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□StarT
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月明かりの光の筋が、部屋の中に一本だけ差し込む。
まるでそれを境界線とするかのように、豪奢な寝台にシーツを羽織って座ったままの青年と、
ドアに手をかけたまま動こうとしない青年が部屋の両端にいた。
「…今、なんて言ったの。ユーリ」
ドア側にいた青年が、疑問符のつかない゙もう一度言え゙と強迫するような威圧感に満ちた言葉を発した。
その緊張感と声だけが静かな空間に瞬時に染み渡る。
それに臆することなく、ユーリと呼ばれた寝台の上の青年は答えた。
「私を、死ぬ事のない体にして欲しい。そう言った」
乾いた言葉は情事の後の特有の疲れがそうさせたのではなく、ユーリが一言ずつに切実な祈りをこめたからだった。
「MZD。お前ならできるだろう?」
MZDと呼ばれた青年はドアに向けたままだった顔をユーリに向けて、それでも目には何も映していなかった。
「……。それはさ、ユーリ。その願いを」
何かを言いかけて口を噤むMZDにユーリは目を伏せた。
目礼だけでは到底足らないと感じたのか、すぐに細い身体を折り畳み、深々と頭を垂れた。
白い手の細い指先を綺麗に揃えて、完全に土下座をした。
その勢いでシーツが落ちて一糸纏わぬ姿になってしまったが、ユーリは構う素振りも見せない。