僕らの吹奏楽

□樟本 奏実(くすもと かなみ)編
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プロローグ〜旅立ちの時〜

席を立ち、歩き出した時、今まで起きた事が走馬灯のように頭を巡りそして、私は目から雫を落とした…

両側にある窓と、正面のステージ。それと向かい合い並ぶ50余りの椅子。その後ろにある数えきれない拍手をする人たち。その間を抜け私たちは卒業式を終えた…

外は雪が積もり、空からも少しずつ雪が降る。そんな中写真を撮る人や担任の先生に別れを告げる生徒もいた。その中で私たちは同じ部だった友達と最後の時間を過ごした。

「幸菜(さちな)のサックスとももうお別れかぁ」
溜め息混じりに梨由(りゆ)が言った。私も幸菜のサックスは好きだった。豪快で綺麗で時には軽やかに流れる幸菜の出す音は聴き惚れるモノがあった。
「梨由のクラリネットの音もしばらく聴けなくなるのかぁ…」
速く鋭く階段を走るように動く指とそれを途切れることなく鳴らす梨由の肺括量。そんな梨由を慕う私からの最後の言葉だった。
「そんなことないよ?!」
と、梨由は言うがやはりみんな会う機会は激減するのはわかっている。
「また、奏実のフルートも聴かせてね?」
幸菜が言う。その後私たちはいつかまた一緒に吹くことを約束してみんなその場を後にした。
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