QUARTET〜不協和音な僕らの旅〜
□第12楽章
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「・・・ロトについて何処まで知ってる?」
驚いた。ジュニーは英雄のこと知ってそうだったからまず親父さんのこと聞くかと思ってたから。
「“神に近し者”。選ばれし者の称号だって」
ジュニーはエリの方を見ながら煙草の煙を吐いた。
「・・・ロトは選ばれし勇者の称号。そして希望の光。
ロト以外に悪を滅ぼせる者は居ない。悪が滅びても我らの光。
って、言うのがあたしが知ってるロトだよ」
「・・・滅んでも?」
「エリ?」
いつもと雰囲気の違うエリ。あの夜と同じ。声は震えてるのに涙は出てない。
「・・・そうか、アンタがロトか。流石はオルテガの子供だね。
すぐにあたしらのアジトに着く。そしたらオルテガの昔話を肴に一杯飲もう」
「お前・・・英雄の何?」
「腐れ縁・・・かな。
あたしらがたまたま襲った船に10回も乗り合わせてた」
「あたしらが襲ったの密輸船だったんだけど」と言い残し、ジュニーは部屋を出た。
俺の中での英雄のイメージが崩れていく一方だ。
どうすんだこれ。将来義父親になるってのに。
エリは俯いたまま全然動かないし、どうしたらいいもんかとしばらく考えていたら、ジュニーが着いたと知らせに来た。
俺とエリは船から降り、海賊のアジトに向かう。はずだった。
「うおっと!」
いきなり襟首を掴まれ、バランスを崩しかけたがなんとか持ちこたえた。
「何すんだエリ!」
犯人は分かりきったことなので振り向かずに怒鳴った。
「私・・・行かない」
「は?」
「父さんの話なんかしたくない!」
エリは手を離すと茂みの方に駆け出した。
「お、おい!ジュニー!悪い!先行っててくれ!」
すぐさま、エリを追いかけた。