QUARTET〜不協和音な僕らの旅〜
□第10楽章
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聖地ダーマはカンダタとエリをかけた勝負でガルナの塔に行く途中で寄っただけだから、ちゃんと訪れるのは始めてだ。つーかカンダタはあの後どうしんだか。
「仮にも盗賊なのに聖地なんかに来ていいのか?俺」
「・・・そう言えばあんたって何で盗賊なんかになったの?」
「あれ?言ってなかってっけ?なんか自称大盗賊のバコタってじーさんが行き成り村に来て、ガキ大将を出せ!つって俺に色々教えってった。俺、お前の旅について行くのに便利そうだったからなんとなく教わったから」
「ふーん・・・」
・・・肝心のとこ聞かねぇの。“どうして私の旅について来ようとしたの?”とかって聞かれたら“お前のこと好きだから”とか言えんのに。・・・言えねぇけど。
なんでかなぁ・・・仲間といたときはもっと勇気あったような気がすんだけどな・・・。2人っきりって言葉にビビってんのか?
「あんたさっきから何遠い目してんの?」
「いや・・・」
怪訝な目で俺を見たエリは、どんどんと奥に進んで行った。
「よくぞ来た。そなたがかの有名な英雄オルテガの子か」
神殿の奥、辺りはしんと静まり返っていたが、今の声が部屋中に鳴り響いた。高い天井の窓から光が差して、大理石の床や長い柱を照らしている。
そんな部屋ででかい椅子に座ってる、髪だかヒゲだか分かんねぇけど、白い毛を垂れ流して偉そうにしてるじーさんがにっこりと笑ってエリを見た。
「エリと申します。この度は大僧正様にお聞きしたいことが御座いまして、伺わせて頂きました」
「なるほど。どんなことかな?」
「大僧正様はオーブと言う物を知っていますか?」
「はて・・・。おぉそうじゃ、昔友人からその様な名前の石を見たことがあるのぅ。そなたの隣にいる少年のような不思議な銀色をした石じゃった」
「俺?」
「バカ!!大僧正様の前よ!?ちゃんとした言葉使いなさいよ!!」
「んなこと言ったって俺にそんな教養ねぇよ!」
「だからって少しは敬語使えるでしょ!?それくらい考える頭持ちなさいよバカ!!」
「悪かったな!どーせ俺はそんなことも考えらんないバカですよ!!」
「ほっほっほっほっ。仲が良いのぉ」
こんな目の前で言い争いをされたのにも関わらず、じーさんは気を悪くした様子もなく、何か嬉しそうに笑った。
「あー・・・っと、僕ですか?」
「いつも通りで良いぞ。そうじゃ、そなたのような銀色の石を確か友人はオーブと呼んでいた。友人とは10年前に分かれたきりでのぅ。居場所まではわからぬ」
「そうですか・・・ありがとう御座いました」
エリは深々と頭を下げた。
「エリよ、ちょっと来なさい」
じーさんはエリを手招きした。エリは恐れ多いと言う感じで少し戸惑ったが、ゆっくりと近づいた。
じーさんはエリに小さな声で何かを言った。小さすぎて俺の耳じゃ聞こえなかった。
「少年よ、名はなんと言う?」
エリが少し俯きながら戻って来た。それを確認しながらじーさんは俺に尋ねた。
「ヴェス」
「ヴェス、来なさい」
エリにしたように俺にも手招きをした。
低い階段を登り、でかい椅子に座ってるじーさんの目の前に来た。
「好きな女を落とす技を教えてやろう」
小さく、だけど俺にははっきり聞こえたじーさんの言葉に、無意識に耳が近づいた。
「彼女のすべてを受け入れることじゃ。負けず嫌いで素直じゃない、命知らずな彼女のな」
じーさんはエリを一瞬、ほんの一瞬、ちらっと見て、それから俺にウィンクをした。