QUARTET〜不協和音な僕らの旅〜
□第6楽章
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あぁ・・・シャンパーニの塔でエリにしがみつかれたのっていつだったけ・・・カザーブでエリの手を引っ張ったのはいつだったっけ・・・。
「ヴェス君が遠くを見てる・・・」
「何かの感傷に浸っているのだろう。こういうときはそっとして置くのが1番だ。この話は聞こえてないだろうがあまり大声を出してはダメだ」
聞こえてんだよ・・・普通に話してりゃ聞こえるっつうの・・・。でもそんな事言う気力がない。今はアッサラームからイシスへ向かうキャラバンの馬車に乗せてもらっていた。エルザの顔馴染みらしく、タダで。屋根はあるが暑くてたまんねぇ・・・。でも俺がボーっとしているのは暑さのせいじゃない。いまだにあのことがショックで立ち直れない・・・。
「あぁもう!こんな暑いと化粧が汗で落ちちゃう!!」
「お前の化粧ケバイからな・・・」
必要最低限の恨みを込めて言った。すると蹴りが飛んできた。2つも。
「あんたケバイって言われた女の気持ちまだわかってないの!?ロマリアのときあんなに言うなって言ったでしょ!!」
「うっせぇ!お前には言ってねぇだろ!」
「次ケバイって言ってみろ、あの世行きだかんなガキ」
出た。修羅の顔。なにが永遠の17歳だよ。10代の顔じゃねぇよ。明らか俺の姉ちゃんより年上だよ。そう言えばこいつの格好って・・・
「・・・おっまえその格好で旅すんのかよ!?」
エルザは昨日のバニー姿のまま金色の髪をなびかせていた。
「あったりまえじゃない。他にどんな格好があるって言うの?」
なんて言うか・・・その格好目のやり場の困んだよ・・・。でもそんなこと言えばまたバカにされるんだろうな。エルザをひと睨みしてからその場に寝転んだ。
「誰もこの状況の俺を慰めてくんねぇのかよ・・・」
「男とはそう言うものだヴェス。どんな苦難も耐えぬかねばならない。私もそうだ」
「・・・お前女だろ」
「・・・ああ!そう言えばそうだったな」
「ダメだよヴェスくん。こんなことで落ち込んでちゃエリ笑ってくれないよ?と、言うわけでイシスに着いたらエリを笑わせ隊1回目の会合ね!」
フィナはこそこそ言ったがこんな心境でいきなりそんなこと言われてもって感じだった。そもそも前から思ってたがそのネーミングセンスはどうかと思う。
「あのなぁ・・・」
なにか答えようと後ろを向くと女どもはすでに向かい側でおしゃべりに夢中だった。
「あー・・・一応俺はヴェスの味方だから」
「・・・ホント今はレニーだけが心の支えだよ」