グランドフォース 〜三人の勇者〜
□〜第二章〜
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〜第二章〜「王女」
レキは草原を歩いていた。
ユタの村を旅立ってしばらくはずっと見通しのいい草原が続いており、歩きやすく、また遠くにモンスターがいてもすぐに気づく事ができるような景色であるため、今のところレキの旅は順調といえた。
これまで何度かモンスターとも遭遇したが、それほど強いモンスターは出なかったのでこの辺りは比較的安全なのだろう。
あれから――レキがユタの村を出発してから、すでに三日が経っていた。
水や食料はユタの村で補給していたが、ところどころで小川を見つけては水を汲んだり、食べられる木の実などを探しながらレキは先に進んでいる。
今日もかなり歩いたはずだ。レキはこの辺りで少し休憩することにした。
荷物をおろし、地図を広げながらその場に寝転がる。さわさわと風にゆれる草がレキの頬をやさしくなでている。
レキはここから西に位置するウェンデルという都を目指していた。
ウェンデルはランガ大陸の中で最も大きなエスト王国という国が治めるとても大きな都で、各地からたくさんの人が集まって来る場所らしい。そこならきっとフォースの有力な情報が聞けるだろう。
そう思ってレキはもともとウェンデルを目指していたのだが、途中道をはずれてしまいユタの村に着いたのだった。
だが結果的にはその偶然行き着いたユタの村で、フォースの導きの書のひとつを見つけることができた。
レキは自分が今いるだいたいの位置を確認してから地図をしまうと、代わりに紋章の描かれた二冊の本を取り出した。
一冊目の本を開いてみる。もともとレキが持っていたほうだ。
“遥か昔、世界を破滅へといざなう闇の力があった。
その闇の力の源は自分の力を分け与え、悪しき闇の化身であるモンスターを
次々に生み出し世界に解き放った。
解き放たれたモンスターは人々を襲い、世界には暗黒の時代が訪れた。
モンスターが全てを支配し、何もかもが闇にのまれる時代。
人々は恐怖し希望を失っていた。
しかし、世界を破滅へといざなう者の現れるとき、必ずそれを打ち破る力を持つ勇者も現れる。
聖なるフォースの紋章に選ばれし三人の勇者――。
白き光放つ紋章グランドフォース。
紅き光放つ紋章ルビーフォース。
蒼き光放つ紋章スカイフォース。
三つの力が交わるとき、破滅へといざなう者を打ち破り、世界には再び平和が訪れる……”
一冊目に書かれている内容はこれだけだ。このフレーズはこの世界の誰もが知っている有名な勇者伝説だった。
紋章の中でも『最も偉大な力』という意味をもつグランドフォース。そして、その力を支えるルビーフォースとスカイフォース。
この伝説を知らない人はたぶん、いないだろう。モンスターだって知っている。
レキは一冊目の本を閉じ、続いてユタの村で見つけた本を開いた。
“世界を破滅へといざなう者が現れるとき、同時に、聖なる力によってフォースを導く七つの書も光を放ち、世界に現れる。
すべての書を集めることによってフォースのすべきことを導き、世界を破滅へといざなう者を討つことができるであろう。
書は各地に封印されており、邪悪な者にはさわることもできない。
正しい心をもつ者だけがその書に触れ、封印を解くことができるだろう……”
レキは二冊目の本を閉じた。
分厚いのは見た目だけで書いてあることはすごく少ない。最低限のことしか記していないようだ。
レキはこの二冊の本をもう何度も読み返していて、一字一句すっかり覚えてしまっていたが、それでも一日に何度も本を開いては眺めていた。
『あと五冊か……』
レキは小さくつぶやいた。
道のりは遠そうだ。それにまだ紋章をもつ者・フォースも見つかっていない。
『ふぅ……、やっぱりもう少し急がないとね』
レキははやる気持ちを抑えきれずに立ち上がると、土をパンパンと軽く払って荷物を持ち、再びウェンデルに向かって歩きはじめた。