QUARTET〜不協和音な僕らの旅〜

□第12楽章
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「ヴェス、ねぇ起きてよ!」


朝、エリの声で目覚める。
あぁ、なんて幸せな目覚め。


「うわ・・・なんかニヤついてる・・・ちょっと!起きなさいよバカ!変態!」


ばしっと叩かれ、嫌でも目を覚ます。
エリはもう着替えている。それにしても勝手に人の部屋に(しかも男の)入って来るなんて何考えてんだ。
つーか俺昨日部屋に鍵かけたつもりだったんだが。


「って、あれ?」


壁がない。と言うか宿屋自体がない。
村も昨日の来た直後の状態に戻っている。


「・・・夢?」

「私も思ったんだけど、これ見て」


エリはボロボロの宿帳を差し出した。
今にも破けてしまいそうなそれの最後の欄に、確かに俺とエリの名前があった。


「昨日行った所に行くわよ」

「は?」

「あの牢屋」

「あぁ・・・。ちょっと待て。
今重大なことに気づいた」

「何よ」

「着替えるからちょっと向こう行っててくれ」


俺がそう言うと、エリはボッと顔を赤くして「早くしてよね」と俯きながら言い、建物の陰に隠れた。

俺はと言うと今の反応にかなりきてしまった。
なんだよ。可愛すぎるだろあれ。

着替えてから行くと、エリはまだちょっと頬が染まってて、マジでかわいい。
昨日みたいに手なんか繋げなかったけど、あの顔見ただけで満足だ。


牢獄に着けば、そこも村同様、建物の存在意義が無いほどに損壊していた。
昨日の男だろうか。白骨化した遺体が部屋の隅にあった。


「ねぇこれ・・・」


エリが見つけたのは血で書かれた文字。
掠れててよく見えないが、オーブの事が書いてあった。


「生き・・・オーブ・・・渡し・・・これくらいしか読めねぇし」

「ホント・・・なんだったんだろ、あの人」

「さぁな。とりあえず最後の鍵っての見つければいいんだろ?」

「お前ら・・・そこで何してる」


いきなりの声に驚いて後ろを振り向けば、頭にはバンダナ、目には眼帯、腕には花束を持った長い黒髪の女が俺たちに細剣を向けている。


「別に何もしてねぇけど」

「嘘をつけ。こんな牢獄に様があるのはオーブを狙っている悪徳商人かロトぐらいなもんさ」


またロトだ。
ちらっとエリを見ると気に食わなそうな顔。

俺たちは一歩も動かず、空気がピリピリしてきた。


「か〜しら〜そろそろ行きやすぜぇっと、」


そんな空気を破ったのは、顔中髭だらけの小男だった。
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