QUARTET〜不協和音な僕らの旅〜
□第9楽章
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「暇だ〜・・・ヴェス〜トランプしよ〜ぜ〜」
「暇なのはお前だけだ。俺は洗濯物干したら昼飯作んなきゃいけねぇんだよ」
船の上での俺の仕事は地上にいた頃より酷いものになっていた。
掃除・洗濯・炊事。あと見張りに操縦。だけど操縦は今のところやってない。このパーティ9人もいるくせに船の操縦が出来るのはレニーだけだった。それで今エリとカイがレニーに操縦習ってる。俺も習いたいけど急がしくて無理。テラはまだ体が小さいし、リュイに任せると絶対危ないから却下された。他の3人は力がないし。
見張りはマストの上に登らなきゃいけない。だから高所恐怖症のエリとフィナは無理。高い建物も木もないイシスで育ったカイとテラは、高いところに登ると言う習慣がないからマストの上に登らせるのは危険だし、エルザに至っては初めからやる気がない。エリとカイは簡単な操縦が出来るようになったが、まだ急に波が来たりするとうまく操れないからレニーがいつも操縦室にいなくちゃならない。リュイとシーアは・・・こいつらはお互いに離れようとしない。2人でいてもまともに見張りなんて出来ないから消去法で俺1人が見張りをすることになった。まぁ俺が出来ない時はカイが甲板に常にいるようになってるけど。
洗濯は、さすがに女子の分は洗えねぇから男のものだけ。女のはテラがやってる。掃除は一応分担してるけど真面目にやってんのは俺とレニーとエリとフィナとテラだけ。他は絶対的にやらねぇか忘れてるかやってるけど逆に汚くなってるか。だから俺の仕事が増える。
炊事は元から料理が出来るのは俺だけだったし、別に地上にいた頃と変わりないが、9人もいると好き嫌いが激しくなってくる。特にエルザ。野菜は基本的に全部嫌いだし、そのくせ肉が続くと太るとか言って怒るし。かなり煮込んだキャベツとかなら食べるからいつもそれ食わしてる。
「嗚呼リュイ・・・君の赤い唇は蛇にそそのかされイヴが食べてしまった禁断の果実の様・・・さぁ僕と言うアダムに君の禁断の果実を食べさせておくれ・・・」
「シーア・・・」
「食堂でいちゃつくな!!そして人前でちゅーしようとすんな!!!」
俺が昼飯を作ろうとキッチンへ行くとすでに見慣れたウザいほどラブラブな2人がいた。
「なんだね銀髪くん!自分がエリと口付け出来ないからって───」
「バッッッッッッッッカじゃねぇの!!!なんでそう言うことさらっと言ってんだよ!!!いいからお前は部屋片付けてこいよ!!!何回言ったら分かるんだ!!!」
「まったく、素直じゃないんだね。そんなに顔を真っ赤にして。仕方ない・・・リュイ!すぐに戻るからね・・・!!泣かずに待ってておくれ!君と会えないこの時間が僕たちの愛を育むのだから・・・!」
「シーア、待っているから・・・早く・・・戻ってきて・・・」
「もういいからさっさと行ってくれ・・・」
もうホントにこいつら疲れる。よろけながらキッチンに立ち、昼飯の用意をした。
「今日はなんだ?」
「サンドイッチ」
「手伝おうか?」
「いや、お前とやると絶対失敗する」
「私は切るのは得意だ」
「まあ剣士だしな・・・じゃあこのトマト切ってくれるか?」
「任せろ」
リュイは果物ナイフでささっとトマトを切っていった。さすがにうまく、ちょっと関心した。
「こんなんだったら早くお前に頼むんだったな。味の方はどうなんだ?」
「・・・シーアいわく宇宙の遥か彼方の味だそうだ」
つまりはマズイわけか・・・。
「フィナとテラの逆だな。あいつら味はまあまあなのに切るといびつになる」
「エリはどうなんだ?」
「・・・いいんだよ。あいつには俺がいる」
「顔が赤いぞヴェス」
「うるせー」