QUARTET〜不協和音な僕らの旅〜
□第11楽章
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何時間たったか。
いや、多分まだ数分しか経ってない。ね、眠れねぇー!!
好きな女が、同じベットで寝てて、しかも2人きり───
エリが寝返りをするたび、色々と体が反応してしまう。
意識するな・・・後ろは意識するな・・・!!
「私さ、」
いきなり声をかけられ、ビクッとした。
「う、あ?」
思いっきり変な声を出してしまった。不審がられなければいいけど・・・。
「高い所苦手なのを、父さんに落とされたからって言ったの・・・覚えてる?」
「え?あぁ・・・」
確かシャンパーニの塔の時だ。なんとなく記憶があった。
「あれ・・・嘘」
「へ?」
「本当は木から落とされたの。・・・近所に住んでた男の子たちに」
エリが、シーツを握ったのが分かった。何かを・・・耐える様に。
「毎日・・・同じ木の下で練習してたの。
その日、いつも練習を見てくれてるレニーがたまたまいなくて・・・フィナと2人でいて・・・そしたら風でフィナの帽子が飛んじゃって。
木に引っかかったのを登って、取ろうとした。そこに・・・。
男って言ってもあんま歳変わんないんだけどね、不安定な場所で突き飛ばされると・・・さ、」
俺は何も言わずに聞いていた。
というか・・・何も言えなかった。
「木から落ちて・・・頭から血が出て・・・フィナは一部始終見てて・・その時から2人で高所恐怖症。
レニーには・・・言わなかった。
えっと・・・つまり、言いたいことは・・・そんなことがあってから・・・同い年ぐらいの男は苦手って言うか。
だからあんたの事も・・・まぁ嫌いだけど、嫌いじゃない」
「・・・どっちだよ」
思い出すの、辛かったろうに。
慰めとか、励ましとかじゃなくて、最初出てくる言葉が突っ込みなことに自己嫌悪した。
でも・・・嫌いじゃない・・・か。
「仲間としては認めてくれたって受け取っていいのか?」
「・・・ご勝手に」
それでも嬉しい事には変わりないので、もちろん、顔がにやける。
これって自惚れていいもんか?勝手にしていいってことはいいよな?
「ねぇ・・・あんたの父親ってどんな人?」
また突然声をかけられびくっとする。
「親父?普通だよ。なんかボケーっとしてっけど」
「・・・普通ってどんなの?」
「普通ってそりゃ・・・」
言葉を失う。そうだ、エリには・・・父親がいない。