉を交わすことはなく
ただ、冬風が時折御簾を揺らしていくだけ
「…」
横目で、黙ったままの翡翠を盗み見れば
柱にもたれかかり、月を見上げていた
「…」
視線の先には
綺麗すぎる望月
不意に
風に浚われた自分の長い髪を追うように
翡翠がこちらに振り向く