QUARTET〜不協和音な僕らの旅〜
□第12楽章
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暗闇が晴れてもなお、目の前は薄暗かった。
「ねぇ・・・月が出てる」
窓際に立ってたエリが窓の外を見てそう言った。
どういうことだ?さっきまでは確かに昼間だったはず。
「・・・あー思い出した。闇のランプってあれだ。夜にしちまうヤツだ」
「ラナルータみたいな?」
「そう。でもこれは夜にするだけ」
「そう言うことは火点ける前に思い出しなさいよ」
静かに睨まれ少したじろいだが、耳に入ってきた音に驚いてすばやく後ろの窓に駆け寄った。
確かに今、人の話し声が聞こえた。
「くそ、汚れててよく見えねぇ」
でも明かりが点いてて、何かが動いているのは確認できた。
「エリ、下降りるぞ」
「え?ちょっ!」
エリの腕を引っ張ってすばやく階段を下りた。
降りるとそこには男が立っていて、俺たちを怪しげに見た。
「・・・兄ちゃんたち、いつ入ってきた?」
「いや、あの、」
俺が口ごもっていると、男は肩をすくめ、にかっと笑ってこう言った。
「まぁなんだっていいさ。お客さんだろ?いらっしゃい、ここは武器防具屋だ。何を買うかね?」
俺とエリは顔を見合わせた。
とりあえず状況を確認しに外に出たいが、ものすっごくギラギラした商売的な目で見つめられ、仕方なく、最近刃こぼれを気にしてたエリの剣を少し磨いでもらい、すぐさま店を出た。
出る時にも気付くべきだった。俺たちは在るはずがなかったドアを開けて出たのだから。
「そんな・・・うそ・・・」
見なくとも、後から出てきたエリが信じられないと言う顔をしてるのが分かった。
俺もそうだからだ。
人がいる。そして、生活をしている。当たり前の様に。
「まさか・・・幽霊・・・!?」
いや、それはマジで勘弁。さすがに俺だって幽霊は怖い。
でもびびって俺の腕掴まったりとか、そもそもこいつが幽霊にびびるとか・・・かわいい。
「と、とりあえず見て回るか!」
掴まれた腕にドキドキしながらも、俺はエリに歩くよう促した。
エリは仕方なさそうに歩いたが・・・めっちゃ体くっ付かせてくる。
・・・いやいやいや。
びびってる姿とか顔とかかわいいし、くっ付かれるのは嫌じゃない。むしろ最高。ありがとうルビス様。
じゃなくて、もう気が気じゃない。元々どこに行く当てもないのに、更に頭が回らずに、しばらくふらふらと途方もなく歩いた。
「え、あれ?」
はっとしたとき時にはあまり人気のない場所で来てしまって、急いで引き返そうとすると、腕を引っ張られた。
正しくは腕を掴んでいたエリが動かず、俺だけ動いた。
「どした?」
「・・・呼んでる」
「は?」
「誰かが助けてって・・・!」
そう言ってエリはさらに人気のない場所へ走っていった。