Love song

□Variation
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黒の顔が一瞬だけ引きつった。それにかまわず俺は続ける。

「だってそうだろ?変わらないならもっと色んな手を使って守ればいい。俺は絶対に守ってみせるさ」
「M…お前……」
「大丈夫。俺は母さんみたいに壊れたりなんかしない、今でも彼女のことだけはずっと忘れてない。彼女みたいになりたくないんだ。ちゃんと自分で生み出したものを見て、信じて、そして全力で守る。それ以外に何もいらない、俺は神だから」
「…お前……本当に馬鹿だな…」

黒が手に持っていた紙を強く握りつぶした。

「それで本当に前に進んでるつもりなのか」
「…そうだよ。前から何度も言ってるけど、何をそんなに怒るんだ?」
「何度だって言ってやる、てめえは大馬鹿だってな。てめえの母親がどんなやつだったかは知らねえが、結局同じことをやってるんだろ!?どこの誰が見ても今のてめえは壊れてんだよ!!!」

そうだろうか、と考え込む間もなく黒は握っていた紙を押しつけてきた。

「そいつを読むか読まないかはお前に選ばせてやる。どうするかよく考えることだな」

そう言い残して黒はどこかに消えた。


――この中に、今ここに俺がいる意味が書かれている…?

それを知って、どうしろっていうんだ。このままじゃいけないのか?
全部自分で決めたことなんだ。誰かがこれを仕組んだだって?そんな馬鹿な!


そう思いはするのに、その紙を広げる手を止められなかった。
ずいぶん読みにくい文字を追う目も止められなかった。
読み切って、もう一度読んで、読み切って、もう一度読んだ。
手が震えて、目が霞んで、そうしてやっと自分が泣いていることに気がついた。

泣くなんていつぶりだろう。
世界が消えて泣くことをやめて以来、もうずっと泣いていない。

そう思い返して、ようやく黒の言った意味が分かった。
なるほど、「壊れている」と罵られるだけのことはある。
泣くことも忘れかけているなんて。

涙を拭って、紙を丁寧に畳んでポケットに入れる。


黒と話そう。
俺には、この手紙の主と違って相談できる相手がいるんだ。
思えばあいつとは一度もまともな会話をしたことがなかった。
俺はずっとここにこもりきりだったし、黒はこの紙きれ1枚のためにずっと翻弄されていたから。
だけどこれからは違う。
この手がかりを見つけるために途方もない時間を潰すくらいなんだ、黒はたぶんああみえていい奴だ。
話しあって分かり合えないタイプじゃない。だからきっと大丈夫だ。

この状況を創りだしたのがどっちかなんて分からないけど、今度は違う方法で前に進むんだ。
その方法を2人で見つけるんだ。

黒もきっとそう伝えたくて俺に会いにきたはずだから。
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