QUARTET〜不協和音な僕らの旅〜
□第12楽章
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テドンに着いたのは昼間だった。
それなのに辺りは心なしか暗い。雨が降りそうな雲ではないが、確かに雲があり、太陽を隠している。
だがこの暗さは自然的なものではなくて、きっと精神的なものだろう。
「ここがテドンか・・・」
魔王によって滅ぼされた村の噂はあっと言う間に広まった。当時は俺もまだ赤ん坊だったからすべて後から聞いた話だが。
ただ聞くのと見るのとはやっぱり違う。聞いていたものよりもテドンの悲劇は残酷だった。
家々は柱しか残っておらず、その柱ですら黒く焼け焦げて今にも倒れそうだ。
教会だったのであろう建物は見る影もなく、辛うじて十字架が建物の横に倒れてあった。
所々に見える白い塊は、人の骨なのかも知れない。
「・・・エリ?」
隣にいたはずのエリが見当たらず、辺りを探すと、エリは民家だったと思われる場所にしゃがんで何かを拾っていた。
「お前なにして・・・」
エリが拾っていたのは、ぬいぐるみだった。
あちこちから綿が出たりして原型を留めていないが、きっとウサギか何か。
「子供も居たんだね」
「そりゃ・・・居ただろ」
さっきからエリの表情が見えない。何を考えているのか。
「あー・・・エリ?」
「何」
「その、大丈夫か?」
「何が」
「だから・・・その・・・」
「私が魔王を倒せばこんな事はもう起きないわよ。
言われなくてもわかってる」
俺が言いたいのはそう言うことじゃなくて。
このままでは、テドンの様に魔王の手によって滅ぼされてしまう村や国があってもおかしくない。
だがそれを食い止めるのがたった1人の女の子とは・・・荷が重過ぎる。
「全部終わらせるのよ、全部」
立ち上がりながらエリはそう言った。結局、最後まで表情が見れなかった。
民家の近くに、煤などで見えにくくなってるが、武器屋の看板が見えた。
他の所よりは損壊が少ない。
「2階があるけど行ってみるか?」
「行く」
ぎしぎしと危なげな音を立てながら2階へ上がると、がらんとした部屋にポツンと金色に光る物体が落ちていた。
近寄って拾ってみると、イシスの露店で見かけたランプとか言う物。ただしこのランプには月の飾りが付いていた。
「何これ」
「えーっとちょっと待て。カイからなんか聞いたことある」
なんだっけな、月の飾りがあるのは闇のランプとかってんで火を灯すとなんたらかんたらって言ってた記憶が・・・。
「エリ、ここにメラで火点けてくれ」
「それで何がどうなるのよ」
「知らね」
あまり納得してない様子だが、エリにしては素直に動いてくれた。
エリが指先から小さくメラを出し、ランプの口に当てた瞬間、目の前が真っ暗になった。