QUARTET〜不協和音な僕らの旅〜

□第12楽章
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「お、おい。いいのかよ」

「いい」


前を歩くエリの表情はまたもや見えない。


「にしてもロトってなんだよな」

「・・・イシスでも言われた。
選ばれし者の称号だって。“神に近し者”って意味だって」

「神ぃ?お前が?」


確かに俺にとっちゃ女神みたいだが。


「似合ってんじゃねぇの?勇者さまは神の子ってか?」

「・・・いらない・・・!私はそんな称号!」


冗談のつもりで言ったんだが本気で返されちょっと戸惑った。


「・・・なんか、疲れた。
村の今の状況、害はない様だから宿とる」


俺としては得体の知れないままにしとくのは気が引けたが、今のエリに歯向かう方が怖かった。

宿じゃ部屋が別々になった。そのお陰でさっきのエリの気持ちをゆっくり考えられた。
あの歳で世界を背負らされて、しかも女で。
大変だろうに、更に神に近し者?そりゃ・・・荷が重いよな・・・。

軽く言い過ぎたかもな。親父さんの話聞かされたばっかりなのに。

とりあえず謝ろうと部屋を出て、隣のエリの部屋のドアを叩いた。


「・・・エリ?」


返答がない。もし、1人で泣いてたらどうする?この前辛かったら泣けって言ったの俺だし。


「さっきは・・・悪かった。
悪気はなかったんだけどな。でも考えなしで・・・。

・・・なぁ、どうしたらお前は楽になれる?どうしたら辛い思いをしないですむ?
俺・・・俺は・・・」


今こそ言うんだ。今なら・・・言える。
ゆっくり深呼吸して、覚悟を決めた。


「俺はお前の傍に居たい。
ずっとお前の笑顔が見ていたい。
お前の事が・・・好───」

「何やってんの?」


横を向くと、そこには今まさに告白しようとしていた相手。


「お、おま・・・何でそこに・・・」

「何って、お風呂」


いや、確かに冷静に考えれば、返事がないってことは普通部屋には居ないってことを示す。
でもなんで!人が決心したって時に!


「何?私が居ると思って話しかけてたわけ?」

「〜〜〜っ」


恥ずかしくって声も出ない。内容が内容なだけに。
そんな俺を見てエリがくすくす笑い出した。


「まぬけー」

「・・・うるせぇ」


もう一度やり直そうとしたけど、エリの笑顔が見れて、ほっとしたから。
やる気が失せたとかじゃなくて、この笑顔がずっと続くにはどうしたらいいか、自分で答えを見つけたくなった。

それにしてもかわいいな、ちくしょう。
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