グランドフォース 〜三人の勇者〜

□〜第三章〜
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ウェンデル西・荒野――。


「よしっ! それじゃあ行くぜぃ!」

 ゼッドのかけ声で一行は未開の地を目指した。

「今日こそはお宝を見つけて探索を終りにしたいぜ」

 ゼッドが歩きながら言う。

「ウェンデルは海からそんなに離れてねぇ場所にあるらしいから、海にぶちあたっちまえば未開の地の探索はおわりなんだ。もうほとんど攻略しちまったからそろそろお宝が見つからないと困るぜぃ〜」

 ゼッド達三人は各地の財宝を探して旅しているトレジャーハンタ―だった。
 このウェンデルにも財宝を探してやって来ていたらしい。

「最近じゃあ、別の噂もとびかってるが、オレ達ゃこの先にはすげーお宝が眠ってるって信じてんだ」

 カザウスが言った。

「まぁ、空振りなら空振りでしょうがないけどな。財宝を夢見て冒険するのが楽しみなんだよ」

 テリーも笑いながらその言葉をひきつぐ。

『ゼッド達は二十日間調べてる間になにか発見はあったの?』

 レキが聞いた。

「いいや〜、お宝と呼べるもんは何一つなかったなぁ。強ぇモンスターが出るから一度に進めなくてよ。何度も引き返しながら毎日少しずつ攻略していったんだぜ」

 たしかに、まだこの辺りはゼッド達の功績によってモンスタ―がいなかった。

「モンスターってそんなに強いの?」

 今度はリオネッセが聞く。

「強ぇ強ぇ! オレ達三人でも苦労すんだから、モンスターが出てきたらレキとリオネッセは後ろから援護をたのむよ。正面からじゃおまえ達にはちょっと危ないからなー。フォンはオレ達と一緒に戦ってくれよ」

『オレも前で戦うよ』

 ゼッドの提案を聞いてレキが言ったが、今度はフォンにとめられてしまった。

「レキには危険だ。我々に任せておけばいい」

『心配しなくても大丈夫だよ。オレだって戦うつもりで来たんだから』

 ニコッと笑って引き下がらないレキに、フォンはやれやれと頭をかいた。

「まったくキミは怖い者知らずだな。どうなっても知らないぞ……」

 そう言いながらもフォンは、レキのほうにも気を配りながら戦うことを決めた。



 一行が西に向かって一時間ほどたった。
 しかし相変わらずモンスターはでなかった。ゼッド達の二十日間の労力は無駄ではなかったようだ。

 だが、ある地点を境に先ほどまでとはうって変わって急に空気がはりつめた感じがした。景色も、今まで歩いてきた荒野とは違い、巨大な岩や枯れた大木などが密集して非常に見通しが悪くなってきていた。
 そこでゼッドが急に足をとめる。

「ここから先が本当の未開の地だ。オレ達もまだ来たことねぇ。昨日の探索はここまでだったからな」

 ゼッドが剣を抜き、慎重に辺りを見回した。

「油断するなよ、もういつモンスターが出てきてもおかしくないぜぃ……」

 六人は武器を構え、最大限の注意を払いながら前へ進み出した。

「……やぁねぇ。いっそのこと、はやくモンスターが出てくれないかしら? この出そうで出ない感じのほうがよっぽど緊張するわ」

 リオネッセが不満を言ったがいつものキレがない。微かに声がふるえている。それほどまでに、辺りは重い嫌な空気に包まれていた。

 一行は少しずつ前へ進んで行く。
 少しひらけた場所にでたその時、前方の死角から突然数匹のモンスターが現れた。

「出たぞ!! 戦闘開始だ!!!」

 ゼッドの指示に全員、戦闘体制に入った。

 モンスターは三匹だった。巨大なトカゲのような体をしているが二本の足で立ち、体の表面は固い鱗で覆われている。手は四本あって、それぞれの爪は長く鋭い。こんな爪で攻撃されたらひとたまりもないだろう。
 そのモンスターは大きく手を広げ、恐ろしい唸り声をあげながら近づいてきた。

 テリーが弓を構え、そのうちの一匹に矢を放った。矢はモンスターの左肩に命中し、モンスターが痛みに怯んでいる隙にゼッドが剣で斬りかかる。

 フォンも別のモンスターにすばやく向かって行った。鋭い爪を流れるような動作で避け、モンスターに攻撃をしかける。その戦い方は華麗で、まるでとても美しい舞いを踊っているかのようでもあった。

