グランドフォース 〜三人の勇者〜

□〜第十一章〜
2ページ/5ページ



「でもフォースのフリをするなんてそのクローレンって人、どんな人なのかしらね〜。やっぱり、ちょっとは自分の腕に自信があったりするのかしら?」

 偽物に対して腹を立てながらも、どんな人物なのか興味が湧いたリオネッセはちょっと面白そうな声を出した。

「さぁ……、どうでしょうね? どんな強者であれ、私はそんなお調子者とはあまり関わりたくないですがね」

 偽物を、バッサリと手厳しい言葉で切り捨てながらフォンが言う。
 たしかに彼の生真面目な性格を考えると、フォースの名を語って派手に騒ぎ遊ぶような人種のことを、あまり好ましくは思わないだろう。

「な〜んかでもここまでフォースの情報が全然ないと、もう偽物でもいいからフォースって名乗る人に会ってみたいって思っちゃうわよね」

 リオネッセが軽く冗談を飛ばすが、フォンはあくまでも真面目に答える。

「そうですか?偽物になど会っても全く無意味でしょう」

「……ま、そうだけど」

 やれやれ、この男には冗談も通じないのか……とリオネッセが小さくため息をついた時だった、ちょうどそれと同時に、リオネッセ達のいる店のドアがギィと音をたてて開いた。

「いらっしゃい、兄ちゃんお一人様かい?」

 店主の愛想のいい声に、ふとリオネッセは無意識に視線を入り口のほうへ向ける。すると、そこにはどうやら今食堂に入って来たばかりの、旅人らしき若い男が一人立っていた。

「あぁ、一人分の食事を頼む」

 男は店主にそう答えるとつかつかと店内を横切り、リオネッセ達から割と近い位置の席へと着いた。


「……こんな時間に食事なんて珍しいわよね〜」

 自分達もまったく人のことは言えないのだが、リオネッセは席についたばかりの男を見ながらなんとなく呟いた。
 その男はどことなく影のあるような剣士風の男で、むっつりと黙って腕を組んで座っている。その表情からは、なにやら不機嫌そうであることが窺い知れた。


「なんかあの人、怒ってるみたいねぇ。何かあったのかしら?」

 また一つソーセージを口に含み、もぐもぐとさせながらリオネッセが何気なく思いついたことを言う。このマナーのなっていない食事の取り方を、城の者たちが見たらなんと嘆くだろうとフォンはふと思ったがそれは口には出さず、代わりに気のない返事を返した。

「さぁ……? これほど賑やかな町ですからね。トラブルの一つや二つ、あってもおかしくはないでしょう」

 フォンの言葉に、リオネッセも「そうよねぇ」とたいして気にとめていない相槌をうつと、もともとそれほど興味を引かれたわけでもないその旅の男から視線を離した。
 そして代わりに別の話題をふる。

「ねぇフォン、これからどこに向かう? ゼッド達の話によると、このリアス大陸は結構大きな街がたくさんあるらしいじゃない。ジルカール、ダンデリオン、フィルデラ……、どの街から廻るべきかしら?」


 リオネッセとフォンはエスト城でフォースの手がかりである一冊の書物を見つけた後、一旦ウェンデルまで戻り、再びゼッド達と話をしていた。
 ゼッド達とは共に命を懸けてウェンデル未開の地を冒険したので、ゼッド達にも宝の正体を知る権利はあると考えたのだ。

 しかしお金にならない「フォースの手がかり」が宝の正体だと知ったゼッド達は、それはリオネッセ達が持つべき物だと言い、ついでにフォースについて調べるなら、大きな街の多い隣の大陸・リアスにでも行ってみたらどうかと教えてくれたのだった。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