QUARTET〜不協和音な僕らの旅〜
□第9楽章
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「はぁー・・・なんでヴェス君の料理ってこんなおいしいんだろ・・・」
「料理っつったってサンドイッチだぞ」
「でもこのパン、ヴェスさんが焼いたんですよね?」
「まあそうだけど・・・」
「どうしてこんなうまいんだよ〜」
「掃除も洗濯も出来るしね」
「おやレニー、舵とらなくていいのかい?」
「今気候安定してるから」
「・・・別に生きていく上で必要だっただけだよ」
「あんた男の癖に何言ってんのぉ?」
「今時男もクソもねぇだろ。掃除や洗濯は・・・お袋が苦手で・・・。ばーちゃんが生きてた時はばーちゃんがやってたけど、死んでからは俺がやってたし、料理は・・・姉ちゃんが出来なくて・・・俺・・・子供の頃姉ちゃんと結婚するつもりだったから・・・俺が覚えなくちゃって・・・」
って俺は何暴露してんだ。エリがいなくて良かった・・・。そう言えばエリは・・・
「おいフィナ、エリまだ部屋にいんのか?」
「え、あ、うん・・・。まだ閉じこもってる」
「・・・もう1週間になるな」
そう。エリはここんところずっと部屋に閉じこもってる。理由は1つ。旅が進まないことだ。もうポルトガを出てから1ヶ月になる。なのにネクロゴンドへの行き方もわからない。オルテガの足取りを追おうにもそれすら見つからない。エリは拗ねて部屋に閉じこもった。でもただ拗ねてるわけじゃなくて、寝る間も惜しんで世界地図と葛藤している。地図を見る限り、ネクロゴンドに近づくことは出来るが火山が邪魔でその先に進めないらしい。で、その火山はオルテガが落ちて死んだと言われてる場所。いろいろ考えて落ち込んでもいるみたいだ。
「俺飯持って行くわ」
「どーせまたケンカすんだからやめとけばぁ?」
「・・・・・・」
別に俺たちはなにもしてないわけじゃない。ポルトガを出てからランシールに向かった。でもただの平凡な町だった。オルテガが寄った形跡もないし、きえさり草ってのが有名なだけ。エリだけで一度ファブのところにも行ったが、オルテガがイシスを出てからの旅路は知らないし、どうやってネクロゴンドに行ったのかわからないと言われたらしい。今はランシールの南にある黄金の国、ジパングに向かっている。
「おい、昼飯だぞ」
「・・・そこに置いといて」
ドア越しにエリの声が聞こえた。いつものようなハキハキした声じゃなかった。
「・・・入るぞ」
「・・・ヤダ」
ドアノブに手をかけたが、カギがかかってた。
「開けろ」
「勝手に入ってこようとしないで」
「盗賊舐めんなよコラ!!」
ポケットから針金を出してガチャッとカギを開けた。
「なっ・・・!?」
「お前いい加減にしろよ!!お前がいじけてたって何の解決にもなんねぇんだよ!!いつまでもウジウジしてんな!!」
それに部屋に閉じこもってたら俺、お前の顔見れないじゃん!!・・・これが1番の問題だったりする。
「うるっさいわね!!私が自分勝手に部屋に閉じこもってたと思ってんの!?」
「違うのかよ!!」
「ファブさんに借りた本とか悟りの書とかあんたがいろんな洞窟とか塔とかで盗ってきた本とか!!読み返してるの!!」
「何のために!!」
「ネクロゴンドの行き方!!父さんだって何も知らない状態で旅立ったんだからどこかで情報を手に入れたはずでしょう!?」
「そ、それならそうと言えばいいだろ!」
「・・・それは悪いと思うけど・・・勝手に部屋に入るなんて最低!!」
「分かったから・・・一度外に出ろ。こんな暗いところにずっといたら脳みそ腐るぞ。空でも見て心乾かせ」
「空・・・さっき・・・あんたが入ってくる前なんか見つけたような気がするんだけど・・・」
「ほらもう脳みそ腐り始めてるぞ」
そう言ったとたん、アッパーを喰らった。