グランドフォース 〜三人の勇者〜
□〜第三章〜
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〜第三章〜「未開の地」
―――翌朝。
窓から差し込む朝日に照らされてフォンは目を覚ました。
すぐには頭がはっきりしない。相当深く眠りについてしまっていたようだった。
「あ、フォンおはよう。やっと目が覚めたみたいね」
すでに起きていたリオネッセが、髪をとかして身支度をしながらフォンに笑いかけてきた。
「フォンがわたしより遅く起きるなんて珍しいわ」
おかしそうに笑いながらリオネッセが言う。
フォンはようやく頭がはっきりとしてきた。そういえば昨日、少し気を許してしまい過ぎたかもしれない。
フォンはレキのほうを振り返った。……まだ寝ている。相変わらず熟睡だ。
いったいこいつはどれだけ寝るんだと思いながらフォンはレキを起こした。
「レキ、朝だよ。そろそろ起きてくれ」
う〜ん……と目をこすりながらようやくレキが起きた。
『ふあ……。フォン……リオネッセ、おはよ』
眠そうな顔でレキは二人に笑いかけた。とても無邪気な笑顔である。
「……レキって、悩み事とかなさそうだよな」
レキの様子を見てフォンがボソッとつぶやく。
『そう?』
レキはまたニコッと笑った。
「レキ〜あなた今日ゼッドって人と未開の地に行くんでしょ?」
『そうだった! 急いで準備しないと』
リオネッセに言われて慌ててベッドから飛び起きたレキだったが、リオネッセの次の言葉に、さらに驚いたようだった。
「そこ、わたしとフォンも一緒に行くから」
リオネッセがさらりと言い放つ。
『……ぇえっ!? リオネッセ達も来るの??』
レキが予想外のことにびっくりして足をとめ、リオネッセとフォンを交互に見つめる。
『でも……かなり危険だよ』
「危険なことはわかってるわよ! それに、こう見えてもわたしは魔法が得意だし、フォンはセルフォード王国一の剣士なんですからね! 一緒に連れて行って損はないわよ!」
リオネッセはるんるんと準備している。
「だいたい、レキにだって行けるなら、わたしにも行けないわけないじゃな〜い!」
『……フォン』
レキは助けを求めてちらりとフォンを見たが、フォンも行く気まんまんのようだった。
「心配しなくても大丈夫、姫のことは私が責任をもって守るから」
レキを安心させるようにそう言ってフォンも準備をはじめた。
その様子に、とめるのは不可能だと悟ったレキは仕方なく、二人と一緒に未開の地へ行くことに決めたのであった。
三人が一階へ降りて行くと食堂にいたゼッドが声をかけてきた。
「お! 来たなレキ。朝メシ喰ったら早速出発するぜぇ〜」
『おはよゼッド! ところで、今日この二人も一緒に行ってもいいかな?』
レキはリオネッセとフォンを紹介した。
「昨日レキと一緒に飯喰ってたやつらだな。いいぜぃ! 仲間は多いほうが助かるからな。特に、背の高い剣士のに―ちゃん歓迎するぜ〜ぃ」
ゼッドは気楽に承諾した。
「じゃあこっちの仲間も含めて合計六人になったな」
ゼッドの仲間も二人いた。二人とも同じこの宿屋に泊まっていて、レキとももちろん顔見知りだ。
「んじゃ、フォンとリオネッセに紹介しとくぜ〜。オレの仲間のテリーとカザウスだ」
ゼッドの隣には屈強な男二人が座っていた。
テリーは20代後半くらいのいかつい男でこの中で一番年上のようだった。肩には弓矢をかついでいる。
カザウスは、テリーよりもゼッドよりもさらにひと回り大柄な男で、ヒゲをはやしており、顔には大きな傷を持っている男だった。
「……まぁレキが連れてきた奴なら変な奴じゃねぇだろーが、嬢ちゃん遊びに行くんじゃないんだぜ。大丈夫かよ?」
カザウスがちらっとリオネッセを見て言う。
「失礼ね! わたしはこうみえてもかなり優秀な魔導師なんですからね!」
カザウスの言葉にリオネッセがぷんぷんと怒ってみせる。
「ははっ! そりゃあ頼もしいな! オレ達は魔法がちょっと苦手でね。ほとんどつかえないも同然だからな。魔導師とはありがたいぜ」
カザウスのかわりにテリーが笑って答えた。この言葉にリオネッセも少し気を良くしたようである。
「うーん、まぁそこまで言うのならわたしの力を貸してあげてもいいわよ!」
こうして未開の地、探索には六人で出向くことになった。
六人は同じテーブルに掛け、しばし談笑しながら朝食をとった。