「ヒュ〜♪にぃちゃん、やるじゃねぇか」

 カザウスがフォンを横目でちらりと見てから、残ったもう一匹のモンスターに向かって行った。

 ゼッド達はなかなか強かった。ゼッドとテリーが連携を組んで戦い、少し力の強いカザウスが一人で一匹のモンスターを相手にしている。どうやら形勢は悪くないようだ。

 フォンは三人の様子を見ながらも一番早くにモンスターを倒した。
 まだこの程度のモンスターならフォンの敵ではない。

「こいつらは、この辺に出るモンスターの中でもまだ弱ぇほうさ」

 ゼッドも相手にしていたモンスターを倒してから言った。
 しかし二人が一息つく間もなく、また前方からモンスターが現れた。

 今度は四ひき。さっきと同じ大トカゲのモンスターが二匹と、そのモンスターよりかなり危険な感じのする全身が紫色のヒト形をしたモンスターが二匹だった。
 その紫色のモンスターはヘビのような一つ眼と、頭には一本の角、背中には羽がはえており、両手の爪はトカゲのモンスターのそれよりも長く鋭かった。

「チィッ!厄介なのはこいつこいつ!!ガーゴイルって奴だぜぃ!フォン気をつけな!」

 ゼッドとフォンに緊張がはしる。ようやく、さっきのモンスタ―を倒したカザウスも次の相手に向けて体制をたてなおす。
 二匹のガーゴイルは人の言葉が発しながら近づいてきた。

「人間ハ……ヒトリ残ラズ消シテヤル」

「なるほど、人の言葉を話すとは高度なモンスターだな」

 フォンはそれだけつぶやくと、そのままガーゴイルへと立ち向かっていった。

 ゼッドとテリーも再び連携を組み、残ったもう一匹のガーゴイルと戦闘を始める。カザウスは大トカゲのモンスター二匹の相手だ。


『ガーゴイル……』

 ゼッドとフォンが戦っているモンスターは、レキも見たことがあった。
 ほんのつい最近、ユタの村の湖で遭遇したのも同じ種類のモンスターだった。

 ガーゴイルなどという高度なモンスターと出会うのは、そうそうない珍しい事だ。やはりここのモンスターも何かを守っているのだろうか?

 そんな事がちらりと頭にうかんだが、今はゆっくりと考え事をしている状況ではない。すぐさま二匹の相手をしているカザウスの援護に向かおうとしたレキだったが、ふいに背後に殺気を感じ、振り返った。
 隣にいたリオネッセもそれに気づき振り返る。

「……囲まれてるわ!!」

 後ろには、空から降りてきたモンスターが二匹いた。
 前方でフォン達が戦っているガーゴイルとほとんど同じモンスターだったが、手は鋭いカマのようになっている。こいつらにも種類がいくつかあるようだが、攻撃力はさらに高そうな危険な雰囲気が一発でみてとれる。

『リオネッセ、下がってて!』

 レキはそう叫ぶなり、後方の二匹のガーゴイルめがけて飛び出した。敵もそれに合わせ、カマのような手を振り回しながらこちらに向かってくる。

「ギィアッ!!」

 レキは襲いかかって来た一匹目のガーゴイルの攻撃を直前で避けると、もう一匹のガ―ゴイルの攻撃を剣で受け止めた。しかしすぐにその剣をなぎ払い、敵を振り切るとそのまま反動にのせて相手の体を斬りつける。
 ガーゴイルの動きは非常に素早いが、レキの攻撃はそれよりも速かった。

「ギィッ……!」

 ダメージをくらったものの、傷は浅かったようだ。二匹のガーゴイルは再び攻撃をしかけてくる。
 しかし、レキはそれをすべて避けると同時に、さらにカウンター攻撃を打ち込んでいく。



「……強い」

 レキの戦い方を見てリオネッセはつぶやいた。

 フォンもかなり強い剣士であり、リオネッセはこれまでフォン以上に強い人を見たことがない。しかし、もしかしたらレキはその上をいくかもしれない。

 レキの戦い方には非常に天才的な強さを感じた。それに、戦いにも慣れている。
 普段の幼い雰囲気とは違い、戦闘時の真剣な顔つきはとても大人びて見えた。

 リオネッセもレキを援護することにした。
 杖を構え、集中して魔力を練りはじめる。魔法のイメージを固め、それに合わせて一気に魔力を解放する。

「―ティア・ライト!―」

 詠唱とともに激しい光がレキの前方にいたガーゴイルへと飛んでいき、その体を切り裂いた。

 ガーゴイルは苦痛の声をあげよろめいたが、まだかろうじて生きている。今度はリオネッセのほうに飛びかかろうとしたが、その前にレキが再び斬りつけ、それが致命傷となったそのガーゴイルはついに力尽きた。



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