Love song
□Soloist
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快晴の空を見上げて、少年が息をつく。
「今日もいつもの場所に行こうかな」
学校に彼の居場所はない。クラスメイトは彼がただ一度だけおかしたミスをいまだに引きずって、彼に近づこうともしない。教師にもそれが知れてしまい、彼の味方はどこにもいなかった。
ただそのことに関して少年が感謝しているのは、その出来事を母親に知られなかったことだった。先生もクラスメイトも、ただの偶然だと思っているのだろう。
持ってきた鞄をいつもの公園の隅に隠して、中から昼食用に持ってきたパンの入った袋だけをパーカーのポケットにつっこんだ。
人目を忍ぶようにしながら忘れ物がないかを確認する。
あまり長居はできないし、誰かに見られたりしたら学校に、やがて家にも連絡される。それだけは避けなければならなかった。
「もうそろそろ学校に行かなきゃなー…」
いつまでもこんなことをしていられないことを少年はうすうす勘づいていた。
あまり休みすぎると学校も黙ってはいないだろう。ことにあの担任はそういうことにうるさそうだ。
――今日を最後にして、明日からは学校に行こう。あの子達の世話なら通学しながらできるはずだ。
漠然とした“そんなことができるわけがない”という嫌な予感を無理矢理に頭から追い出して、目深に帽子をかぶり前を睨むようにしながら早足で歩いた。
季節はもうずいぶん春めいて、暖かい風に遊ばれるように蝶が舞う。
少年の気持ちを知る由もない幸せそうな光景が彼の横へ緩慢に描かれていた。
誰もいない公園から逃げるようにして、少年はその場から立ち去った。